シネマトゥデイ

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レオナルド・ディカプリオ
ダニー・ボイル(監督)
アンドリュー・マクドナルド(製作)
マサヒロ・ヒラクボ(編集)


『ザ・ビーチ』
(配給:20世紀フォックス映画)
会見日:4月10日
ホテルオークラ


久々の新作『ザ・ビーチ』を引っさげて、主演のレオナルド・ディカプリオほかスタッフが、さる4月8日に来日。成田空港も大騒ぎだったが、記者会見も並居る報道陣に騒然とした雰囲気の中で行われた。

 

レオナルド・ディカプリオ(以下D):みなさん、こんにちは。日本にお呼び下さいまして、また日本に戻って来れて大変嬉しく思っています。これで僕の来日は3回目となりますが、今回も大変楽しい時を過ごしています。そしてまた、映画の方も大変興味深いものなので、そちらの方も必ず観ていただきたいと思います。
ダニー・ボイル(以下B):こんにちは(日本語で)。日本に来れて大変嬉しい。僕にとって最大の誇りです。これまで僕達は日本人の編集者と仕事を一緒にやってきて、後で彼のことも紹介しますが、その彼と一緒に日本に来れたことを大変嬉しく思っています。
アンドリュー・マクドナルド(以下M):みなさん、こんにちは。私は日本に来るのが長年の夢でした。ですが、日本に来るためには映画を作るしかないと思っていて、今回その夢を果 たすことができました。また、今回はマードックさんが親切にも私共の旅費を払ってくれましたので、こうして日本に来られて嬉しく思っています。
マサヒロ・ヒラクボ(以下H):日本人ですが、30年も日本にいなくて(笑)。なるべく日本語で話したいと思います。
100本以上あったオファーの中で、この作品を選んだ理由はなんですか?
D リチャードという主人公が、僕を含めた現代の若者達の世代を象徴しているという、その点にとても惹かれた。今日、世界中の若者が抱いている悩みや苦しみといったものを、彼を通 して語ることができると思ったんだ。今の若者達というのは。テレビや映画、ラジオ、ビデオゲーム、あるいはインターネットなどに囲まれた、現実=リアリティからかけ離れた生活をしている。彼らはそういった世界に埋没していて、本当にリアルな、生身のものとは無縁の生活をしている。
リチャードはそれに飽き足らず、“何か”を求めて旅に出る。“何か”が何であるかは、わからないけれど。そういう生活から逃れて、自分で何かを探して外に出た彼は、もちろん最初は南国の楽園のようなものがあると思っている。そういう夢を追っている。そこでいわゆる文明社会から離れて海賊のような生活をすれば、そこに答えがあると考えていたんだ。ところが、結局は逃れられずに映画のような結末を辿っていく。
そういった若者が描かれていたのわけだが、そこには非常に自分と共感するものがあったんだ。 もう一つの理由は、前からとても尊敬しているダニー・ボイル監督と仕事ができるということ。僕はシナリオが来る前に原作を読んだが、その時点で原作のコンセプト、若者の描き方に共感を持った。そして監督が彼だったから、この企画をすぐに受け入れたんだ。
映画の撮影中に海に落ちてしまったという記事が報道されましたが、その時のことを教えてください。
A その状況は、僕がサリーという女性とゴムボートに乗っていたシーンを撮影していた時だった。映画の最初にダフィという狂人というか、世捨て人っぽい男が出てくるんだけど、その人物のことを二人で語るという場面 だ。リチャードにとってダフィはとても興味のある人物だったので、彼の話をするという設定だった。 ところが、結局その場面は編集で落とされてしまったんだ! だから映画には実際には出てこないんだけど、とにかく撮影の現場では撮影班が乗っている筏というかゴムボートと、俳優が乗っている小さなゴムボートがロープでつながれていて海の上にいるという状況だった。その時に引潮で波が立って、その波をかぶってしまったんだ。ボートがひっくり返って、機材やキャストも海に放り出されてパニック状態に陥ったよ。みんなは溺れかけていたけれど、僕はいろいろな過去の映画の経験から泳ぎが得意なので、僕自身はそれほど怖くはなかった(笑)。でも、みんなはパニック状態だった。そこへスピードボートが来て助け上げてくれたというのが、その事件の真相だよ。
