シネマトゥデイ

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市原隼人&蒼井優
『虹の女神 Rainbow Song』
誰かを失ったときの悲しさは
自分も経験があるので理解できる
『虹の女神』市原隼人&蒼井優 単独インタビュー

取材・文・写真:シネマトゥデイ

人気作家の桜井亜美と、日本映画界の俊英・岩井俊二が共同で脚本を執筆したほろ苦い恋の物語『虹の女神』。岩井俊二が監督した『リリイ・シュシュのすべて』で鮮烈なスクリーンデビューを果たした市原隼人が、恋と友情の間でゆれる青年を演じる。市原の相手役であるヒロイン、上野樹里の盲目の妹を演じるのは『フラガール』での熱演も好評の蒼井優。『虹の女神』以外でも何度か共演している息の合った二人に、釜山国際映画祭が開催された韓国、釜山で話を聞いた。

■5年前とは確かに変わった

Q:市原さんとの共演は久しぶりですよね。彼は変わっていましたか?

蒼井:そうですね。『偶然にも最悪な少年』以来です。以前とはだいぶ変わっていました。お芝居のことをすごく真剣に考えていて、それを口に出して言うようになっていました。多分昔も考えてはいたのでしょうが、それが恥ずかしかったのかな? あえて口に出したりすることはありませんでしたから。

Q:蒼井さんは、市原さんを結構冷静に見ているんですね。

蒼井:もう、長い付き合いなので。『リリイ・シュシュのすべて』からですから、もう5年になるのかな? そのときはまだ、中学生でした……。当時は二人で芝居って何なんだろうね。みんなは、お芝居おもしろいって言っているけど、何がそこまで面白いんだろうねってお互い話していました。この映画の撮影で久しぶりに市原さんに会って、彼が自分自身をすごく冷静に見るようになっていたのでびっくりしました。

Q:蒼井さんも変わりましたか?

蒼井:どうなんでしょうね。どう考えてもお芝居を始めたころは何も考えていなかったんです。まだ見ていない世界がたくさんあって……この5年でいろいろと見ることができたので、成長しているのかは分からないのですが大きく変わっていると思います。

■本当に寝ちゃいます!

Q:市原さんの演技はとてもリアルな印象を受けました。

市原:芝居は好きですけど、“芝居っぽく”はしたくないんです。自分がドラマを観ていても「あ、芝居しているな」と思うとさめちゃうんですよ。だから、カメラがあっても常にリアルに動いていたいと思っています。疲れているシーンだったら本当に疲れているとか、寝ているシーンだったらほんとに寝ているとか(笑)。

Q:え? 寝ちゃうんですか?

市原:はい(笑)。リアルは常に心掛けています。演技をしているといつも入り込んでしまうんですが、そこが面白いところです。役に入り込んで集中すると、そこだけの世界が展開するので、雨に打たれても寒くないようになってしまいます。

Q:市原さんが演じた智也はどんなキャラクターですか?

市原:そうですね。バカで能天気。でも、すべてのことに一生懸命なんです。なのに周りから見たらちょっとズレてるよ……みたいな。自分の性格とも似ているところがあると思います。

■生まれて初めて見た虹は?

Q:蒼井さんは『虹の女神』では目の見えない役を演じましたが、演技をする上で気を付けたことはありましたか?

蒼井:自分なりに見えていない状態を研究してみました。すごく集中して、見えていないのに頭の中で見えているみたいな……。視覚じゃなくて、そのほかの感覚を使って物事を見ているみたいな感じです。でも自分がその気になっていても、意外に後でモニターに映っている姿を見ると違っていたり……。

Q:映画のタイトルは『虹の女神』ですが、生まれて初めて虹を見たときのことを覚えていますか?

