シネマトゥデイ

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情報誌等で活躍するライターや編集者が毎月5本の映画を評価! 映画を観ることに関しては‘プロ’には違いないが、プロといえども人の子。作品の出来の善し悪しに関わらず、好き、嫌いはどうしてもつきまとう。このコーナーでは作品評価の他に個人的な好みを★5段階で表現した。ただしあくまで映画は私的なものなので、ここでの評価が低いからといって読者にとってつまらない映画かといえば……それは劇場へ行って自分の目で確かめよう!
-近況など-

映画ライター
新年早々ナンですが、『スティング』『明日に向かって撃て』のジョージ・ロイ・ヒル監督が昨年末に亡くなった。私は彼の『ガープの世界』を見てしびれるほどの感動を初めて経験しました。ありがとうございました(泣)。
ライター
初詣で引いたおみくじ。吉で、今年は運気が上向きとあった。占いも12年に1度の絶好調! ちなみに今年一発目の取材は、パトリス・ルコント監督。愛について語る素敵なオヤジだった。んー、こいつは新年早々トレビアン…。

編集者&ライター
年明け早々、仕事が立て込み万年肩凝りが悪化中。そして先日、サイトのメンバーで新年会をやったところ、血液型の話題で大盛り上がりとベタな展開に。みんなの血液型を知り、お互いに納得したようなしないような!?

ボウリング・フォー・コロンバイン

ストーリー「なぜコロンバイン事件が起きたのか?」、「なぜ銃犯罪が多発するのか?」、「こんなアメリカに誰がした?」ジャーナリスト、マイケル・ムーアが、核心を突く究極の疑問をロック歌手からライフル協会会長、大統領にまで投げつける!
日本公開:1月25日
(恵比寿ガーデンシネマ)
上映時間:2時間
配給:ギャガ・コミュニケーションズ


アポなしの突撃取材で人気のジャーナリストが作ったドキュメンタリーなんて聞いてたので、押し出しの強い“アメリカのみのもんた”のような人物を想定してたら、ヨレヨレのジーンズ履いて太ったオジサンだった。ところがこいつが論理的で行動力があって芯が強いんだなぁ。でも声高にならずボソボソ語りながらアメリカの異常性を暴いていく。共感あり、発見あり、おまけに感動まである。9・11のテロ以来国粋的になってるアメリカでこんな作品を撮った彼のタフネスに力づけられた。


人の良さそうな顔にテディ・ベア体型で、どこに行くのも誰に会うのも野球帽にヨレヨレのGパン姿のマイケル・ムーア監督。しかし、これが何に対しても屈しないジャーナリスト魂を表わしているようだ。さまざまな人に突撃取材をかけて、本音を引き出す。最大の見ものはハリウッド映画の大御所にして、全米ライフル協会会長のチャールトン・ヘストンへの取材。ほんの数分だが、ムーアは相手に臆せず核心を突く質問を投げかける。返答に戸惑うヘストン……、拍手喝采、爆笑しつつ、こんな取材って自分にできるかと自省しちゃったよ。


コロンバイン高校の銃乱射事件を題材にしたドキュメンタリーなんて、どんなに重苦しい映画かと思っていたら、なんて面白いの! 何よりも監督&脚本&主演のマイケル・ムーアのキャラクターが抜群。人の良さ気なのほほんとした雰囲気を漂わせつつ、取材対象に鋭く切り込んでいくジャーナリスト魂は頑としていて揺ぎない。かといって決してヒステリックにはならず、ウィットの効いたユーモラスな視点でしばしば笑わせてくれる。マリリン・マンソンやマット・ストーンへのインタビュー映像も興味深い。

裸足の1500マイル

ストーリー:1931年オーストラリアでは先住民アボリジニの混血児たちを家族から隔離する〔隔離同化計画〕政策がとられていた。収容所に連れ去られた少女3人は、母の待つ故郷へ帰るため、2400キロに及ぶ行路を歩き続けた。
日本公開: 2月1日
(恵比寿ガーデンシネマ )
上映時間: 1時間34分
配給: ギャガ・コミュニケーションズ
オーストラリア/カラー/シネマスコープサイズ/SR、SRD


