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エリック・バナ
『ミュンヘン』
『ミュンヘン』エリック・バナ単独インタビュー

取材・文:鴇田崇 写真:FLIXムービーサイト

スティーヴン・スピルバーグ監督の最新作『ミュンヘン』は、1972年のミュンヘン五輪で実際に起きたパレスチナ人ゲリラによるイスラエル選手団襲撃事件の後日談を描いたシリアスな作品。スピルバーグ監督作品の中でも政治色が強いために監督自身が宣伝活動を控えている中、主演のエリック・バナが緊急来日。事件の報復として犯行メンバーの暗殺を命じられたイスラエル側工作員のリーダーを演じたバナにさまざまな話を聞くことができた。

■スピルバーグからじきじきにオファー

Q:今回の『ミュンヘン』にはどういう経緯で出演することになったのでしょうか?

実は僕が『トロイ』をまだ撮影中のころ、LAで『ターミナル』を撮影中のスピルバーグ監督から連絡があって、ランチを一緒に食べようということになったんだ。それで実際にお会いしてランチを食べながら、ミュンヘンオリンピック事件のその後を描く映画を作るんだということを話してくれたんだ。そのとき、なぜ僕にこの話しているんだろうと思いながら話を聞いていたら、ぜひ君に主役をやってもらいたいという話になったんだよ。スピルバーグ監督と会うだけでも興奮したのに、まさかオファーが来るとは思ってなかったので、とっても興奮したよ。もちろん! と、オファーを引き受けたんだ。

Q:この悲劇的な事件や暗殺チームのアヴナーたちにはどんな感想を持ちましたか?

事件そのものは知っていたんだけど、その後のことはほとんど知らなかったので、初めて聞いた時にはびっくりしたね。同時に非常に興味も持った。その後、自分でもリサーチをしたなかで、いろんな事実が判明していって、これは自分にとっても興味深いし、そして自分にとってチャレンジだとも思ったよ。

Q:実際に撮影に入る前には具体的にどんな役作りやリサーチをしましたか?

まずはその地域についての歴史や政治を勉強したよ。オーストラリアではあまり中近東については学ばなかったからね。そしてキャラクターのアクセントや外見についてはその時代に即したものにしようとかね。あとは役を理解する作業を脚本を読んで勉強したんだ。

■自分が同じ立場だったら断れない

Q:暗殺チームのリーダーを演じるうえで最も心がけたことはなんですか?

キャラクター上、いろんなことをする役なので、観客が理解してくれる、感情移入できる必要があったんだ。観客と彼との接点を持たすことが大事だったんだ。彼の価値観や家族に対する愛情、仕事に対してプロフェッショナルな点だね。そういう点を観客に理解してもらえるように演じることが、一番気を使ったところだよ。

Q:もし主人公のアヴナーと同じような状況に陥ったらその時はどうしますか?

もし僕がアヴナーの立場にあったら、たぶん断れないと思う。自分の国の選手がああいう形でテロを受けて、殺されていったわけだからね。そしてモサドのエージェントとしてもプロなんだからね。

Q:その辺りも含めて今回の『ミュンヘン』では全体をとおしてどこに最も惹かれましたか?

この映画は観客に対して挑戦的な映画だと思うんだ。それからスリラーとして非常に優秀な作品だと思うしね。いろんな質問を投げかけていると思うんだ。要するにそれらに対して僕ら自身ががどう考えているかとか反応するかっていうことを自分で分析するように促している映画だと思うね。

■スピルバーグは人間的にも素晴らしい

Q:ところで、スピルバーグとの仕事は実際に体験してみてどんな感想を持ちましたか?

最高の体験だったよ。ちろん優秀な映画監督だっていうことは前々から分かっていたことなんだけど、人間的にも素晴らしかったよ。時間やエネルギーを惜しまず、みんなの意見を聞いてくれるし、取り入れてもくれる。それから非常にインスピレーションもある人だ。リーダーとしてもとても優れているし、本当に天才だよ。その天才の仕事を近くで見られたことが、とにかくスリリングだったね。

Q:監督のスピルバーグからは演じるうえでどんなリクエストがありましたか?

今回の撮影中で最も重要だったのは、アヴナーがどんどん変化を遂げていくので、あるシーンのときにはどれほど彼が変化しているか、もしくは変化していないのか、その状態を確認しあうということがとっても大事だったんだ。つまり、彼は殺しを重ねていくにつれてどんどん冷徹になっていくので、例えば、朝撮るシーンが映画の後半部分だとするとかなりパラノイアに近い状況で撮影に臨まなければならないし、反対に午後になったらまだナイーブで自信にあふれているころのシーンを撮ったりすることもあったからね。映画の順番どおりに撮影するわけではないから、その辺を確認しあうことが今回は重要だったんだよ。

Q:そんなアヴナーは苦悩する役ですが、『ハルク』や『トロイ』などバナさん自身も苦悩する役が続いています。これには何か理由があるのでしょうか?

自分にとって挑戦できる役、言いかえれば難しい役が好きなんだ。苦悩をするってことは、いろんなドラマチックな出来事が周りで起こっているということだからね。そういうことに反応して自分が変わっていく、そんな人物を演じるのは、俳優として最もやりがいがあるんだ。今回の場合はドラマチックな出来事があって、その影響を受けて人格が変わっていくわけだし、非常にやりがいのある、演じがいのある役だったよ。

■撮影現場はまるで国連のよう

Q:映画はシリアスでしたが、撮影現場で面白かった裏話などありましたか?

現場はシリアスな題材を扱っているのでだいたいはシリアスな状態だったけど、スピルバーグ監督はユーモアのセンスがあって、スタッフもかなり楽しませてくれたよ。そういう明るさが少しはないと、深刻な映画を撮る場合、やり切れないというのはあるよね。

Q:国籍の異なる人々が大勢いましたが、撮影現場の雰囲気はどうでしたか?

それぞれが違う国からの出身者だからね。アクセントも違えば言葉も違うので、そういった意味では反対に連帯感が生まれたよ。みんな家や国から離れている立場だから、まるで国連に出席しているみたいだったよ。お互いにすごく興味を持っていたというのもあって、現場では敬意を払っていたんだ。ハリウッド映画では珍しい、国際的ないい雰囲気が流れていたね。

Q:最後にこれから映画をご覧になる方々へメッセージをお願いします。

『ミュンヘン』はチャレンジングな映画であると同時に、とっても娯楽性の高い映画なのでぜひご覧になってください。

クランクアップから間もないせいか質問のひとつひとつを吟味(ぎんみ)したうえで丁寧に答えるバナの姿は、主人公アヴナーと重なり合うほど真剣そのもので取材現場の空気を圧倒する迫力に満ちていた。そんな真面目な姿勢が、スピルバーグ監督の心をとらえたのかもしれない。今回の『ミュンヘン』のプロモーションが終れば、家族の待つオーストラリアへ戻るという。映画の主人公アブナー同様、最後は良き家庭人の素顔をのぞかせた。

『ミュンヘン』は2月4日より丸の内プラゼールほか松竹・東急係にて全国公開。

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