蒼井:小さいころです。家の庭で、ビニールプールで遊んでいて。お父さんがホースでそこに水を入れていたのですが、そのときホースの先を指で押さえていたので、虹ができて……。小さい虹ですけど。すごく小さいときのことです(笑)。

市原:僕は高速道路を車で走っていて、父ちゃんとか母ちゃんとかに、「虹出てるよ!」と言われて見ました。そのことは今でも覚えています。感動しましたね。

■キツいバイトは経験済み

Q:(劇中の)映像製作会社のバイトとか、あんな風にこき使われるのはいやですよね。そんなバイトはしたことないですよね。

市原:いや、ありますよ。昔、引っ越しのバイトとかしたことがあるんです。そのとき(智也みたいに)「ちゃんと持てよ!」とか怒られたことがあります(笑)。

Q:そんな体験は演技をするときの参考になったりしますか。

市原:そうですね。僕はこれからもごく普通の人間でいたいです。俳優だからこそ、いまの自分の世代や、いまの自分と同じ年ごろの人たちと同じ感覚でいたいと思っています。僕がよく遊んでいる自分の友達たちとおなじ感覚で。

Q:その友達は芸能人ですか?

市原:いえ、地元の友達で、小学校、中学校と一緒でいろいろな職業の人がいますよ。いま同じ歳の人たちの間で何が楽しいのかとか、何がはやっているのかとか、彼らと話しているとよく分かります。大事にしたいですね。

Q:友達から、きれいな女優さんと共演してうらやましがられませんか?

市原:言われます(笑)。「チューさせてよ!」とか。無理だって(笑)!

■フラダンスとバレエ

Q:蒼井さん『フラガール』のことも少し聞かせください。フラダンスの手の振りは手話の表現と同じと聞きましたがご存知でしたか?

蒼井:そうなんだろうとは思っていました。バレエでも普通に踊るときと、パントマイムのときがあって、パントマイムのときの動きはフラダンスとなんとなく重なるんです。それは感じていたので、驚いたというよりは、やっぱりそうだったんだという感じでした。

Q:蒼井さんは語らなくても、体だけの表現力で十分存在感がありますよね。それはバレエをやっていたということもあるのでしょうか。

蒼井:バレエを初めて習い始めたのは2歳のときからなので覚えていないのですが、母が撮ったおけいこ風景とかを見ると、なんかお遊戯みたいに見えるんですけど(笑)。『花とアリス』のときにまた、始めたという感じです。

Q:『虹の女神』の撮影はフラガールと重なってはいなかったのですか? 気持ちの切り替えはできますか?

蒼井:『フラガール』が終わってちょっとだけ間がありました。『フラガール』『虹の女神』「Dr.コトー」と撮影しました。一本やった後は本当にクタクタで、次の作品のことは考えにくいですね。体力というか精神力を出し切ったという感じで。『フラガール』が終わった後、今年は何もしないでおこうと思ったくらいです。でもデビュー作のときから、かかわっているプロデューサーさんからこの仕事のお話をいただいて、とてもやりたいと思いました。熊澤監督や市原さん、岩井さんなどと一緒にお仕事をしたいとも思っていましたので。

■誰かを失ってしまったときの悲しさ

Q:ラストシーンは切ないですね。

市原:そうですね。すごくよく智也の気持ちは理解できました。誰かを失ってしまったときの悲しさとか……自分も友達を亡くしたことがあるので感情がすごく入りました。失ってしまったものはどうあがいても帰ってこないですから。この映画は、人によっていろいろな感じ方ができると思うんですよ。泣けるところも人によって違いますし。本当は愛情に気がついていて知らないふりをしていたとか、そんな解釈もあると思う。そんな微妙なところがすごく面白いと思いました。

Q:蒼井さんは、今後どういう女優さんになりたいですか?

蒼井:あんまり先のことが見えていないんです。以前は80歳とか90歳になってもいい味を出す女優さんでいたいと思っていたことはありますが、最近は自分が今やっている仕事と次の仕事のことぐらいしか考えられないですね。あと、「女優なんだ」っていう意識はあんまりないですね。役になっているだけで女優をやっているという感覚ではないんです。あまり自分を俯瞰(ふかん)で見ていないというか、見ないようにしています。だから1作品、1作品燃え尽きてしまうのかもしれません。

市原と蒼井の雰囲気はどことなく似ている。まるで、妖精のように神秘的で水彩画で描いたような透明感あるたたずまい。それは努力で得られるものではなく天性のものなのだろう。ただそこに存在しているだけで、すでに何かを表現できている。そんな二人に共通していたのが「演技をしているという自覚がない」ということ。だからこそスクリーンに映る姿が自然で、観る者の心にすうっといつの間にかとけこんでいくのだろう。

『虹の女神』は10月28日より全国東宝系にて公開。

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