あれだけステキなビーチを作り上げたのに、環境問題で反対を受けてまた元に戻してから帰国したということですが、本当は残しておきたかったのでしょうか?
そもそもあのビーチにはやしの木は生えていなかったのですが、地元の人の中にもやしの木はあった方がいいと言って下さった方もいました。ですが、映画の撮影に入る前にタイの林野省と約束をしていて、撮影が終ったら全て元の形に戻すということになっていた。だから、残念ながらやしの木があったのは3週間だけで、後は元に戻したんです。
やはり一番重要なことは、自然に委ねるということだと思う。自然の力というのはすごいものがあるから、私達はビーチを発見した時の、元の形に戻したんだ。もし嵐が来て、あのビーチが破壊されたとしても、それは自然の摂理で元に戻るわけだからね。とにかく、私達は自然に委ねるという気持ちがとても強かったんだ。
“パラダイス=楽園”の定義を教えて下さい。
楽園の定義というのは非常に面 白いアイディアだと思うし、そういう質問も随分受けたから僕自身もいろいろと考えたよ。結局たどり着いたのは、パラダイスがあるというのは間違った観念で、そういうものはないということ。いわゆるトロピカル・ユートピア、南国の楽園とか桃源郷といったものはないんだ。全ての答えが出るような場所は有りえない。結局、それは自分の中に探すほかないというのが僕の結論だよ。ラストゴール、最後の目標地になるようなそういった楽園は存在しないんだ。 もちろん、この地球上には美しい場所はたくさんある。リラックスして、自分を少し変えて何かを学ぶことが出来る場所というのはあると思うよ。だけど、究極的に自分の中の悪を全て追い払って、究極のハピネスを得る場所というのはないと思っている。
僕はいつも「音楽だ!」というふうに答えている。
息子と家に居ることが、僕にとってはパラダイスだ(笑)。
そうですね。やっぱりイージーな監督が一番いいと思います(笑)。
ボイル監督はイージーでしたか?
まあ、そうですね(笑)。
ビーチの本当の美しさが映像に表現され切っていなかったように思うのですが。
大変難しい質問ですね。まず第一に、何が美しいと感じるかというのは、大変客観的なことで個人差があると僕は考えている。今回われわれは、現地のビーチに手を加えたが、それはいわゆる欧米人のイメージする美しいビーチなんだ。やしの木が生えていて海がきれいで、といったイメージに合うビーチを作って、それを皆さんに映画でご覧頂いたわけです。実際に現地に行くとピピ島のビーチは自然の荒々しさがあって、それはそれで大変美しかったが、残念ながらそれは欧米人の考える美しいビーチのイメージとはちょっと異なるものだった。だから、そういった部分をあえて僕達は出さなかった。 それから、僕は今回のカメラマンであるダリアス・コンジを大変素晴らしい才能の持ち主だと思っている。事実、今回も大変いい仕事をしてくれたと思うよ。 アジアに住んでいると、そういう美しさを見慣れているのかもしれない。だけど欧米人から見ると、ビーチの美しさというものに対してはまた違った観念を持っているのです。
アメリカで公開を迎えるのと日本での公開を迎えるのとでは、どんな風に違った感情を抱いていますか?
『タイタニック』は本当に僕達の期待を超えて、社会現象というかカルチャー現象となった。作るのも大変だったけど、そのヒットの記録もすごくて、90年代を代表する映画と言っていいと思う。再度あんなヒットを飛ばすというのは、並大抵のことじゃない。とにかくアメリカも日本も関係なく、世界中でものすごい反響を呼んだ。だけど、僕は俳優としていつも出演する映画を選ぶ時は、チャンスに賭ける、前と違うものにリスクを追ってでもいいからやる、というのが僕の姿勢なんだ。 『タイタニック』は僕が選んだ時点では、それまでとは違う路線の映画を選んだつもりだった。それまでの僕の出演作は、わりとドラマっぽいものが多かったからね。だから、あれは自分にとってはリスクだと思ってやったんだ。それが非常に当った、というだけのこと。だから今後もああいう作品には出ないとか、そういうことではなくて、自分の姿勢としていつも前と違ったものに挑戦したいと思っている。それだけは、絶対に変えたくないんだよ。
いつも素晴らしいサントラですが、どういう基準で音楽を選んでいるのですか?
