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映画業界の労働環境、何が問題?深田晃司、パク・ジョンボム監督ら激論

左から佐野正太郎(経産省コンテンツ課)、小泉朋(映画プロデューサー)、パク・ジョンボム(映画監督)、深田晃司(映画監督・独立映画鍋共同代表)、土屋豊(独立映画鍋共同代表)
左から佐野正太郎(経産省コンテンツ課)、小泉朋(映画プロデューサー)、パク・ジョンボム(映画監督)、深田晃司(映画監督・独立映画鍋共同代表)、土屋豊(独立映画鍋共同代表)

 映画監督の深田晃司土屋豊が共同代表を務めるNPO法人独立映画鍋と、第20回東京フィルメックス共催企画「映画の“働き方改革” ~インディペンデント映画のサステナブルな制作環境とは?~」が29日に有楽町朝日ホールで開催。経済産業省コンテンツ産業課の佐野正太郎、映画プロデューサーの小泉朋、そして本映画祭のコンペティション部門に『波高(はこう)』を出品中のパク・ジョンボム監督と共に、映画の撮影現場における問題点について語り合った。

 世間で「働き方改革」が叫ばれる昨今、映画の制作現場でも長時間労働や過度の低賃金、そしてパワハラ、セクハラなどを変えていこうという機運が高まっている。そんな中、20年後、30年後も映画産業が「誰もが憧れる産業」「夢を持って働ける産業」として発展していくことを目指し、経済産業省では、映画の制作現場に携わる人を対象とした「映画制作現場実態調査」を今夏実施し、このたびその調査結果レポートが取りまとめられた。

 そのレポートをもとに、日本の撮影現場の実態を経産省の佐野が解説。それによると、全体の構成としては正社員3割、フリーランス7割、男女比ではおよそ男性75%、女性25%といった割合だった。仕事を続ける理由としては「この仕事が好き」「映画が好き」という意見が圧倒的に多かった。そして業界の問題点として「低賃金」「長時間労働」「業界の将来性に不安」といった意見が挙げられ、いずれもフリーランスの声が多数。

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 またフリーランスの中で「発注書・契約書をもらっていない」は64.5%、「仕事を受注するときは契約書・発注書をもらいたい」は77.3%。アニメ業界の一部で「締切が定まるため、契約書は困る」といった意見があったものの、おおむね契約書・発注書が欲しいと考える人が多かった。

 そこで韓国の撮影現場の実態について、パク監督に話を聞くことに。韓国では、映画のチケットの売り上げの3%がKOFIC(韓国映画振興会)の運営資金になり、そこから映画製作の支援、映画の流通・配給の支援、海外市場の開拓や国際交流の推進に援助をするなどさまざまな映画振興事業に取り組んでいるのだという。

 パク監督によると、韓国では「全国映画産業労働組合」によって、製作者とスタッフが「標準勤労契約書」を結ぶことが義務付けられており、その契約においては残業時間込みでも週に最長52時間を超える労働は許されない。またスタッフは全員保険に入ることが必須。さらにme tooムーブメントの影響により、撮影前にはセクハラに関する講習を受けることも義務づけられている。

 「これはかつて自殺したり、命を失うスタッフがいたため、それを防ぐためにやられたことです」と説明するパク監督。ただし、このシステムを導入したことで、およそ1,000万円ほどの低予算で作られるような作品の場合でも、予算は1,900~2,000万円に。そして撮影期間も10日で撮影していた作品の場合、15~17日かかるようになったという。

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深田晃司
深田晃司監督

 それを聞いていた深田監督は「現場の労働環境を良くしようとすると、どうしても撮影日数も予算も増えていく。でもそれをそのままにしていると市場原理的にしか映画を作れないような状況になってしまう。つまり大手資本、もしくはお金持ちしか映画を作れなくなり、そうすると映画の多様性がなくなってしまう。それに対抗するためには一つずつコツコツとやっていくしかない。日本の文化庁が映画に使う予算はだいたい20億円。でもKOFIC(韓国)は400億円、フランスは800億円あります。まずはそこから改善していかないと。日本版KOFICが欲しいなと思いました」と決意を新たにしたようだった。(取材・文:壬生智裕)

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