ADVERTISEMENT

『椿三十郎』織田裕二 単独インタビュー

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア
『椿三十郎』織田裕二 単独インタビュー

椿はまだ成長過程で完ぺきじゃない……

そんな椿が僕は好きです

取材・文:福住佐知子 写真:田中紀子

1962年に公開された、巨匠黒澤明監督の痛快時代劇の映画『椿三十郎』が、45年ぶりに森田芳光監督のメガホンでリメークされた。上級役人の不正を暴くために立ち上がった9人の若侍たちの純粋さに心打たれ、助太刀を買って出た、素浪人“椿三十郎”を演じた、織田裕二に撮影秘話を聞いた。

ADVERTISEMENT

現代版の椿三十郎は4番でなく1番バッター

織田裕二

Q:森田監督たっての希望で出演を決めたとうかがっていますが、依頼が来たときの感想を聞かせてください。

うれしかったです。人に認められたり、求められたりするって、とてもうれしいことです。特に「お前じゃなきゃ」って言われるのは、一番うれしいですよね。「お前にできんの?」って、ずいぶん周りに言われましたけどね(笑)。

Q:椿三十郎はカリスマ性を持った時代劇のヒーローですが、どんな部分を重点的に役作りされたのでしょうか?

最初に考えていたのは、もっと豪傑で、4番バッター的なものだったんです。でも、「1番バッターのようなキャラを作ってほしい。現代の椿にしてほしい」と言われたんです。例えば、前作ではシラミがいて、ボリボリ体をかくシーンなんかがあるんですが、森田監督に「今どきの若い子は分からないでしょう」と言われたんです。イメージ的には着物ももっとボロボロで、野武士風で油切った感じを考えていたんですが、「あまり不潔にしたくない」と言われ、汚しもかなり抑えました。こだわったのはヒゲですね。監督は「なくてもいい」と言っていたんですが、僕は生やしてみたかったので、なくてもいいなら、あってもいいですかと……(笑)。

Q:椿三十郎は若侍たちを相手に、見事なリーダーシップを見せますが、人を引っ張って行くのに大切なことって、何だと思われますか?

人を引っ張ろうという意識は、なくてもいいんじゃないかと思います。僕が今まで生きてきて感じるのは、やる気があるやつは、勝手に盗んでいく。やる気がないやつは、いくら引っ張ったってついてこない。それが結論で、やる気のあるやつにしか教えようがない、やる気のないやつには教える意味がない。

殺陣(たて)で椿三十郎の切なさを表現

織田裕二

Q:殺陣(たて)の訓練を2か月間されたそうですが、立ち回りの場面で、危険なことやけがなどはなかったのでしょうか?

最初のシーンで立ち回りをやっているときに相手の刀がまともに入っちゃって、痛い思いをしました。その後どうなったのかは、夢中になっていたので忘れてしまいましたが……。周りのいろんな物が壊れたのは覚えています。1日2、3時間くらい練習していました。

Q:スタントなしで挑戦された理由は?

CGだとか、ワイヤーアクションを入れたいと監督が言っていたら、僕はスタントを出していたと思うんです。でも、アクションシーンをすべて自分でやったというのは、そこに、カッコイイヒーロー的な“チャンチャンチャン、切りました。はい、さようなら”というのは求めていなかったからなんです。椿って、本質的に人を切りたくない人なんです。切りたくない男の殺陣(たて)って、どういうもんなんだろう? と疑問を持ちました。人を切ることのリアルさが出れば出るほど、最後の切なさが出るんじゃないかと思いました。はたから見ているとカッコイイと思うかもしれないけれど、本人はちっとも思ってない。むしろこういう風にはなるなよ、と思っている。そこで椿っていう男の人生が、いかに自分じゃほめられたものじゃないっていうことが分かると思います。

Q:「あなたはギラギラしすぎて“抜き身”のようだ、ほんとにいい刀はサヤに入っているもんですよ」と椿が言われる言葉が印象に残りました。

三十郎もその通りだと分かっていると思いますよ。ただ、できないんですよ、そういう人生じゃないので……。

見事にマッチした最高の共演者たちについて

織田裕二

Q:ラストの室戸半兵衛との対決は大きな見せ場でしたが、豊川悦司さんと共演した感想を聞かせてください。

共演は初めてだったんですが、半兵衛役が豊川さんでほんとに良かったと思っています。豊川さんしか出せない半兵衛の味、椿の対比として、全然違う感じがよく出ていると思います。月と太陽、明と暗のようにキャラクターがはっきりと違う。それでいてお互いに認め合っている……。前作の場合は三船敏郎さんがスターで、仲代達矢さんがまだ新人だったので、どう見ても対等には映っていないんですよ。でも、僕と豊川さんは同じ様に時代を過ごしてきて、同じ様に頑張ってきたわけですから、今回、室戸と椿がお互いに尊重し合っている関係性というのが、自然と出ていると思います。

Q:たおやかな女性が登場していますが、彼女たちはこの男たちのドラマにどのような付加価値を与えていると思われますか?

いやもう~、いなかったら、大事な笑いがなくなります(笑)。唯一椿に説教するのは、中村玉緒さん演じる睦田夫人だけなんですよね。2人のやり取りを見ると、椿はまだ成長過程で完ぺきじゃないというのが分かる……そんな椿が僕は好きですね。ただ年を取っただけの人には頭は下げられないけど、すごく濃密ないい年の過ごし方をした人には自然と頭が下がってしまう……。それを象徴しているのが睦田夫人や藤田まことさん演じる睦田なんです。

Q:最後にこの映画を観る多くの人にメッセージをお願いします。

いろんな方に観ていただきたいですね。例えば、時代劇はちょっととか、暴力が出てくるのは嫌いと言う方にも、ぜひ観ていただきたい。今まで忘れていたものとか、身近すぎて見えなかったものを思い起こさせてくれると思います。いろんな見方をすることで、どこまでも深く掘り下げて観ることができる映画ですし、くすくす、笑いが絶えない映画ですね。こういうエンターテインメントって、僕自身とても好きなんですよ。ちゃんと奥行きがあるから笑いも生きてくる。世代によって見方も変わってくる気がするんです。若い子は“感じる”だろうし、ある年齢を過ごした方たちには“理解できる”だろうし、いろんなことが発掘できる映画だと思うので、ぜひ観ておいてください!!


織田裕二

本作は、椿三十郎の豪快な性格や放つオーラに加え、ユーモアと笑いが随所に盛り込まれていて、楽しめる見せ場が多い。観客の深層心理に訴えかけ、いつまでも心に残る作品に仕上がった。織田にとって約2年ぶりとなる新作映画は、デビュー20周年を飾る記念すべき作品となった。“織田版 椿三十郎”は時代を超え、満身の演技に魅了される。

映画『椿三十郎』は日劇1ほかにて全国公開中

最新インタビュー

インタビュー一覧 »

ADVERTISEMENT