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『同じ月を見ている』窪塚洋介、エディソン・チャン、黒木メイサ 単独インタビュー

取材・文・写真:FLiXムービーサイト

『バトル・ロワイアル II ~ 鎮魂歌(レクイエム)』の深作健太が描き出す感動作『同じ月を見ている』。出演陣も豪華で、復帰第一弾となる窪塚洋介と香港映画界をリードするスター、エディソン・チャン。そして、17歳で日本の演劇界を制覇した黒木メイサ。原作は、人間の持つあらゆる感情を逃げずに、痛烈に描き続ける土田世紀。空に浮かぶ満月のように、観る者の心を、きれいに洗い流してくれる映画だ。最高の演技を見せた主演の3人が、この映画が導き出す人生観、世間に渦巻くさまざまな感情、そして、自分自身について語ってくれた。

■数ある企画の中からこの作品を選んだわけ

Q:この『同じ月を見ている』を出演作として選んだ決め手はなんですか?

窪塚:エディソンが演じたドンという役に、強烈に惹かれて決めました。

Q:でも、実際は鉄矢を演じられましたね。ドン役に惹かれながらも鉄矢役を選んだのはどうしてでしょうか?

窪塚:ふとした感じで、なんとなく鉄矢をやったらどうなんだろうなって思ったのが最初の理由で、もう直感で、今思えば選ばされてたというか、なるようにしてなったというか、エディソンがドンをやってくれたことでいい作品になったと思っているし、そういう意味でなるべくしてなったんだと思っています。

Q:香港の俳優がドン役を演じるということを聞いたときはどう思われましたか?

窪塚:東映の人も、ギャンブラーだなあって思いました。エディソンとは一度香港のプレミアで会ったことがあるんです。そのとき、「よう」って感じであいさつして、なんか赤いキャップ横にかぶってて、それ、すごい覚えてて、で、彼との仕事が決まったのは、それから2年も経ってるのにすぐ思い出したんですよ。すっごいたくさんの人が来てたのに、1人だけ覚えてたヤツと仕事することが決まって縁を感じました。仲良くなれるだろうなとは思っていたけど、実際、役者としてもリスペクトできる人だったから、ほんとに大きい収穫で今すごくうれしいですね。

Q:エディソンは、この映画のオファーがきた時どんな気持ちでしたか?

エディソン:はじめは、ヨウスケと共演できるって聞いてすごく、すごく興奮したよ。「ワーオ」って感じだった。だから、何も聞かずにひとつ返事で「オッケー」って言ったんだけど、それから脚本をもらって「オーマイガッ」って……(笑)。この役は今までチャレンジしたなかで一番大変な役だった。みんなの助けがなかったらこの仕事は出来なかったと思う。

■エディソン、日本での目撃情報

Q:舞台で活躍されているメイサさんは、初めての映画はどうでしたか?

黒木:舞台ってぶっつけ本番っていいますが、わたしにとっては映画のほうがぶっつけ本番というイメージがあって不安だったんです。でも撮影に入ると、実際は現場の雰囲気もあったかくて。窪塚くんとエディソンが服や音楽の話をしている間に割り込んだりしていました。

Q:撮影中はどんなことをされていたんですか? 3人で遊びに行ったりされましたか? ちなみにエディソンは、いろんなクラブで目撃情報が……。

窪塚:えー! おれがようやく(そんな、うわさが)なくなったのに今度はエディソン?(笑)

エディソン:おれじゃない、おれじゃない。ホントニ! ハ~アブナーイ(日本語で)。でも、撮影はずっと富士山でしていたから、撮影中はみんなでまったり映画を観たりしていたよ。東京にいる時は、なかなか会えないけど、僕たちはすごく理解しあっているから会えなくてもぜんぜん平気なんだよ。メイサとも、撮影後のほうが親密に感じることが出来るようになったよ。

■アートに垣根はない

Q:言葉の壁を越えて仲のいいみなさんを見ていると、ニュースで騒がれているような、国際問題など関係ないように思えてきます。映画界の国境線はなくなっていますよね。

窪塚:そうだね、アートに垣根はない(エディソンとうなずきあう)。ストリートカルチャーでつながっているから。これからはおれらのオリジナルでどんどんこんな風につながってくし、それは誰もどうこうできないもんだと思う。そういう世代のやつらをここから作っていくわけだから、これからは時代の流れも変わってくるだろうし、すごい高いところにアンテナ張ってその流れをリードしてくために、こういうリンク(エディソンとの)が出来てうれしいと思ってる。

Q:いちばん、苦労したシーンはどこでしたか?

