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『トゥー・ブラザーズ』ジャン=ジャック・アノー監督&トラ独占インタビュー

取材・文:平野敦子

『子熊物語』や『セブン・イヤーズ・イン・チベット』など、多彩な作品を撮り続けているフランスの巨匠、ジャン=ジャック・アノー監督。彼が15年前から、その瞳に強く惹きつけられていたというトラを主人公にした、念願の作品『トゥー・ブラザーズ』がついに完成した。アンコールの遺跡を舞台に数奇な運命をたどることになるトラの兄弟の絆を描いた傑作だ。自身もかなりの動物好きらしく、長時間の撮影でぐずる子トラに優しく話しかけ、仲の良いツーショットを見せてくれた監督に話を聞いた。

Q:今回の撮影には30頭のトラが使われたということですが、監督の一番のお気に入りのトラは?

私の一番のお気に入りは“サンガ”役のトラでした。彼は本当に魅力的な目をしていて、すごく深みのある表情をしていたんですね。みなさんひとくくりにトラと言いますが、実はそれぞれが個性的で、性格が一頭一頭異なるんですよ。そのシーンごとに必要な性格というものがあるわけですから、それぞれのシーンによって何頭ものトラを使い分けました。映画には主役のトラというものがいますよね。そのトラには人間のスターと同じように、彼ら専用のスタントがいました(笑)。動物というのはなかなか集中力が持続しませんから、メインのシーン以外は、よく似たスタントのトラを使って撮影したりして、合計30頭のトラ達が活躍することになりました。

Q:遺跡での撮影や、子どもやトラ相手の難しい撮影の中で、一番大変だったことは?

プロモーション(宣伝)活動です! なぜかと言えば、この映画は一言で説明することがとても難しいからです。一見これは子ども向け映画だという印象を与える作品です。けれどもこの作品には実は、家族や兄弟の絆、そして動物と人間の友情や、野生動物の絶滅の危機など、様々な奥の深いテーマが盛り込まれているのです。トラたちはとても賢かったし、子どもの俳優も飲み込みが早く、優秀なクルーにも恵まれましたので、撮影はとても順調に進みました。遺跡の撮影も考古学者達のアドバイスにより、スムーズに行えたのです。私はこれは人間の俳優が出演するフィクションのドラマであるけれども、あくまでも動物の視点で描かれた作品だということを知ってもらいたいのです。ただの表面的な”動物映画”ではないということを、いかに観客の皆様にわかっていただくかということが、より重要だということを申し上げたいと思います。

Q:この映画の一番のハイライトシーンはどこだと思いますか?

私が最も素晴らしく感動的なシーンだと思うのは、離ればなれになっていた兄弟のサンガとクマルが、偶然にも再会するところです。私たちはあのシーンを撮る時に、果たして我々の思い描くような、再会のシーンが撮れるかどうか、とても心配していました。実際にあのシーンを撮るために15日間、本物の兄弟のトラを引き離していたんですが、お互いを再び会わせた時に兄弟だとわかるかどうか、あるいは二頭がケンカを始めてしまったら……などと思い悩んでいたのです。それこそトラに気持ちを聞いてみなければわからないというような状況でしたね(笑)。あそこは撮影していた私たちも、心を強く揺り動かされたシーンでもありました。彼らは私達の望んだ以上の演技を見せてくれたし、演じるという以前に、本当に心からしばらくぶりの兄弟との再会を無邪気に喜んでくれたのです。その感動が、きっと画面にもにじみ出ていると思います。

Q:トラと同じ空間で共演したのは、ガイ・ピアースの1シーンだけだったそうですが?

あれはガイ・ピアースからの”一度でいいから、実際に300キロもある猛獣の前に立ってみたい。その時に自分がどのような気持ちになるのかということを体験してみたい”という、たっての願いだったのです。だから一番おとなしい、頼りになるトラを選んで、撮影の直前にお腹一杯のお昼ご飯を与えた上で撮ったという訳なんです。それによってガイ・ピアースは開眼し、その体験がその後の彼の演技にすごく反映されていたと思いますよ。

Q:ガイ・ピアースは猫を飼っているそうですが、監督はいかがですか?

彼は猫を7匹も飼っているんですよ! 私も以前猫を飼っていました。その猫がこの映画の私にとってのコンサルタントでもあったのですが、残念ながらうちの猫は、本作がパリで公開される日に亡くなってしまいました……。私は田舎に農場を持っていて、そこにはロバやポニー、羊、ガチョウ、アヒル、ハト、ウサギなど、たくさんの動物がいます。

Q:パリでこの作品が公開された時の観客の反応はいかがでしたか?

とても良かったですね。大変好意的な批評が多かったし、興行的にもヒットしました。

Q:他の国での公開の予定は?

世界中での公開が決まっています。それこそ公開されない国を数えた方が早いぐらいですよ。確か195か国というようなレベルだったと思いますが……。あ、私のボスが220か国と申しておりますので、では220か国ですね。オリンピックに出場しているような国はすべてカバーしていると思いますよ(笑)。

Q:監督はどのような観客にこの映画を観てもらいたいと思いますか?

私はどのような観客に観てもらいたいと、ターゲットを絞って映画を作っている訳ではないんです。まず私にとって一番最初の観客というのは私自身ですから。もちろん中心となる観客というのは大人の方々だと思いますが、子どもさん連れでいらっしゃっても、お子さんも大人も、両方が十分に楽しめる内容になっていると思います。

世界的な巨匠にも関わらず、ジョークを交えながら会話を盛り上げてくれる、サービス精神たっぷりの監督。本作では監督、脚本、原作、製作をすべて担当し、積極的にプロモーション活動を行っていることからも、この映画への確かな自信と愛情がうかがえる。心底動物好きらしく、一緒に撮影にやって来た子トラも、まるで宝物に触れるかのような扱いだ。カメラマンの「一緒に寝転がってもらえますか?」とのお願いにも、「私はこの子がしたいと思えばそうしたいけれど、そうでなければ無理強いはしたくありません」と応えるほど、動物の気持ちを大切にする、とても心優しい紳士なのである。彼の作品が世界中で公開されれば、世界はもっと幸せになるに違いない!

『トゥー・ブラザーズ』は9月18日より丸の内ピカデリー1ほかにて公開

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