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『ロバと王女 デジタルニューマスター版』マチュー・ドゥミ単独インタビュー

取材・文:芳井塔子 写真:FLiXムービーサイト

『シェルブールの雨傘』や『ロシュフォールの恋人たち』などで知られるフランス映画界の名匠ジャック・ドゥミ監督が1970年に製作したミュージカル『ロバと王女』。1971年の公開以来、伝説となっていた“幻の傑作”が30年あまりの時を経て日本で公開される。監督の息子であり、同作のデジタル修復を監修したマチュー・ドゥミに話を聞いた。

■この映画には、たくさんのユーモアがある

Q:ミュージカル映画『ロバと王女』をデジタル修復したのはなぜですか?

クラシック作品として残すべきだと思ったからなんだ。そして、より良い形で保存すべき作品だと感じた。だから、オリジナル作品に手を加えるようなことは、まったくしていないんだ。もしこの作品をリメイクしてくれ、という話がきたとしても、僕にはそんな大それたことはできない。この作品は、このままの形で残しておくべきなんだ。

Q:『ロバと王女』とは、どんな映画だと思いますか?

初めて観たのは子どものころだったけれど、歌がすてきだなと思った。大人になってから改めて見たら、子どものころには気づかなかったユーモラスなシーンがたくさん見つかった。

とくに、リラの精が王女に、王様との結婚をしないようにアドバイスするシーン。道徳的な意味ではなく、実は、リラの精が王様のことを好きで、王女に嫉妬していたからなんだ。それって、滑稽(こっけい)だよね。しかも、この妖精は、妙に色っぽい。コケティッシュな魅力がある妖精だなんておもしろいよ。大人だからこそ楽しめる味わいがある作品だと思う。

この映画には、たくさんのユーモアがある。もちろん感動的な部分もあるけど、たくさんの言葉遊びがあるし、シリアスなようでいて、実はふざけているようなシーンもある。でも、そういう遊びの部分は子どもではわからない。だから、大人が観ると、より楽しめる映画なんだ。

■美しい人は、どんな姿でも美しい

Q:ロバの皮を被って変装するカトリーヌ・ドヌーブの姿が不思議なのですが、それもユーモアですか?

それは違うと思う。リラの精が時代錯誤な考えを持っていることを表しているんだと思う。ロバの皮を被るようにアドバイスするなんて、おかしいよ。でも僕は、美しい人がロバの皮を被って変装することが不思議だとは思わない。美しい人は、どんな姿をしていても美しいものさ。映画の中でカトリーヌ・ドヌーブが特に美しいのは、空の色のドレスを着たとき。とてもポエジーでオリジナリティーにあふれたシーンでもあるしね。

■北野武には、ジャック・ドゥミとの類似点を感じる

Q:どんな姿でも彼女は優雅でした。ところで、最近見た映画で、好きな映画は?

最近観た映画は『ミリオンダラー・ベイビー』。僕にとって演技とは何かを学ぶことができた作品だったな。俳優たちが素晴らしかった。強烈な感情を持っているのに、それを内に秘める演技。内面にある感情の激しさをうまく表現していたと思う。

でもね、ダントツに大好きな映画は北野武の『座頭市』! 本当に素晴らしい映画だよ。まずは音楽の使い方。シーンにリズム感を出していく音楽の使い方が素晴らしいと思う。とくにラストシーンが大好きなんだ。タップダンスでミュージカルのようにリズムを刻むなんて、信じられないくらい素晴らしいシーンだね。そういう音楽の使い方に、僕の父、ジャック・ドゥミとの類似点を感じるんだ。時代劇なのに、想像力を使って遠い昔をファンタジックに表現する味わい。そういう部分は父に似ていると思う。

北野武監督には、最大の賛辞をおくりたい。彼は本当に素晴らしいよ。彼ってコメディアンだったらしいけど、そういう姿はフランスではまったく見る機会がないんだ。ぜひ、コメディアンとしての彼の姿を見たいな。そして僕の夢は、彼と一緒に仕事をすることさ。

映画について語り始めるといつまでも楽しそうに語るマチュー・ドゥミ。「Onitsuka Tiger」のジャージを着ていた彼は、映画『キル・ビル』でユマ・サーマンが履いていたスニーカーと同じメーカーだと語りはじめ、クエンティン・タランティーノ監督や中国のツイ・ハーク監督の名前まで挙げるなど、映画ファンの一面を見せてくれた。

『ロバと王女 デジタルニューマスター版』は、今秋、Bunkamura ル・シネマにてロードショー。

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