エディソン:そうだな。トンネルでヨウスケに殴られるシーン。こみ上げてくる感情があって、それを口に出したいんだけど、それを日本語で表現できない。自分の親友に対する深い悲しみをどんな風に言葉にして出せばいいのか分からなくて。それで、自分なりに感情表現をいろいろな方法で試してみたりしたんだ。でもそういう状況のなか、いろんな人が手を差し伸べてくれたからとてもやりやすかった……。

窪塚:監督もおれも、どんなドンが出来るのか最後まで分かってなかった。たぶん見えてたのはエディソンだけ(笑)。あらゆることが奇跡的なバランスで成りたっている映画だと思いますね。

■富士山がてっぺんまで見えた

Q:この映画はストーリーも映像も、すべてが美しく仕上がっていますが、ご自身が一番印象的に感じたシーンはどこでしたか

黒木:金子が「みんな、地を這いつくばりながら、同じ月を見てんだ」って言うシーンがあるんですけど、その言葉がすごく印象的でずっと頭に残っています。それから、3人のお花畑のシーンは撮影していてもすごく気持ちよくて、映像になってからもすごくきれいでした。撮影した日は、富士山がてっぺんまで見えていたんですよ。

窪塚:そう、たまたまあの日だけ見えたって言ってたよな。そうだな、おれはラストシーンがあって、自分自身が解放出来たっていう気持ちがあったので、ラストにむかってのクライマックスが一番好きですね。

エディソン:一番思い出に残っているのは、僕が台車を引いて、高校生になった鉄矢とすれ違うシーン。あのシーンは、編集によってとても美しくなった。さらに、音楽が入ったことで強く印象に残るシーンになったんだ。ほんとに悲しい場面なんだけどね。

■オヤジが一番からその存在が入れ替わる

Q:ドンという存在は、鉄矢とエミに大きな影響を与え、観る人の人生にもきっと影響を与えると思います。皆さんの人生に、大きな影響を与えたドンのような存在はいますか?

黒木:こういう仕事を始めてから感じたことなんですが、人との出会いってすごく大切だなって思うようになりました。……でも、選ぶのはすごく難しいですね。

窪塚:そうだね。難しい。ガキのころは自分のオヤジが一番だと思っていたんですよ。うちのオヤジが世界で一番運転がうまい!……みたいな。うちの母親も、うちのオヤジの飯はうまいって言ってたし。でも、大人になるとそうじゃないことに気付くじゃないですか。オヤジの存在がどんどんちっちゃくなっていくんですよね。だから最初にオヤジがいた場所に、いろんな人がその場所に入っちゃ消え、入っちゃ消えして……。でも今はなんかそれがなくなってそこに、自分自身が、なりたい、在りたい自分としてそこにいればいいやって。

エディソン:家族も、友だちもとても重要。でも僕の家族はいつも家にいなかった。だから、僕に影響を与えたのは、人物じゃない。ヒップホップという音楽が、僕を僕自身にしてくれたんだ。僕は本当に小さいころから、大人になるまで、たくさんのことが理解できなかった。どうして友達でも嘘をつくのか、どうしてこんなに孤独に感じるのか……。でも、ヒップホップのリリック(歌詞)の中に答えがあったんだ。ヒップホップという文化が僕に一番影響を与えてくれたと思っているよ。

■ポジティブな炎

Q:この世界は、鉄矢が持つようなあらゆる汚い感情がうずまいていて、人は、それを目の当りにしたとき、ドンのようにただ静かに受け入れることは難しいと思います。皆さんはそういう感情を、どういう風に受け止めていますか?

窪塚:そうですね。昔は、すごい腹が立ったりしましたけど。でも、最近は自分の足元で起こっていることのように感じるんです。今はそれを、一歩でまたげるようになったね。

エディソン:人の嫉妬っていうのはどこの国でもあると思う。ぼくは、そういうネガティブな事がらを避けるようにしている。ネガティブな感情は、さらにネガティブな感情を持ってくるから。誰かに感情をぶつけられても、自分の中に同じような感情があるなら、相手を理解することができるだろうけど、実際自分で理解することができない時は、相手の言葉に影響を受けちゃいけないと思う。

窪塚:鉄矢とドンをみても、気持ちが燃え上がっちゃうのはしょうがないじゃないですか。誰かと出会って、燃え上がって……。そういうポジティブな、いい炎っていうのは死ぬまで燃やしつづけていくべきだし、その間はみんながあたたまれる。でも、ネガティブな炎を心に持っていたら、それが鉄矢みたいに大切なモノを焦がしてしまうかもしれない。
 人のためにって思えるドンと、自分のためにって思う鉄矢とが両極端にいて、みんなが2人の間のどっか気持ちのいい所ですごしてると思うんですけど、なんかこの映画にふれてドンにふれて……。絶対ドンに会ったら元気もらえると思うんですよね。だから、劇場に足運んで、パワーを充電してほしいって思います!

ひとつひとつの質問に、大胆なジェスチャーと、独特な語り口で楽しそうに話す窪塚を見て、自分たちの待っていたヒーローがやっと戻ってきたような安心感がわいてきた。また、相手の目をしっかりと見つめて、自分の考えをはっきりと話すエディソンと黒木からは、窪塚のそれと同じ波長が流れていて、スクリーンでの3人の深いつながりがリアルに感じられた。「誰が欠けても、この映画は完成しなかった」窪塚はこう語った。『同じ月を見ている』、満月のように輝く3人の姿を見てもらいたい。

『同じ月を見ている』は11月19日より全国東映系にて公開。

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