シネマトゥデイ

ケヴィン・スペイシー インタビュー   





金が欲しくてこの映画 に出たわけじゃないんだ。
ケヴィン・スペイシー(以下S) やあ、おはよう。あれ、今何時だっけ。こんにち はって言うほうがいいんだっけ。こうやってホテルに一日中缶詰になっていると、時 差ボケも混じってきて、時間の感覚っていうのがなくなってくるんだよね。それにこ のホテルの従業員は狂ってるよ。暖房入れたいくらい寒いのに、エアー・コンで冷た い風が流れてくるんだから。君も石みたいになっているじゃないか。
はい。とっても寒いもんで……。ところで、本題に入らせていただきます。今回 の『アメリカン・ビューティー』は、監督がイギリス人というせいもあるのか、今ま でのアメリカ映画とはかなり違ったタイプの作品ですよね。
うん、確かにそう思うね。明快なおかしさがあるだろう。ただ単純に腹を抱えて 笑える部分もある。残念ながらアメリカの映倫は頭がカチカチで、大半のティーンエ イジャーたちは映画館に見にいくことができないんだ。馬鹿げた年齢制限が付いてい るからね。いつの日かこういうすばらしい映画が、キッチンのテレビでも気軽に見る ことができるような時代になってくれればいいのにね。
エリートの地位を捨ててハンバーガーショップの店員になるシーンなんてもうお かしくて、あなたがあんなに観客を笑わせたのは初めという気がしましたね。
「スマイリーズ」ってすごくユニークな店なんだよ。企業のために働くことに誇り も喜びも感じなくなった主人公は、自主的に退職して、ファーストフードの店員にな るんだけど、そこに彼は自由と平和、そして単純な幸せを見い出すんだ。常識に縛ら れて生きている人間たちにはこの男の行動は軽薄なものに見えるだろうけど、本人に は一流会社でがむしゃらに働く自分のことが馬鹿らしく見えてきたんだ。地位 も名誉 も考えないで働ける職場に転職して、解放感を味わうんだよ。僕自身、実生活ではハ ンバーガーショップで働いたことはないんだけどね。この主人公も言っていたけど、 すごくやりたかった仕事というわけじゃないし、またすぐに転職するかもしれない。 でも、一流会社をやめて新しい職場を探してみようとするモティベーションを持つこ とが大事なんだよ。
では、あなたがこの映画に出演することを決めたモティベーションとは、そもそ もどんなものだったのでしょうか。
自分はまだ魂を売ってないということを証明するためさ。金が欲しくてこの映画 に出たわけじゃないんだ。それに同じタイプの役柄や映画にばかり出演し続けるとい うことにも終止符を打ちたかったんだよ。生活費を稼ぎ出すために出たくもない映画 の仕事を引き受けている人間は多いと思う。僕はそういう人間の仲間入りだけはした くなかったんだ。あくまでも自分の道を突き進んでいきたいって美学は持っているか らね。
でも今回の『アメリカン・ビューティー』のストーリーは、脚本だけを読んでみ ると、いい作品になるのか駄作になるのかは運に任せるみたいなところはなかったん ですか? コメディかと思うと、途端に悲劇になったりして……。この辺のバランス が微妙なものになっていたと思うんですが、いかがでしょうか。
映画の作品がどんな具合に仕上がるかなんていつも賭けみたいなもので、リスク はかならず付いて回るものだよ。でもね、僕はサム(・メンデス監督)と話し始めて 5分もしないうちに「この人は本物だ」ってことに気付いたんだよ。ヴィジョンや考 え方をしっかり持っていて、この人との仕事なら絶対に大丈夫だっていう気持ちにさ せられたんだ。それに僕は脚本の質の高さを最初から信じることにしたんだ。後は 一か八かの勝負に出るしかないんだ。だから当然リスクもあるわけさ。僕とサ ムは最初からお互いに協力的な姿勢でこの映画に取り組んだんだ。もちろん僕 も映画監督としての経験があるから、僕が監督を手懸けるというチョイスもあったけ れど、サムのように信頼できる人が監督という役目を引き受けてくれたんで、迷うこ となく演技に没頭できたんだと思うね。
  スタジオ側やプロデューサーの僕への見方はかなり変わった と思うよ
この映画にロマンティック・コメディの要素が強いということも大きかったので はないですか。
いや、それだけじゃないと思うよ。この映画に主演する前に僕の周りで作りあげ られたダークなイメージを払拭するには自分なりにとても努力したからね。確かにこ の映画に出演してから、スタジオ側やプロデューサーの僕への見方はかなり変わった と思うよ。「あのネクラのケヴィン・スペイシーにもこういう役ができるのか」ってね。
映画スターでも俳優でもある固定したイメージを植え付けられてしまうと、そこ から全く抜け出ることができなくなってしまいますよね。ところであなたには理想の 手本となるような男優はいたのですか。
僕にはいなかったよ。ハンフリー・ボガードとかダスティン・ホフマンとかそう いう人たちをお手本にして形を作ってしまうというのはとても簡単なことだけど、僕 は決してやらなかったんだ。いや、逆に今までに前例がなかったことをしてみたいと 思ったね。一つの役で名前が売れると同じよ うな役が何度もオファーされる。ところが、これを受け入れ続ける と、僕はその手の役しかもらえない俳優になってしまうんだ。だから、敢えてそうい う役を断わり続けながら、違うタイプの役が回ってくるまで、周りを説得し続ける。 それを僕はずっと頑張ってやってきたんだよ。その部分をとても理解してくれたのが サムだった。僕には今回の役を受け入れる態勢をきちんと整えていたから、すべてが スムーズにいったんだと思う。しかも、ラッキーなことに製作がドリームワークスだ ったしね。
レスターのような男性を演じるのに、入念なリサーチをしたんですか、それとも勘に頼っ たところが大きいんですか。
直感の演技っていうところかな。脚本とははずれないように人物像を理解して演 じてみたつもりだけどね。肉感的な部分と同時に精神的でエモショーナルな要素がこ の映画根底に流れているということが、観客にも伝わると思う。しかし、そこをうま く表現できたのは2週間半もの時間をかけてリハーサルを重ねて、サムといろいろな ことを話し合うことができたからなんだ。主人公と妻、娘、娘の友達との関係という ものをとことん話し合って理解していたからこそ、スクリーンの上で表現できたのだ と思うよ。僕はこの映画の中に流れる精神性や感情にうまく乗っていくようにしたん だ。主人公が歌い出したい時には、僕はいつも口ずさんでいたしね。とにかく、そこ をはずさないようにしたんだ。だから直感に頼った部分はかなりあると思うね。リサ ーチしたのは主人公にリアリティを持たせるために広告代理店に勤めている男性に一 度話しを聞きにいったくらいかな。
死人がナレーションするというのも、とてもシュールリアルな感覚ですよね。
僕はその部分がすごく気に入っているんだ。でも、死人が語るというのは、そん なに斬新じゃないんだよ。『サンセット大通り』といった昔の名作で使われている手 なんだ。最近よく死ぬ役をやらされるんだけど、死ぬっていうのはどんな感じなんだ ろうか。臨死体験っていうのを実生活ではまだ味わったことがないから、すごく興味 があるんだよ。
 
テキスト:今井孝子


 

 

 

『アメリカン・ビューティ』
1999年度作品 ドリームワークス映画
配給:UIP
大ヒット上映中

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