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第10回こはたあつこ「剣とよろいのかじ屋さんに潜入の巻」

うわさの現場潜入ルポ

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こはたあつこのうわさの現場潜入ルポ
剣とよろいのかじ屋さんに潜入の巻

「取材・文・写真:こはたあつこ」
「うわー、中世のお城みたい……」
 
ここはロス郊外のバーバンク。一見普通に見えるお店に入ると、ドアを開けたとたん、思わずそう口走ってしまう。店内には、中世のよろいやかぶとがところ狭しとディスプレイされ、壁はお城のように、石づくり。やりや刀もいろいろ展示されている。
 
そう、ここ「Sword and Stone」は、映画で使われる剣や刀、そしてよろいなどの金属系のものを、手作りしているかじ屋さん。
 
今回は、このかじ屋さんに潜入。さあ、中世の世界へタイムトリップしました!
大ヒットした“あの映画”の剣はここで作られていた!
このかじ屋のオーナーはトニー・スワットンさん。彼が今まで手がけた作品は、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズの中でジョニー・デップたちが使用した剣、『ラスト サムライ』の日本刀、『ブレイド3』で主演のウェズリー・スナイプスが使った大型の剣、『マスク・オブ・ゾロ』でアントニオ・バンデラスがふんしたゾロの剣、『バットマン リターンズ』で登場したバットマンのメタルスーツなど。
 
コマーシャルやビデオも手がけていて、日本向けにはナムコのビデオゲーム用の剣、任天堂のゼルダというキャラクターが使った剣と矛。また、ホンダやトヨタなどのコマーシャルでは王様の冠などを作ったそうだ。
 
「とんてんかーん、とんてんかーん!」。
 
お店のように見えるこの店内は、実はディスプレイ・ルームで、裏の敷地内に実際に作業をする工房がある。
 
中をのぞいてみると、まるで中小企業の工場のような雰囲気。
“ザッツ・男の職場”でとんてんかーん!
トニーさんは、『パイレーツ・オブ・カリビアン』でジョニー・デップが使った剣を作ってくれた。
 
まずは細長い鉄の先端を石の釜に入れ、真っ赤になるまで熱する。それを取り出すと、即座に鉄の先端が平べったくなるまで、とんてんかーん、と叩く。鉄が冷えてきて、赤くなくなると、それ以上叩いても形が変わらないので、また釜で熱する。そして、再び、とんてんかーん!
 
「鉄は熱いうちに打て」という、ことわざがあるが、まさしくその通りだ。
 
そのほかにも、鉄を磨く機械で、火花をちらしながら剣の刃を磨く。
 
そんなときにもBGMで流れているのは、ヘビメタ系の音楽。オーナーのトニーさんと、彼をしたって弟子入りしたアシスタントのマイケルさんは、いかにも男の仕事場という雰囲気の中で力強く働く。この工房はとてもハイヒールで来られるところではない。
 
トニーさんに「一番大変なことは?」と聞くと、仕事がどっと重なるときだそうだ。ある夏、同時に3本のメジャーな映画から依頼があったそう。『マスター・アンド・コマンダー』では約100本ほどの剣などの武器、『パイレーツ・オブ・カリビアン』では約200本の剣、『ラスト サムライ』では600本の刀や忍者の武器。これをたった3か月ですべて手作りしなければならなかったそうだ。
 
そのときは4人の助っ人を頼み、毎日、35本の刀を作ったそうだ。
 
『ラスト サムライ』のときは、当時の日本刀の資料や実際の刀を参考にしたそう。でも、トニーさんもかなりの刀オタクなので、クライアントから「どんなものにしたらいいか」と意見を求められることも多いという。彼のオフィスの大きな本棚には、刀や武器やよろいの専門書がたくさん並ぶ。彼はその道の専門家なのだ。
クレジットはされなくてもその功績は偉大だ!
「トニーさんが関わった映画を観るのはどんな感じですか?」と聞いてみると、やはり、自分の作ったものがどう使われ、どこに映っているかが気になるそう。
 
『パイレーツ・オブ・カリビアン』のときは、映画を普通に楽しんでいたそうだが、いきなり、トニーさんの作った刀が大スクリーンに40フィートもの大写しで登場。面食らったのと同時に感動したそうだ。
 
また、『X-MEN:ファイナル ディシジョン』のジャガーノートというキャラクターのためにメタルの肩あてと腕あてを作ったそうだが、映画の中で、そのキャラクターが実際にそれを着用し、フルコスチュームで登場したとき、「こんなにクールに使われているんだ!」と感動。
 
でも、「これだけ作っても、映画のクレジットに自分の名前を載せてもらえないのが残念」とトニーさん。
 
なるほど、『ブレイド3』の剣も、『フック』のかぎの手も、『マスク・オブ・ゾロ』の剣も、皆映画や宣伝用ポスターの一番重要な部分で使われている。それなのに、トニーさんの名前は映画のエンドクレジットには、一切出てこない。やっぱりみんなで関わった映画なだけに、自分の仕事だけクレジットに表記されないのは、寂しいだろう。
 
でも、子どものときから好きだったことをずっと続けられて、しかも今ではメジャーな映画からのオファーが耐えない。これは、やはりうれしいことだ、とも語る。
 
そんなトニーさんの作品が展示される「Sword and Stone」は、毎週土曜日に一般公開される。家族連れで来る人も多いそうで、そんな一般客のために、「ナイフや包丁を研ぐサービス」もやっているという。一日で50本ぐらいは研ぐそうだから、さびた包丁を持っている人は、見学がてら、ぜひ一度立ち寄ってみてはいかが?
お城のようなディスプレイ・ルーム。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』のディスプレイ。でも、ジョニー・デップとキーラ・ナイトレイが使った実際の刀はガラス・ケースの中に展示されてある。
日本のよろいやかぶと。これは、ここで作ったわけではないが、展示用に置いてある。
ナムコのビデオゲーム用に作られた“ソウル・カリバー”と言う名の剣。真ん中に目玉がついていて、とても凝っている。
店内に展示される映画のポスター。もちろんすべてトニーさんが参加した作品ばかり。左から、『ブレイド』『マスク・オブ・ゾロ』と『フック』。『フック』のダスティン・ホフマンのかぎの手もトニーさんの作品。
店内に展示される『マスク・オブ・ゾロ』のポスター。ゾロが持っている剣もトニーさんの作品。
中小企業の工場のような工房。向かって右にいる男性はトニーさんを慕って、弟子になったアシスタントのマイケルさん。
刀を磨くトニーさん。近くにいると火花が飛んでくる。
磨く前の剣の刃。
磨いたあとの剣の刃。
ぼんぼん燃える釜。
釜から出した鉄を真っ赤なうちに叩く。これは、刀のとっての部分のパーツ。これを平べったく伸ばしたのち、くるんとスプーンのような形にまげる。
これが出来上がった形の剣。スプーンのようにくるんと曲がったとっての部分が先程とんてんかーんと打っていた部分。この刀は『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズで使われたモデルと同じもの。ジョニー・デップが同じものを使ったのよ!
鉄の手をはめるわたし。イーヒッヒッヒ!
子ども用のよろい。映画会社のおえらいさんに依頼されて、作ったそうな。その人のお孫さん用かしら?
『バットマン&ロビン』で使用されたメタルのパーツ。
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