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『シッコ』マイケル・ムーア

今週のクローズアップ

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今週のクローズアップ シッコ

週末に公開される話題の映画の中から、今週は、8月25日公開の『シッコ』をクローズアップします。監督は『ボウリング・フォー・コロンバイン』『華氏911』など、アポなし取材で社会の問題点に鋭く切り込んだドキュメンタリー作品を生み出した、“ほえる男”ことマイケル・ムーア。最新作のテーマは“医療問題”。先進国アメリカの医療に関する現状に、鋭くメスを入れました。本作で語られる医療問題に関する注意事項を、映画の内容に沿ってお知らせします!

注)保険に入っていても危険!

 アメリカ国民の6人に1人は保険に入っておらず、満足な治療を受けられない人たちが大勢います。なぜなら、アメリカには国が経営する“国民健康保険”が存在しないからです。先進国でこの制度がないのはアメリカのみ。よって、国民は民間が経営する保険に加入するしかないのです。


 ここで怖いのは、保険に入っていれば大丈夫ということではありません。民間が営利目的で経営しているので、もうからないと話になりません。商売なら当然のことなのですが、そのために保険会社が取る手段とは、“いかに保険料を払わないようにするか”ということです。そうなると、もう大変。いざ加入者が保険を要求すると、「証明が足りない」「既往症の申告漏れがあり認められません」などなど、ありとあらゆる言い訳を並び立てて保険が適用されないように画策します。


 ムーア監督が取材したある夫婦は、保険が適用されず、そのせいで治療費がかさんだ末に、破産してしまいました。病気だわ、破産するわ、途方に暮れる夫婦の姿が痛々しいです。一体何のための保険なんだ! と怒り心頭です。


 
ひどい世の中だよね。
注)住むならフランスがおすすめ!

 ではほかの国の医療事情は? と疑問が浮かび、フランスに飛んだムーア監督。そこは何と天国のような国でした。病気になったら医療費はタダ。真夜中だって、電話1本で訪問医が駆けつけてくれます。治療のためなら3か月でも半年でも有給がもらえるし、子どもを産めば頼んでいなくても国から乳母が派遣されて、洗濯やらオムツ替えやらを手伝ってくれます。頼めば夕飯の支度もしてくれて、人参のピューレまで作ってくれます(笑)。もちろんタダ。国民は税金漬けの日々ですが、行き届いたケアの下、悠悠自適に人生を謳歌(おうか)しています。家族や恋人との時間を大切にできるので、住むなら絶対フランスがおすすめです!


 さらに、キューバも素晴らしい国です。アメリカはカストロ率いるキューバを、まるで悪魔の国のように敵視していますが、実際に現地を訪れたムーア監督はビックリです。キューバの人々は陽気で気さく。医療だってちゃんと設備されています。そして驚くべきことに、アメリカで120ドルもする薬が、たった5セントで手に入る始末。これには監督と一緒に現地を訪れた病人の皆さんも泣くしかありません。ばかにするな! と言いたくなる気持ちも分かります。


 
フランスはええで……。
注)ヒーローがないがしろにされています!

 同時多発テロで人命救助をした人々のことを、アメリカ人はヒーローと呼びます。当時、消防隊員、ボランティアスタッフ、みんなが必死になってがれきの撤去や生存者の救出などにあたりました。しかし、ヒーローたちの中にはがれきの粉じんで気管支を痛めてしまった人や、悲惨な現場の光景が忘れられず、PTSD(心的外傷後ストレス障害)で悩む人がいます。でも、そんなヒーローたちに、国は十分な医療措置をしていないことを知ったムーア監督が立ち上がりました。


さらに、ムーア監督の逆鱗(げきりん)に触れる事実が発覚。それは、テロの首謀者たちが、刑務所内で手厚い医療を施されているとこと。彼らは定期的に健康診断を受け、病気になれば治療を施してもらえます。もちろん、タダで。ムーア監督は収容所近くまで乗り込み、拡声器片手に「ヒーローたちにもテロリストたちと同等の医療を受けさせてくれ!」と優しく丁寧に主張します(※監督は決して怒鳴りません)。こんな理不尽なことがこの世にあっていいのでしょうか? ムーア監督が暴かなければ到底知り得なかった事実です。


ハロー、聞こえてる?

注)あれ? ムーア監督っていい人なんですね?

 “ほえる男”の異名を持つムーア監督。今までの作品『ボウリング・フォー・コロンバイン』『華氏911』で主張してきた内容や、アポなしの突撃取材を敢行する製作スタイルから、かなり過激で偏った人柄を想像してしまいがちです。がしかし、本作を観る限り、ムーア監督はとってもいい人なんです。


 弱者の味方という立ち位置で取材を進めるムーア監督。病気なのに保険が適用されずに困っている人たちを放っておけず、世の不条理に立ち向かうムーア監督は正義の味方です。取材対象者の話を「うん、うん」とうなずきながら静かに聞く姿には、親身になって話を聞こうという心意気が感じられるだけでなく、優しさがにじみ出ていました。 監督のことを“ほえる男”と人は言いますが、彼は怒り狂って大声を上げることはありません。ただ1度、拡声器を使いはしましたが、そのときだって「ハロー、聞こえていますか?」ととても紳士的でした。本作を観れば、「ムーア監督っていい人だったんだ」と気付かされること間違いなし! そして、アメリカの医療問題の実態を知ることで、日本の医療についても感心や疑問が浮かぶことでしょう。一見の価値ありです!


Stephen Lovekin/WireImage.com
メガネを外すとさらに優しそうです。
文・構成:シネマトゥデイ編集部

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