シネマトゥデイ

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大沢たかお
『築地魚河岸三代目』
まともな人間が誰も出ていない、そこが人間的でいい
『築地魚河岸三代目』大沢たかお 単独インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ 写真:鈴木徹

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同名の人気コミックを映画化した『築地魚河岸三代目』で、エリートサラリーマンから、築地の中卸業に転職する主人公にふんした、大沢たかお。築地のさまざまなしきたりに右往左往しながらも、持ち前の明るさと情熱で、立派な築地の男へと成長していく過程をさわやかに演じている。実際に、祖父が築地市場で仲卸業を営んでいたという大沢の役柄にかける思いも、主人公同様に熱かったようだ。「いい作品だったでしょう?」と満面の笑顔で取材に現れた。出来上がった作品への、熱い思いを聞かせてもらった。

■目を見て人と向き合うことが大事

Q:本作のどういうところに魅力を感じましたか?

人間同士の触れ合いとか、そういう大切なものが映画になっていると思います。魚河岸って、人と人とが衝突し合ったり怒鳴り合ったり、そういう中で互いに関係を築いていくような場所なんですよね。そんなところを舞台にするというのは、意外に映画的なのかなと思いました。自分自身この映画と魚河岸に生きる人たちを通して自分の中で忘れていたものを思い出したという感じがします。今って連絡や会話も全部メールで済ますことが多いと思うんです。もちろん魚河岸の人たちもするんだろうけど、もっと相手の目を見て向き合ってものが言えることって大事だと思う。それが一つのメッセージになっている映画です。

Q:男同士でけんかするシーンが多かったですが、大沢さんはどんな風に感じましたか?

男ってやっぱりこういうもので生きてるんだなと改めて思いました。暴力ではなくて、そういう熱い思いを出すってことは大事なことだと感じました。

■築地を通して学んだこと

Q:ゲリラ的に撮影したという築地でのシーンはいかがでしたか?

ゲリラ的にやったところはほぼ失敗しましたね(笑)。ワーっと走るところがあるんですけど、ああいうのもゲリラ撮影でしたので、走っているうちにどんどん人が集まってきちゃって、結構大変だったんです。

Q:映画のように「どけよ!」なんて怒鳴られることはなかったんですか?

スタッフはすごく言われてたんじゃないですかね(笑)。本当に映画の通りですから。映画の中の築地が、そのままリアルな築地なんです。

Q:築地という場所で大沢さんが感じたことは?

魚河岸の人たちのエネルギーに慣れると、街やオフィスのシーンを撮るときに、オフィス街がとても病的に感じるんですよ。病的という言い方が良いか悪いかわからないけど、築地から、銀座に向かって歩いていくうちに、すれ違う人たちの顔色も悪くなってくるし、みんな下向いている感じになってきちゃう。僕らの生活って、気付かずに大事なものを忘れているんじゃないかと思いました。そして、築地で働く人たちと出会って、人間って魅力的なんだな、人間っていい目をしているんだということに改めて気付かされました。

■旬太郎は暑苦しいけど魅力的な男

Q:食通という設定に慣れるため、お料理の勉強はされたんですか?

魚のおろし方は教えていただいてどんどん練習しました。おろした刺身を、隣で待ち構えている助監督さんたちにガツガツ食べてもらっていました(笑)。

Q:主人公の旬太郎の魅力は?

自分の好きな人のためにできることなら何でもするとか、理不尽なことは許せないとか、そういう思いを感じる瞬間にすごく魅力を感じます。自分にはできないと思うし、逆にそういう人間がそばにいたら暑苦しいかもしれないとも思うけれども、もしいたら何かが変わるのかもしれない。不思議な男ですね。

Q:旬太郎を取り巻く、築地魚河岸の人たちがとても面白かったです。彼らについてどう思いましたか?

おかしな人の集まりです(笑)。正直言うと、この映画にはまともな人間が誰も出ていないと思うんですね。でも、それが人間的だと思うんですよ。この世の中に完璧な人なんていませんし、皆どこかずれているところがあるんだけど、それが個性になっているんですよね。

Q:お父さん役の伊東四朗さんもいい味出ていましたね。

面白かったですよね。ああいうタイプのお父さんって、なかなかいないですよね(笑)。

■映画って本来こういうものだと実感

Q:大沢さんご自身がグッときたシーンはどこですか?

誰でもそうだと思うんですけど、思いがあってこそ、誤解が生じることがあるんですよね。好きだから良かれと思ってやったことが全部裏目に出たりするようなことが、この映画の中にもいっぱいあるんです。そういうシーンはすごく切ないし、人間的なんだなって思います。親や兄弟や友だちでも、すべてわかり合える人なんていない。そういうところが見え隠れしているのがいいと思いました。

Q:ラストシーンで、お父さんが、旬太郎を出世魚のブリに例えて口上を述べるシーンがありました。ブリに例えるならば、役者としての大沢さんは今どの辺りでしょう?

うーん、どうだろう。何とも言えません。自分がブリになった時点で、ブリになったことにも気付かないんじゃないかな?

Q:これからご覧になる方々へメッセージをお願いします。

個人的にすごくいい映画に仕上がったと思っています。いろんな映画をやっているけれども、映画って本来こういうものだよなということを改めて感じさせてくれた映画です。皆さんも、ぜひ劇場に行って何かを感じてもらえればうれしいです。きっと、何かエネルギーを感じていただけると思います!

インタビュー中、大沢が口にした言葉で、とても印象的な言葉があった。「オフィス街に行くと、何か病的なものを感じる」。電車の中で、大の大人が横一列に座って熱心に携帯のメールを打つ現代は、確かに病的だ。人は、メールで自分の気持ちを言えたとしても、面と向かって相手の目を見て物事を言うことはできなくなっている。この映画を観ると、人と人がぶつかりあうこと、けんかすること、目を見て話すことの大切さがひしひしと伝わってくる。わかってもらおうと、相手の目を見て、必死に自分の気持ちを伝えようとする主人公の姿を見れば、明日からの自分が少し変わっていくのではないだろうか。

『築地魚河岸三代目』は6月7日より全国公開

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