シネマトゥデイ

石井竜也
『河童』『ACRI』
“機が熟した”今だからこそ観てほしい
『河童』『ACRI』石井竜也監督 単独インタビュー

取材・文:小林陽子 写真:田中紀子

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米米CLUBの再結成やソロ活動を順調にこなす石井竜也。かつてメガホンを取った『河童』と『ACRI』が、デジタルリマスター版としてDVD化される。撮影現場での裏話、映画監督への思い、そしてなぜ今DVD化して発売されるのか。監督・石井竜也に当時を振り返りながら語ってもらった。

■10年前の作品を今DVDとして発売する理由

Q:約10年前に撮影した作品が、DVDとして発売されることになった感想は?

当時、DVDが普及していたかと思うと、そんなことはなくて……。じゃ、5年前にどうだったかと思うと、やっとLDからDVDに買い換えるという時期で、そのときに出せれば良かったんですけど、自分のソロの活動もままならないときで……きっとまだ時期じゃなかったんでしょうね。で、今回たまたま米米CLUBが再結成されて、ソロの活動もある程度落ち着いてきて、周りから「お、石井もいろんなことやっているじゃん」と思われてきたんですね。“機が熟した”とでも言うんでしょうか。10年かかったのは遅すぎだという声もありますけど……。

Q:『河童』『ACRI』について簡単に紹介をお願いします。

『河童』という映画は、親と子の関係を描いた物語で、今じゃ、お袋を殺したとか、刺したとか、そんな事件が起こるようなブロークンな時代に『河童』が出てくるのも運命のような気がします。あと、13年前に『ACRI』を撮ったんですが、そのときすでに地球温暖化の話が映画の中で出てきているんですね。でも、当時は誰もピンと来てなかったと思うんです。あのころ、ロケをオーストラリアでしているときに、皮膚ガンの人が6人に1人いました。そこでは地球温暖化がとても大きな問題となっていたけど、まだ日本ではそこまで……という段階でした。でも、今となればエコロジーとか地球温暖化はもう自分のことのように考えている時代ですから、確実にDVDを今売ったほうがいい作品なんです。

Q:今観るのと、10年前に観るのとでは、まったく違うような気がします。

そうなんです。今観ると分かるんです! 地球が温暖化になると女性が増えて、そうすると子どもが増えて、男も増えてくると戦争も増えるという……人間の生物的なサイクルがあるんですよ。『ACRI』には、そういったことが語られているんです。多分、当時はただのクリチャー映画にしか見えなかったと思うんですが、実はとても深いことを言っているんですよ。

■ホオジロザメとニアミス!

Q:『ACRI』の撮影は自然の中で撮ったそうですが、大変だったのでは?

鯨がジャンプするところを撮影しようと思って、ゴールドコーストから船で3時間くらいのところにある、砂だけでできている島にいったんです。3日目くらいだったかな……カメラマンと一緒に海中で待っていたら、鯨の親子がやってきたんです。そのとき体験したことなんですが、大きな鯨がひとかきしただけで、とてつもない水圧を感じました。鯨のとてつもない力を実感しました。

Q:石井さんも一緒に海に入って撮影されたんですね。

はい(笑)。でも、海水って冷たいんだよね(笑)。入ってみて思ったんですけど、100メートルも200メートルも下が海っていうのは、「うわぁ」という恐怖感にさいなまされます(笑)。あるとき鯨を撮るので潜っていたんです。そのとき突然、ピーターという若い船長が「戻れ!」「海から上がってくれ!」って言うんです。でも、まだ3時間以上も時間あるし、とても良いチャンスだったし、もちろんお金も払っているし、勘弁してくれよ! ってこっちはカンカンだった訳ですよ。で、船が戻って夜みんなでご飯を食べていたらピーターが「あのときパニックになったら困ると思って今話すんだけど、魚群探知機に6メートル以上のホオジロザメがいたんだ」と。「30メートル下だから見つかれば10秒以内に上がってくるから。だからバシャバシャやったらおしまい、上がれって指示を出したんだ」と言われましたね。「ありがとう!」って感謝しましたよ(笑)。だって6メートルって言ったら僕らが乗っていたボートより大きいですからね。さすがにビビりました。

■ノイローゼになるほどつらかった

Q:『河童』のときエピソードも教えてください。

阿武隈洞っていう鍾乳洞がありまして。そういう鍾乳洞のシーンが多いものですから、みんなで研究しようってことになったんです。茨城県にある人が入らないような鍾乳洞に行きました。自分の胸の幅がやっとという狭さで、10センチくらいしか空気が吸える隙間がないようなところでした。進んでいったのはいいんですが、戻ろうとしたら方向転換ができなくて(笑)。あのときはもう、出られないんじゃないかって思いました。本当に苦労して作った映画でした。

Q:そんな過酷な撮影中、どんな思いでいたのですか?

あのときはとても忙しかったから、さすがにノイローゼになってしまうほどつらかったです。主役級の人たちが変わっていったり、脚本が変わっていったりする中で、壁にぶち当たることもありました。夜眠れなくてベランダでうずくまることもありました。“異業種監督”って思われないように、精いっぱい頑張りました。

Q:撮影していて良かったことはありましたか?

自然にはとても恵まれていましたよ。雨上がりの空や緑がすごくきれいでしたし、『河童』の頃は実は梅雨のど真ん中で(笑)。オフになると雨が降ったり、嵐が来てくれないかなって思うと嵐が来たり、本当ついていました。それから“天気をコントロールする監督だ”なんて言われて、うれしかったですね。

■今だからこそDVD化することに意義がある

Q:最後に両作品の見どころをお願いします。

人間関係とか親子関係とか、こういうところが揺らいでいる時代だと思いますので、こういうときに『河童』を観るのはとても良いことだと思います。ここで改めて親子ってなんだろう? とか、お父さんやお母さんってなんだったんだろうって根本的なことを考える良いきっかけになればと思います。また感動しながら観てもらえる良いストーリーにもなっているので、今DVD化することに意義ある映画だと思っています。それと『ACRI』については、地球温暖化や自然環境問題など、まさに今の問題をストレートに問うている作品なので、今だからこそ出会うべき映画だと思います。今DVD化されることは僕にとってとてもうれしいことです。それから役者さんの素晴らしい演技も見て欲しいし、『ACRI』の自然の美しさを見て欲しいです。

これまで話したことのないような裏話や恐怖体験を、身振り手振り、そのときの感情を交えながら伝えてくれた石井竜也。サービス精神旺盛な石井は、写真撮影時も「この河童と写真を撮るのは久しぶりだな~」とうれしそうに河童のキャラクターと絡んでくれた。豊かな想像性とエネルギッシュな行動力を合わせ持った石井は、今後もさまざまなジャンルでその才能を見せてくれることだろう。

『河童』『ACRI』のDVDはポニーキャニオンより絶賛発売中

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