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フランス映画祭Special

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文・冨永由紀


 エマニュエル・ベアール、マリー・ジラン、代表団団長を務めたナタリー・バイ……。第9回を迎えたフランス映画祭横浜は、今年も“主役は女優たち”という趣だった。

 その中で紅ならぬ白一点(?)のごとく輝いたのは、主演作3本が上映されたブノワ・マジメルだ。5月のカンヌ国際映画祭では最新作『ピアニスト』で最優秀男優賞を受賞、フランス国王ルイ14世に扮した『王は踊る』は映画祭でも上映され、7月中旬から劇場公開される予定だ。  今年27歳のマジメルは、1988年に『人生は長く静かな河』で主演デビューし、人生の半分近くのキャリアを持つ若きヴェテラン。最近の出演作はどれもドラマティックで、深刻な表情ばかりが印象的なのだが、実際の彼は快活で、頭の回転の速い知的な青年だった。


『リザ』

 映画祭で上映された『リザ』(ピエール・グランブラ監督)、『マチューの受難』(グザヴィエ・ボーヴォワ監督)の2本で、彼は監督の分身ともいうべき青年を演じている。2本とも父親との関係が重要なファクターなのだが、両監督が自伝的な要素を含む作品で、自分の思いを託す主人公として彼を選んだというのは、何か象徴的な気がする。マジメル本人は「偶然、同じ年にこの2本を撮っているんだ。その時は、それぞれ別 の理由で出演を決めたつもりだったけど、不思議な共通点があったんだね」と言う。「父親との関係っていうのは、男にとって、成長する上で非常に大切なものだと思う。マチューにとって父は神のような存在。反対に、サム(『リザ』の役名)は父のことを尊敬せず、軽蔑しているくらい。でも、自分探しを続けていくうちに、彼は父の真実の姿も知るんだ」。


『マチューの災難』

 グランブラは「ブノワは脚本も読まないうちから出演を承諾してくれた。“ジャンヌ・モローをこの腕に抱けるなら”と言ってね」と、ボーヴォワは「マチューと会ってみて、彼が出演を承諾してくれた時点で、本格的に脚本を書き始めた」と話す。映画祭期間中、舞台挨拶やパーティーなど公の場以外でも、彼らと話し込み、心から楽しそうに笑うマジメルの姿をたびたび目撃した。父と息子のように、あるいは兄と弟のように。 『ピアニスト』を始め5月に撮影終了したばかりの"Nid de guêpe"など、あとは公開を待つばかり、という新作もたくさん。

  「1本撮り終えるたびに、すごく充実感がある。だから休みなく仕事をするのも、ちっとも苦じゃないよ」と頼もしい言葉を残したマジメルの活躍からは目が離せそうにない。

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