映画に比べて、イギリスでは音楽がとても発展していると思うし、イギリスの音楽はいいと僕は自負している。小さな島国ながら、これまでにも本当に素晴らしい音楽家を生み出していると思う。ビートルズから、もうすぐ来日するオアシスに至るまでね。特に彼らのほとんどがマンチェスター、またはリバプール地方の出身だ。僕自身もマンチェスター出身だが、イギリスに住んでいること自体が音楽の重要さを実感することであり、僕にとっては音楽が生活の一部になっているんだ。 僕が音楽を映画に選ぶ条件は、まずエキサイティングであること、興味深いこと、そしてちょっと変わっている、他のものとは違うという三つの点をいつも念頭に置いている。そしてもう一つは、映画のシーンに何かを加えられる、または映画のシーンの中の何かを物語っているという音楽を僕は選ぶように心がけている。
『トレインスポッティング』も『ザ・ビーチ』も世界中のティーンエイジャーの共感を得ました。これらの映画では、今時の若者がリアルであると共にとてもシニカルに描かれています。監督自身は彼らについてどのように考えていますか?
僕自身、ティーンエイジャーの娘を持っているので、言うことにはとても気をつかわなければいけないと思っている(笑)。彼女は日本のファッションが、とても気に入ってるみたいだよ。 僕にとってティーンエイジャーとは、とにかくすごくエネルギーを持っているグループだと思っている。そのエネルギーとは、何かを創造する力を持つと共に破壊する力も持っていると僕は考えているんだ。だからこそ僕は、映画では常にティーンエイジャーを描き、そして取り付かれたようにあの年代を描いてきたんだと思う。僕自身は、大変楽観的な視点で彼らを見ているよ。
ダニー・ボイル監督とレオナルド・ディカプリオという俳優の組み合わせは、意外でもあったしだからこそ興味深いものがあります。お互いにどのようなアプローチをして、映画を作り上げていったのでしょうか?
僕が俳優として仕事をする上で毎日努力しているのは、オリジナリティ=独創性を追うということ。作品を選ぶ段階でも、もう何回も作られているようなものではなく、必ずオリジナリティがあって冒険をするような映画を選ぶようにしているんだ。『トレインスポッティング』にしても『シャロウ・グレイブ』にしても、ボイル監督の作品は常に大変独創的で冒険もしていて、しかも人間をちゃんと描いている。そして素晴らしい映像のスタイルや音楽の選び方などは、説明する間でもないよね。だから僕は彼の作品を観て、ずっとこの監督と仕事がしたいと思っていたんだ。そしてこの作品のオファーがきた時には、僕は原作にも非常に惹かれていたということもあって、すぐにOKしたんだ。 現場では、監督は誰に対してもとてもオープンだったよ。また、いろんな冒険に富んだサジェスチョンも喜んで受けるという、僕の好きなタイプの監督だ。現場でサジェスチョンすればそれを取り上げてくれるという、危険を恐れない性格で、プラス人間としてとてもハートがいいんだ。そういう点が、僕にとってはとても魅力的で、仕事もやりやすかった。一緒に仕事をする上で、ハートがいいというのはとても重要なこと。監督の中にはすごく緊張してイライラする人とか、本当に悪い人もいるんだけど(笑)。その点、ボイル監督は非常に人柄がいい、ということは現場の仕事もよくなるし、結局作品自体もよくなる。そういう所に、僕はすごく感動したよ。
レオが毎朝セットにやってくる時は、まるで“犬の朝食”みたいにくたくたに疲れきった姿で現れるんだ(笑)。だけど、カメラが回り出すと本当に一変するんだよ。僕は今までにどんな俳優からも、こんな白熱した演技を見せてもらったことはないよ! なんでもない普通 のシーンでも、彼は全身全霊をかけて演技をしてくれた。彼の素晴らしさというのは、まさにそこにあるんだ。つまり、彼は本当に役を信じて、自分のやっていることを信じてやっているんだ。
日本人、アジア人が国外で活躍するということは大変だと思いますか?
私自身は大学も向こうで出ていますし、日本人というよりはイギリス人なんです。ですから、現場でもそういうことで大変だと思ったことはありません。日本人でもどこの国の人でも、才能とやる気さえあれば大丈夫。要は本人次第だと思います。
今回は南国が舞台でしたが、日本のように雪景色のきれいな映画を撮りたい、または出演したいと思いますか?
僕は何でも受け入れるので、もちろんよければやるよ!
