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スタローンに捧げる、素晴らしき乱暴映画たち

今週のクローズアップ

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今週のクローズアップ /スタローンに捧げる、素晴らしき乱暴映画たち

世界の男たち待望の『ランボー』シリーズ最新作映画『ランボー 最後の戦場』が5月24日に公開される。シリーズ史上最強の残酷描写のオンパレードでR-15指定となった本作だが、暴力を描きながら暴力を否定するという反戦的なテーマを含んだ社会派の一面も持ち合わせてもいる。リアルに描くことによって、暴力とは何なのか? という問題提起をした本物志向のシルヴェスター・スタローンに敬意の念を表すとともに、今週は乱暴映画特集をさせてもらおう。

『わらの犬』~暴力が生む暴力~

 ドン・シーゲル監督の映画『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』で脚本家デビューしたサム・ペキンパーは、その後西部劇をメインとして監督業に進出。映画『ワイルドバンチ』で見せた男くさいバイオレンス演出で一躍有名になった。バイオレンス映画の巨匠として知られるペキンパー監督だが、そのフィルモグラフィーの中でもひときわ異彩を放っているのが映画『わらの犬』だ。


 ストーリー:平和主義者のアメリカ人数学学者の主人公・デイヴィッド(ダスティン・ホフマン)が若妻(スーザン・ジョージ)を連れてイギリスの片田舎に引っ越してくる。村は閉鎖的でよそ者である彼らに対し、村人たちがさまざまな嫌がらせを仕掛けてくる。最初は平和的に解決しようと村人たちを無視し続けるデイヴィッドだったが、とある出来事をきっかけに、堪忍袋の緒が切れてしまい……。


 ペキンパー監督にとって長編映画初となる現代劇の本作は、ゴードン・M・ウィリアムズによる小説「トレンチャー農場の包囲」をベースに、暴力が生む暴力を描いており、平和主義者だった主人公が一転、後半では殺人者として描かれていく。人間の持つ暴力性を否定することに対して懐疑的だったペキンパー監督の思想が集結した作品といえるだろう。

 

ダスティン・ホフマンとスーザン・ジョージ
Ian Showell / Getty Images

『デビルズ・リジェクト~マーダー・ライド・ショー2~』~暴力と復讐~

 ヘヴィ・ロック界の重鎮であり、ホラー映画マニアでもあるロブ・ゾンビが監督デビュー作映画『マーダー・ライド・ショー』に続いて発表したのが、映画『デビルズ・リジェクト~マーダー・ライド・ショー2~』だ。前作は1970から80年代のホラー映画にオマージュをささげ、恐怖とユーモアを織り交ぜた作品であったのに対して、続編となる本作はアメリカン・ニューシネマにオマージュをささげた骨太なバイオレンス映画となっている。


 ストーリー:前作でヒッチハイカーを襲い、大量殺人を繰り返してきたファイアフライ一家のもとに警察の捜査の手が伸びてくる。特殊部隊の猛攻撃から命からが逃れた殺人兄妹のオーティス(ビル・モーズリイ)とベイビー(シェリ・ムーン)、その父キャプテン・スポールディング(シド・ヘイグ)は道中で残忍な殺人を重ねながら逃避行を続けていた。しかし前作で兄を殺されたワイデル保安官(ウィリアム・フォーサイス)の異常なほどの復讐心(ふくしゅう)が徐々に殺人一家を追い詰めていく……。


 復讐(ふくしゅう)心に燃えるワイデル保安官を殺人一家よりも極悪非道の残忍な男として描き、殺人一家をアンチヒーローとしてカタルシス満点にとらえているところが、まさにゾンビ監督らしい作品といえる。殺された兄のかたきという大義名分で浴びせられる暴力であっても、それは単なる暴力にすぎず、それ以上の暴力で破滅していくワイデル保安官の最期は涙なしで語ることはできない。

 

