シネマトゥデイ

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キンバリー・ピアーズ監督

『ボーイズ・ドント・クライ』
(20世紀FOX配給)
会見日:5月11日
東京・ホテル西洋銀座にて

大学で日本文学も学んだことがあるキンバリー・ピアーズ監督は、2年間日本に住んだこともある。始めて覚えた日本語のセンテンスは「ここから、ここまで、何番線が出ますか?」とのこと。 早口で通訳泣かせと言われてもいるそうだが、この日、彼女はいつもより遅い口調で喋ってくれたと当日の通 訳、戸田奈津子さんが語っていた。

 
 
 

この作品を通して、社会に対して訴えたいことやメッセージはあるか?

私は映画を作る時にメッセージを作品に入れる、という作り方をしないの。人間をとても重要視していて、個人的な興味からその人に触発されて作品を作るという資質を持っているんだと思うわ。私はこのブランドン・ティーナという人物を94年に知って、なんていう凄い物語りなんだろうと、とても感銘を受けたの。貧しいトレーラーハウスに住み、お金もなく、パンツの中にソックスをつっこみ、男としてのファンタジーを生きていたことを知って非常に興味を覚えた。女とデートして、彼女は自分が女であることがばれても全然気にせず、その生き方を通 した。すぐにばれるような盗みを働いたりする犯罪者でもあったけど、腕のいい犯罪者ではなかったわ。でも私はそんな彼女に恋をしてしまったの。ブランドンは生きている時にはだれにも理解されなかった。そして死後も。私はそんな彼女をきちんと描きたいと思ってこの映画を作ったの。
今後、題材にしてみたいと思っている実際の事件はあるか?
沢山ありすぎて、これだけって絞られることはないけど、やはり人間ね。純粋さやユーモア、イノセンスをもった人間にとても惹かれるし、興味があるの。次に撮ろうと思っているのはやはり犯罪に関する映画だけど、ブランドンのように殺されたりはしないわ。私は人間というのは文化の申し子、文化が作りだしていくものだとおもっているの。私は文化から吐き出された人間だから、その文化に対して吐き出してやるという気持ちでいるわ。アメリカ、時代、神、のように現実の問題にかかわりのあるテーマをもった映画をこれからも作っていきたいわ。
実話を元にした映画を作ると後から実際と違っていると言われることが多いがこの映画はどうか?
ノーマン・メイラーの「死刑囚の唄」や黒沢監督の「羅生門」などを例にとってみても描く人によって、色々なバージョンの映画がある。これが決定版というのは絶対に出てこないと思うわ。私も実際この町に行ったりレズビアンの人にインタビューしたり、ブランドンがたどった足跡を現実に全部歩きまわった。裁判にも出たし、ブランドンの恋人レナにも会った。1万頁ある裁判の為の調書を全部読んだ。集まる限りのデーターを集めたのだけど、そうすると人々の言っていることが矛盾していたり、どこか辻褄があわないことろが出てくる。1人の人が言っていることですら矛盾がある。その中から本質を自分なりに消化していく。それから、その人物ごとに行動の年表を作るの。そうすると彼等の行動のロジックが見えてくるので、そこから物語りを作っていくのよ。 たとえば、ブランドンはなぜ都会へ行かないで田舎町へわざわざ出てきたのか?のように一つ一つその人物のたどった行動を調べて物語の構造を組み立てる。だから、彼等のたどった心の中の軌道は可能な限り真実に近付けていると思うわ。

ヒラリー・スワンクについて

ブランドン役は3年間ずっと探していて、3年目に彼女と出会った。男装もすばらしいし、イメージにぴったりだったの。彼女にこの役をあげるかわりに条件を出した。それは、完全に人格を変えることをしてほしい。「レイジング・ブル」でデ・ニーロが見せたような完全に人を変えることをしてほしい。それが出来るかと聞いたら彼女は出来ると答えたの。なおかつ、彼女はリンカーン出身で歳は21歳と自分で言った。ブランドンはリンカーン出身で21歳で死んでいる、私はヒラリーはブランドンの再来だと思った。だけど、あとで歳が嘘だということがわかって彼女に言ったの。そしたら彼女「そう嘘よ。でもブランドンだって大嘘つきでしょ」って平然と言ってのけたの。 彼女にはブランドンの負っている心の傷を理解してもらったり、役作りをしていったのだけど髪の毛を男の髪型に切る時、美容師が途中で手を止めてこんな美しい髪を切ることは私には出来ないったことがあった。私はその美容師を首にして新しい美容師を雇った。そして髪を切り終わった彼女を見てびっくりしたわ。だってマット・デイモンとレオナルド・ディカプリオを足して2で割ったようなハンサム・ボーイに仕上がっていたのだもの。そのヒラリーを見て私は、ここまで来た4年半の労が報われたと思って本当にうれしくなったの。 その時鏡の中のヒラリーと目が合って、彼女の目がこう言っていたわ。「あなた、私には出来ないと思っていたんでしょう?」私は目で「参ったわ!」って言ったの。

 

 

 

『ボーイズ・ドント・クライ』
1999年度作品
20世紀FOX配給
2000年7月上旬
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