1500マイルってつまり2400キロメートルである。その距離を年端もいかない少女三人が引き離された母を求めて歩き続けるのだ。オーストラリアのカラカラに渇ききった石ころだらけの沙漠のような大地と、弱々しい少女たちのコントラスト。ああ、痛々しくて辛い。そんな彼女たちに迫り来る追手、そして災難が次々と襲い……ってなあざとい演出はないから、「母を訪ねて三千里」的な涙は期待しない方がいい。だけど、ひたすら淡々と歩き続ける彼女たちの強さと賢さにじんわり感動でした。


母親のいる故郷を目指して、90日間1500マイル(=2400キロ)徒歩の旅。とてつもなく広い荒野を、「あっちがわたしんち」と信じて歩く年長の少女のサバイバル能力は凄いっ! そんな彼女たちの旅を描きながら、ケネス・ブラナー扮する傲慢な保護官を通して、白人たちによって被ったアボリジニの悲惨な歴史を浮き彫りにする。ま、単純過ぎるとも思うけど、シンプルだからこそ心に響く物語。過酷な旅を表現するクリストファー・ドイルの映像も素晴らしく、ピーター・ガブリエルの音楽も魅力的。老若男女誰でも楽しめる良心的な作だと思う。


「母を訪ねて三千里」みたいな設定からすると、もっとお涙頂戴っぽくて苦手なタイプの作品かと思っていた。が、意外にも一歩引いた視点からの淡々としたドラマが展開するので、すんなり物語に入っていくことができた。なによりも驚くのは、オーストラリアの原住民アボリジニをめぐる歴史の残酷さ。ケネス・ブラナー扮する保護官をはじめ、この映画に登場する白人のアボリジニに対する行為には衝撃を受けた。しかも、これってそれほど過去の話でもないんだよね……。

ボーン・アイデンティティー

ストーリー: 記憶を失ったボーン(マット・デイモン)は、記憶を取り戻すために訪れたスイスの地で謎の組織に追われる。彼は偶然出くわしたマリー(フランカ・ポテンテ)と共に逃げるが、彼の身体には超一級の戦闘能力が備わっていた……。
日本公開:1月25日
上映時間:1時間59分

(日劇3他全国 )
配給:UIP



久しぶりに“アクション大作”で興奮しちゃった。平凡な容貌のヒーローにヒロイン、秘密装備もなく馬力もない小型車でのカーチェイス、秘密兵器を使わない戦闘シーン。つまりこれはアンチ007なのだ。だから説得力のあるストーリーになってる。だけどそれだけじゃない。アクション・シーンの激しさと高揚感は超一流。試写室では極力感情表現抑制してるけど、編集と音楽がイイので思わず身体が揺れちゃったよ。リアルなのにノリノリって凄い! スタッフ変えずに続編頼みます。


マット・デイモンとアクション映画はミス・マッチと思ったが、意外にOK。というか、「自分は何者か?」と悩める主人公をナイーヴに演じて、単なるアクションスターとは一線を画している。その上役作りのため鍛え抜いた体は知性を感じる、程よいマッチョ。事件に巻き込まれるフランカ・ポテンテとの相性もよく、スピーディーな展開で最後まで息つく暇はない。とくにミニ・クーパーでパリの狭い路地を警察相手にやり合うカーチェイスは凄過ぎて笑う。もしかして、親友ベン・アフレックよりアクション映画に向いてるかもよ。


 
 
これから観ます!