Rock!Fuck!Fear! ロブ・ゾンビ
Albert L. Ortega / wireimage.com

『ヒルズ・ハブ・アイズ』~自衛としての暴力~

 ウェス・クレイヴン監督の映画『サランドラ』をフランスの俊英、アレクサンドル・アジャ監督が、本家を上回るバイオレンス描写満載でリメイクした作品。映画『ハイテンション』でみせた残酷描写とたたみ掛ける演出は健在で、さらにオリジナルにはないストーリー展開と、血で血を洗うバイオレンス合戦を描き、アメリカで大ヒットを記録した作品だ。


 ストーリー:銀婚式を迎えたカーター夫婦とその家族がキャンピングカーで砂漠を移動中、核実験場に近い荒地で車が故障してしまう。その場所で一夜を明かそうとした彼らの前に、放射能によって突然変異を起こした食人一家が現われ、残酷の限りを尽くしていく。家族を目の前で虐殺され、子どもを略奪されたダグ(アーロン・スタンフォード)と弟のボビー(ダン・バード)は、迫り来る食人一家を前に銃を手にするが……。


 倫理的な問題からメジャー配給会社が日本公開をあきらめ、延期の末に独立系配給会社の手によって限定的に公開されたといういわくつきの作品ではあるが、大傑作といえるほどの完成度がある。『ランボー 最後の戦場』同様に徹底した本物志向で作られた本作は、まさにバイオレンス映画とホラー映画のお手本的作品といえるだろう。ウェス監督が息子ジョナサンとともに執筆した脚本を基に、スタッフを一新して製作した続編もヒットを記録した。

ナイトメア・マスター、ウェス・クレイヴンとアレクサンドル・アジャ(右)
Michael Buckner / Getty Images

『ランボー 最後の戦場』~1人軍隊の暴力~

 1982年に誕生した映画『ランボー』でアクション・スターとしての地位を不動にしたスタローンが、61歳とは思えぬ肉体と精神で新たな伝説を作り上げた。それがシリーズ4作目となる『ランボー 最後の戦場』だ。タイムリーな世界情勢を盛り込むこともランボー・シリーズの見どころの一つだが、本作では内戦が今も続くミャンマーの現状を綿密にリサーチ。スタローンは、激化するカレン族に対する軍事政権の迫害に警鐘を打ち鳴らすべく、ミャンマーをバトルの舞台に選んだ。


 ストーリー:タイ北部のジャングルでヘビ・ハンターとして生計を立て、細々と暮らしているランボーのもとに、少数民族支援のためにアメリカからやってきた宗教組織の一員が道案内を頼むべく尋ねてくる。その中のサラに恋心が芽生えたランボーは危険地帯に彼らを送っていくが、サラたちはミャンマー軍の襲撃に合い、人質となってしまう。その知らせを受けたランボーは、手製のナイフと弓矢を手に、5人の傭兵とともに戦場へと向かっていく……。


 シリーズ初のR‐15指定となった本作であるが、劇中で繰り広げられるリアルなバトル描写はスティーヴン・スピルバーグ監督の映画『プライベート・ライアン』のオマハビーチにおける戦闘シーンを思い起こさせる。スタローンがリアルな残酷描写について「前作はアクション満載だったが、一人一人の死が描かれていない。何が現実かを見せたいんだ」と語るように、本作のランボーは単なるアクション野郎ではなく、人命の尊さを織り交ぜた社会派の一面を持つ“ワンマン・アーミー、ジョン・ランボー”として描かれているのだ。


 “最後の戦場”と題され、『ランボー』シリーズもこれで終わりかと思われたが、本作のプレミアに訪れたスタローンは「メキシコで行われている集団拉致を題材にした現代的なウエスタン」というストーリー構想の続編の可能性をほのめかし、見事に邦題を裏切ってくれた。


 スタローンの衰えを知らない肉体のますますの発展と、今後の乱暴映画の将来に期待しながら、本物志向丸出しの新たなランボー伝説を劇場のスクリーンでチェケラ!

エタニティ……
(C) 2007 EQUITY PICTURES MEDIENFONDS GMBH & CO.KG IV

文・構成:シネマトゥデイ編集部

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