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『七人の弔』ダンカン監督単独インタビュー

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『七人の弔』ダンカン監督単独インタビュー

取材・文:森田真帆 写真:FLiXムービーサイト

キャンプ場に集まった7組の親子。子供たちは、いつも冷たい親たちが、妙にはしゃぐ姿を見てどこか浮かない顔をしている。実はこのキャンプ、子供たちの臓器を売ろうとする親達が企てた世にも恐ろしいキャンプだった。そんな恐ろしいストーリーを独特のブラックユーモアで彩った映画「七人の弔」を、初監督を務めたダンカン監督に話を聞いた。

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悲しい子供たち

Q:まず始めに、この「七人の弔」のストーリーを聞いた時、「臓器売買」と「虐待」がテーマということで残酷なシーンが出てくるような映画を想像してしまったのですが、血の出るようなシーンはまったくありませんでしたね。

そうですね。どちらかというと、心理的に怖い、というより、こんなことが起こったら寂しすぎるなって思うようなことに重点を置いて作りました。臓器がどうこう、ということよりも子供が親に愛されていないのに愛されていると信じ込んでいたり、そんなことのほうが実際ずっと悲しいと思うので。

Q:この映画の構想はいつごろからあったのですか?

まず、タイトルから決めました。尊敬する黒澤明監督の「七人の侍」から「七人の弔」と。それから、じゃあ7人だったらどんな7人を出そうか、となって、ああ親子がいいんじゃないかと。親子だったら、舞台はキャンプ場かな。キャンプ場だったらどんな目的で、キャンプ場に集めようか。というところまで来て、最近の親子関係だったら「虐待」をテーマにしようと。そんな風に決めていきましたね。

さまざまな親子の形

Q:七人の子供たちを中心に、母と息子、父と息子、母と娘、義母と娘、母と愛人と娘、などさまざまな親子の形が出てきますが、それを描くうえで気を付けた点はありますか?

一番、明確だった親子関係というのはシングルマザーを演じていたいしのようこさんの親子ですね。とくに変わった背景もなくただ、母と子2人きりという環境の中子供は母親しか頼れない。信じられない。心の中で息子は「もしかしたらママは僕のことを好きじゃないかもしれない」ということを感じていながらそれを否定しながら生きている。

いかにも、虐待をしている、されている親子、というより、他人から見れば町中(まちなか)で見かけるような自然で、現実味のある親子像を作ることに重点を置きました。

「しつけ」と「暴力」の境目

Q:監督にとっての「しつけ」と「暴力」の境目はどこなのでしょうか?

僕は、子供を怒るときは殴りますよ。うちは、長女が高校生で、次男が中学生、一番下が7歳ですが、ちゃんと叱っています。ただ「しつけ」というのは、自分で殴った後に親の心も傷つく。その葛藤がなければ「暴力」になると思います。社会に出たときに人様に迷惑をかけるような人間にはなって欲しくないし。

Q:自分にいちばん近い父親像はこの映画にでてきますか?

いやあこの人たち全員かなりダメオヤジですからねえ(笑)。

Q:監督自身、子供時代に「虐待された」という記憶はありますか?

まったくありません。オヤジというのはランニング着て、僕が漫画でも読もうものなら「誰が飯食わしてやってると思ってるんだ!」っていきなり鉄拳が飛んでくるような人でしたからね。でも、それが虐待だったとは大人になってから一度も思いませんね。先生にだって、往復ビンタとかよくされましたけど、自分が悪かったんだから。殴るほうに、気持ちさえあれば必要なときは手を上げることも大切だと思います。

北野監督という偉大な人

Q:いま、映画監督になるための学校などが出来ていますがもちろんダンカン監督はそのような学校は行っていませんよね。絵コンテの書き方とか、監督としての勉強はどのようにされたんでしょう?

それはやっぱり近くに北野監督という偉大な方がいて、その現場を見せていただきながら勉強させていただいたと思っています。そんな同じ空気を吸っている中で、ああ自分だったらこういうふうにするかな、とかそういう気持ちが湧いてきたっていうのはありますね。

Q:北野監督とダンカン監督は、たけし軍団でも師弟関係が出来ていてまわりからは切っても切れない関係だと思います。やはり北野監督の映画と比較されることもあるかと思いますが。

いえ、比較すること自体が北野監督に対して、失礼だと思いますので。そこはやはり、映画監督としても、自分にとっては一生師匠であることは変わらないので。

Q:でも師匠というのは、お父さんの存在のようにいつかは越えたいという目標なのではないのでしょうか?

越えてやろうとか。そんなことは考えたこともないですね。映画監督としてとか、芸人としてというより、人間的な部分で絶対に越えることなんて出来ない方だと思っているので。一生かけても越えられない魅力を持ったとても偉大な人ですから。

ダンカン流子育て

Q:この映画は子供を持つ人、これから親になるような若い世代の人と見る人によって受け止め方が違ってくると思うんですが、実際虐待をしてしまっている親が観たとき、この映画はストッパーになることが出来ると思いますか?

うーん。やっぱり虐待しちゃってる時点で問題だと思うんですよね。だからよくこの映画に共感したとか、そういうことあるじゃない。そうじゃなくて、この映画に関しては共感して欲しくないんですよね。「ああ、分かるな」じゃ問題だから。「こんなのあるわけない」でむしろ片づけてもらいたい。

Q:ダンカン監督の子育てというのは?

そうだな。上の子が小さいときなんかはよく怒鳴ってたりしたけど、一番下の7歳のになると、全然そういう気持ちにならないんですよ。まあ3人育てて余裕も出てきたのかもしれないけど。子供ってどんどん成長することを上の二人で知ったんで。

だからちょっとぐらい、なまいきなことを言っていたりとか、「なんで? なんで?」の質問攻めにされたりとか、そういうことがあっても、この子のこういう時期っていうのはすぐに過ぎ去ってしまうんだなと。すぐに大きくなって、大人になってしまうんだったら、今を大切に接していきたいと思うんですよね。一瞬、一瞬が取り返しのつかない時間だと思って、子供と過ごすようにしています。

『七人の弔』は8月13日(土)テアトル新宿、以降全国順次公開。

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