レッド・ドラゴン

ストーリー:“人食いハンニバル”と呼ばれた殺人鬼ハンニバル・レクター博士(アンソニー・ホプキンス)を刺し違いで逮捕したFBI捜査官グレアム(エドワード・ノートン)は、FBIを引退する。しかし、数年後、連続一家残殺事件を追うFBIは捜査に行きづまりグレアムに捜査協力を要請してきた。
日本公開:2月8日
(日比谷スカラ座1他にて全国)
上映時間: 2時間5分
配給: UIP


トマス・ハリスの原作が大好きなので、再映画化はかなり心配でした。なによりその起用に怒りさえ感じたのがブレット・ラトナー監督。なぜ『ラッシュ・アワー』なんてダメ映画の監督が抜擢されちゃうの? だけど、本物の“敏腕”プロデューサーのディノ・ディ・ラウレンティスと『羊たちの沈黙』のテッド・タリーの脚本に両脇をがっちり押さえ込まれて手堅い演出になった。観終わって本気でホッとしています。ただ一つ、稀代の変態殺人鬼を演じたファインズが綺麗過ぎたかな。


ホプキンスにとってレクター博士は当たり役。しかーし。老けてズンドコな体型となった彼は、もはや怖いというより、愛すべき存在になった感じ。おまけに鍛え抜いた背中に芸術的なタトゥーを披露するレイフ・ファインズは悲しすぎる男を演じるが、あんまり素敵な全裸には話の筋を忘れそう。で、フィリップ・シーモア・ホフマンは生白い体にブリーフ一丁が光る。私は背筋が寒くなるより、笑いの連続でありました。原作にほぼ忠実なのに、映像になるとギャグな世界って一体? 演技派揃え過ぎたのがアダになったか。


原作は今、読み返すとやや古めかしいが、映画は結構怖くて楽しめた。前作『ハンニバル』が原作も映画も“それはちょっと違うだろう”という感じだったので、初心に戻って『羊たちの沈黙』を意識した作りは好感度大。何より、このキャストの豪華さといったら! 原作のイメージにもかなり近い、芸達者の実力派が勢ぞろい。なかでも主役のグレアムに扮するエドワード・ノートンは、内省的なナイーブさが◎。欲を言えばフィリップ・シーモアにはもうちょっと活躍して欲しかった。

抱擁

ストーリー:アメリカの学者ローランド(アーロン・エックハート)は19世紀ビクトリア朝時代に活躍した詩人アッシュ(ジェレミー・ノーザム)の手紙を偶然発見するのだが、それは愛妻家で知られるアッシュが妻以外に宛てた熱烈なラヴレターだった……。
日本公開: 陽春
(シネスイッチ銀座他)
上映時間: 1時間42分
配給: ワーナー・ブラザース映画



制約が多いからこそ激しく燃え上がる100年前の男女の秘めた恋、そして惹かれあいながらも自由ゆえに思いを深められない現代の男女。この二組のカップルの愛をからめてのストーリー展開は見応えがある。キャストもアーロン・エックハートとジェレミー・ノーザムがイイ。特にエックハートの明確な理由もなく恋愛に消極的な男ってリアルだった。一方のグウィネスの“美人イギリス人”役はリアルじゃないな。彼女ってホントに人気あるの? ずーっと不思議なんですけど。


ベタっちゃベタな話だが、情熱的で大胆な詩人の恋と、恋に臆病な現代の学者たちの恋の行方を見るうち、我が恋愛経験を思ってしみじみ。一見ファンタジックで、実はストーカー女じゃん!の『ベティ・サイズモア』を撮ったニール・ラビュート監督。観客の心をつかむのがお上手だ。それにしても、最近大活躍のジェレミー・ノーザム(『ゴスフォード・パーク』、『カンパニー・マン』)がいい。んー、こんな男と恋に落ちたら、人生どっぷりロマンチックかも。ラストも秀逸で思わずホロリだ。あ、主演グウィネスの見どころはファッションのみって感じ。


19世紀に生きたふたりの詩人と、現代のロンドンに生きるふたりの研究者たち。この二組のカップルの物語が、過去と現在を交錯しながら展開していく。グウィネス・パルトロウとアーロン・エックハートによる現代編は、かなりベタな感じだが、ジェレミー・ノーサムとジェニファー・エールという、渋い実力派コンビによる過去編は実にロマンチック! うっとりするような情緒と知性、そして哀歓あふれるドラマに、ノーブルな香りが漂う文学的世界を堪能することができます。

 似顔絵イラスト:川合夕香

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