シネマトゥデイ

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山田孝之
『手紙』
こういう現実があるということを知って欲しい
『手紙』山田孝之 インタビュー

取材:須之内達也 文:シネマトゥデイ 写真:秋山泰彦

『電車男』とは打って変わって、シリアスな役に挑戦した山田孝之。殺人を犯した獄中の兄から送られてくる“手紙”を通して、兄弟のきずなや世間とのかかわり合いを描く『手紙』で“加害者の弟”という難しい役を演じた。原作はロングセラーとなっている東野圭吾の同名小説。その難役に挑戦した山田に、撮影現場での様子や作品について語ってもらった。

■難しい役どころ

Q:最初に台本を読んだときの感想を聞かせてください。

最初に台本を読んだとき、すごくリアルな物語だと思いました。これほど痛いぐらいの現実を素直にぶつけられた作品は、そんなにないですから……。でも、この作品をやるとなったら、厳しい現実を目で見て、肌で感じることを自分からしていかなきゃストーリーにも入り込めないし、役にも入っていけないので、最初は不安を感じました。

Q:劇中では時間の経過や、感情の起伏が大きいですが、演じる面で難しかったことはありましたか?

そうですね。僕の演じた直貴は加害者ではないのですが、彼が世間から拒否されている部分がありながらも、自分から拒否している部分もあるし、どんどん1人になっていっているのに、お笑い芸人を目指して人前に出て、人を笑わせることをするっていう……すごく極端ですよね。こういう状況に置かれている人が、一番しなそうなことをしているっていうところが難しかったですね。

Q:山田さんの演技のさじ加減によって印象が変わる役だったと思うのですが、そこはどうでしたか?

そこは、悩みましたね。どっちかに寄り過ぎてもいけないし、かと言って、量りにかけたように均等にしたらどっちも曖昧(あいまい)に見えてしまうし。お笑い芸人をやって、人を笑わせているけど、何か陰の部分を感じていたほうがいいのかなとか。でも、僕はどんなときでもこの人の背負っているものが、しゃべり方や動きや表情で常に見えるように演じました。

■テレビドラマとはまったく違う現場

Q:撮影中、監督は山田さんの持っている雰囲気を出したいから、あえて何も指示しなかったとおっしゃっていましたが、不安ではなかったですか?

そうですね(笑)。監督って、作品を通して全部観ているし、すべての人の視点で観て、客観的に言ってくれる存在なので、何も言われないのはやっぱり怖いですね。

Q:映画の撮影は、スタンバイや待ちが長くて、テンションを保つのが大変だったのでは?

スタンバイや待ちの間は、じーっとしていたり、1人で自転車に乗ってスタジオをぐるぐる回ったりとかしていました。ドラマは、どんどん撮影が進むので、気持ちをずっとつなげていくほうが良いんですけど、映画は1回1回スタンバイに時間がかかるので、そのつど、自分で気持ちのスイッチの切り替えをしないといけなかったんです。すごく感情的になるシーンでも、終わったら無理矢理でもその感情を冷まさないと、次のシーンを撮影するときに気持ちが上がりきれなかったです。

■厳しい現実が垣間見える物語

Q:加害者本人ではなく、その家族が世間から拒否される現実って何だろうと思いますよね。

でも、こういう状況に置かれた人たちの中には、『手紙』の中のようなことが、実際にあるんだろうと思います。それは悲しいことですよね。ただ、被害者側の気持ちで観る方もいると思うので、どれだけこの兄弟がつらい思いをしていても、遺族のほうがよりつらいだろうと思う人がいるのも当然だと思います。

Q:そういう厳しい現実を突きつけられる物語の中で、逆に人と人とのつながりやきずなを考えさせられる作品でもあると思うのですが、いかがですか?

そうですね。でも、直貴の良き理解者である由美子の存在をひっくるめても、僕は直貴に対して何も救いが見えなかったですね。

■共演者の素顔

Q:由美子役を演じた沢尻エリカさんとの共演はいかがでしたか?

『手紙』の作品性もあって、現場の雰囲気が重く、あまり話す機会がなかったんです。でも、直貴と由美子の支え合っている関係やその雰囲気が本番でパッと出たら面白いと思っていました。

Q:『手紙』で共演したときと、ドラマ「タイヨウのうた」で共演したときとは変わりましたか?

そうですね。全然違う感じでしたね。ドラマは物語も明るい部分があったし、現場の雰囲気も明るいですしね。

Q:兄役の玉山鉄二さんとは、この作品でかなり仲良くなられたそうですが、どんな方なんですか?

どんな方!? んー、作品がシリアスだったので……最初に会ったときは、すごくまじめで堅い人かなと思いましたけど、話をしたら、普通に優しいお兄さんって感じでしたね。

Q:坊主頭も似合っていましたよね。

そうですね。かっこいいですから、何やってもかっこいいですよね(笑)。

■メールとは違う“手紙”の特別感

Q:この作品のタイトルにもなっている“手紙”ですが、“手紙”と聞いてイメージすることって何ですか?

特別な距離感を感じますね。実際会って話すわけでもないし、声が聞こえるわけでもないけど、文字が書いてあるだけで、メールとは違う、もっと大事な感じがします。メールで打っても良いことを、わざわざ手紙に書いて送ったら、もっと伝わるというか、そういう印象はあります。手書きの文字だと、相手が自分で書いているということと、相手の特徴が文字に出るし、文章にも表れますよね。そこが特別に感じますね。

Q:今の生活で手紙を書くことは、なかなかないと思うのですが、どうですか?

僕もないですね。メールとか電話ですね。メールは面倒くさいこともあるけど、すごく特殊ですよね? 感情がまったく読めない感じが、僕は嫌いじゃないです。言いづらいこととか……メールでしか言えないこともありますよね。

Q:『手紙』をこれからご覧になる方へのメッセージをお願いします。

人それぞれ、色んな感情があって、友だち同士で観に行っても、みんな違う印象だったり、同じように思ったりするところもあると思いますが、「どう思うか」というところよりも、こういう現実があるんだということを知って欲しいです。

質問に対して慎重に言葉を選んで答える山田孝之は、23歳になったばかりとは思えないほど落ち着いていて、彼のまじめさと誠実さが感じられた。お笑い好きで、劇中ではお笑い芸人としてコントも披露しているが、その素顔はとても照れ屋でシャイ。本作で、どんな役にでもなる、“幅のある役者”を見せつけてくれた彼の今後の活躍に目が離せない。

『手紙』は11月3日よりサロンパス ルーブル丸の内ほかにて公開。

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