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吉祥寺新映画館の支配人、オープンまでの激動の日々を明かす

10月21日、吉祥寺に新映画館がオープン!
10月21日、吉祥寺に新映画館がオープン!

 10月21日よりオープンする吉祥寺の新映画館ココロヲ・動かす・映画館○(通称ココマルシアター)の支配人である樋口義男氏が、昨今ミニシアターが消えゆく中で新たな映画館を立ち上げた思い、オープンに至るまでの波乱万丈の日々を明かした。

【写真】映画館の中と外はこんな感じ!

運命を変えたウォルト・ディズニーの伝記

 ゲームCG・プログラミング制作などを行う株式会社デジタルワークスエンターテインメントの代表取締役を務める傍ら、約6年にわたって映画館の設立に尽力してきた樋口氏。映画館設立に着手したバックボーンには、「映画業界に携わりたい、映画監督になりたい」という少年時代からの夢があった。「もともと母親が映画好きだったことから、小学生の頃から一人で映画を観に行っていました。江戸川区に住んでいたので錦糸町、もしくは有楽町のマリオンなどで、ミニシアターというよりロードショー系作品を多く観ていました。もうその頃から将来は映画監督になるんだと考えていて」。

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 両親の猛反対にあうも、夢をかなえたい思いは強くなる一方で、エンタメ系の仕事にかかわるきっかけになればと美大に進学。やがて、一冊の本との出会いから転機を迎えた。「『ウォルト・ディズニー伝記 ミッキーマウス、ディズニーランドを創った男』というディズニーの伝記を読んで、すごく感化されたんですね。彼はアニメーションを製作しただけではなく会社を立ち上げ、テーマパークまでつくりあげた。そこから、俄然ショービジネスに興味が湧いたんです」。

ゲーム会社経営の傍ら映画配給を学ぶ

ココロヲ・動かす・映画館○
「ココロヲ・動かす・映画館○」支配人の樋口義男氏

 映画業界に乗り出すためにはともかく「資本が必要」ということで、成功を見込めるゲーム分野に目を向け会社を設立。同時に、配給のノウハウを学ぶためにアップリンクのワークショップに通い2016年に『ニーゼと光のアトリエ』『私の少女時代-Our Times-』、2017年に『マイ ビューティフル ガーデン』などを配給し、着実に前進していった。「やはり自分で買ってきたものは自分で宣伝、上映までしたいと思って、そうするにはまず映画館を作らなきゃいけないと。自然の流れですね」。

 映画館の物件探しも粘り、「一階からまるごと建物を使用できる」ことを条件に、2年以上リサーチ、交渉を続けたという。「一つの小屋が欲しかったんです。あと一階であれば人の目に留まりやすく、自分たちの表現したいものがすぐに伝えられるので。1階が映画館、2階が映像スペース&カフェ、3階がVRという構造も2年ぐらい前から考えていました。映画館というよりもテーマパークをイメージしていました」。

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シネコンにはない強みとしてコミュニケーションの場を提供

ココロヲ・動かす・映画館○
1960年代のフランスのモンパルナス界隈のカフェをイメージした、温もりあふれる内装

 「いい映画と出会ったときにゾクッと心を動かされる感覚を込めた」という劇場名のほか、外観、内装にもこだわりがあり、1960年代のフランスのモンパルナス界隈のカフェをイメージしたという。「そこは時空を超えた世界の知識人が集うカフェ。藤田嗣治や小津安二郎、フェデリコ・フェリーニ、いろいろな時代の人たちが映画や芸術、音楽などエンターテインメントを巡って語り合っていた……。そんな画をイメージしました」。

 そして、とりわけ目を引くのが料金体系。2階スペースは、映画開始30分までは無料(除外作品あり・ドリンク、食事いずれかの購入が必要)、1時間以内800円、それ以降は1,500円と課金制の導入を検討中だ。「よくありますよね、女性の化粧品のサンプルを無料で配布していたり。あと、ゲームもそうなんですよ。パッケージが売れなくなって、アプリが主流になっている。初めは無料で途中から課金されるシステムですね。今の若者は無料に慣れていますし、ミニシアターに触れる機会がなかった方にも無料だったら興味を持ってもらえるきっかけになるのではないかと」。

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 シネコンにはない強みを作っていく一環として、「コミュニケーションの場を提供する」試みも思案中だ。「シネコンって一方通行だと思うんです。劇場で映画を上映して、それをお客さんが観る。そこには会話がないと思うんですけど、映画を見終えた後に誰かと話したくなる時ってあると思うんです。なのでアルバイトのスタッフには、『どんどんお客さんに話しかけてほしい』と言っていますし、お客さん同士が映画をご覧になった後に交流できる感想会も定期的に開いていくつもりです。僕も昔、落ち込んでいた時によくバウスシアターに寄っていい映画を観て心を落ち着けられたことがあったので、ここもフラリと立ち寄れる場所になればと思っています」。

 現在は、昨年5月に69歳で亡くなった井の頭自然文化園のアジアゾウのはな子を題材にした映画を製作中という樋口氏。失敗を恐れず「常に工夫が必要」だと言い、料理のメニューのアイデアなど細部まで自ら考案する貪欲さ、柔軟さを持つ彼の熱意がついに実を結ぶ時が来た。(取材・文:編集部 石井百合子)

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