なんか今、有珠山が噴火しているということだけど(笑)。今朝、大きな地震があったよね。ロスに住むレオは地震に慣れてるかもしれないけど、僕達は本当に初体験でびっくりしたよ。
雪とか桜などに対するイメージはどうですか?
昨日の夜、桜が見える場所をドライブしていたら三人の酔っ払いがいて、そのうちの一人が空気とケンカをしていたんだ。周りがやめろやめろって言って止めてるんだけど、さかんに空気と格闘していたのを見たよ(笑)。でも、桜の花を見ながらお酒を飲むというのは、とてもいい伝統だと思う。
リチャードを演じるに当って準備したこと、監督から受けたアドバイスは?
役作りのためにどれ位 のリサーチをするかというのは、演じる人物にもよる。例えば『ギルバート・グレイプ』のような特殊な役の場合には、かなりリサーチが必要となる。だけどリチャードというのは、自分と歳も近いし現代の申し子だから、割と自分に近いものがある。そういう意味では、リサーチはあまり必要なかった。
ただ、彼が狂気に近い感じになってしまうシーンで、どうしてそんなふうになってしまのか、動機が何なのかということはよく考えたよ。ああいう環境で人が長く生活していると、やっぱり少し異常をきたすのかなとか。その答えのヒントは、監督からもらったんだ。そのアドバイスというのは「リチャードはあの時点において一見クレイジーに見えるけど、実際に自分の中では、物事は以前よりもクリアに見えてるんだ」というもの。それが、すごくいいヒントになったよ。つまり、外見はクレイジーかもしれないけれど、頭の中では彼にとって物事はつじつまが合ってきている。僕は、そのことを頭の中に置いて演じた。
ものすごい報道陣の数ですが、3年ぶりの日本の感想はどうですか?
全く前と同じだよ。迎えて下さる日本の方は、非常に礼儀正しくて、優しくて、オープンでしかもあたたかい。それは毎回のことで、僕はそこが大好きなんだ。だから、今回も前回と特に違っているということはなくて、ああ、また日本に来たんだなと思っているよ。
先日アメリカのテレビ番組で、クリントン大統領にインタビューをしたということですが、クリントン大統領は環境問題にどれ位 貢献していると思いますか?
クリントン大統領はその問題に対して、非常に努力しようとしていると思う。ただ、政治の世界というのは難しくて足を引っ張ったりする人もいるから、残念ながらその努力が全て報われているわけではない。だけど、その努力は僕は非常にかっているんだ。 僕自身は地球の温暖化に関心を持っているが、そのTV番組で僕はその問題について語ることができるということでゲストホストを引き受けたんだ。そうしたら大統領にインタビューをするということになって、非常に驚いたよ。だけど、面 白そうだしやろうじゃないかということになった。僕が大統領に取材をすれば、この問題に対して世間の注目が集まる。それは悪いことじゃないと思ったんだ。
質問される側とする側とどちらが楽ですか?
そうだなぁ、いつもインタビューはされているけれど、自分がしたのは今回が初めてだった。人から何かを引き出すというのも難しいけれど、自分自身のことを語るというのも難しい。今回のことで、両方難しいということがわかったよ。
映画の中に出てきたサメは本物ですか?
B 答えはNOだよ(笑)。この映画の中ではいくつかのシーンで俳優が海に入る場面 があるが、事前に彼らからこの海域にはサメはいるかと聞かれて僕は「いない」と答えた。実際にはタイ周辺の海にはサメは出没するらしいが、我々が聞いたところによると噛まないそうなんだ。でも、いることは確かにいるそうだよ。 サメよりココナッツの方がより恐ろしくて、聞くところによると毎年約50人ほどの観光客が死ぬ らしいよ! やしの木の下で昼寝をしていて、上から落ちてきたココナッツが頭に当ってね。


photo by Rena kondo




photo by Rena kondo



 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

『ザ・ビーチ』
2000年度作品
(配給:20世紀フォックス映画)
2000年4月22日より
http://www.thebeachmovie.com
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