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今週のクローズアップ /インドア派必見の傑作ミュージカル映画!

「暑い夏は歌って踊りたい! でもインドア派だから実際問題無理」そんなあなたに観てほしいのが、9日に公開されるミュージカル映画『アクロス・ザ・ユニバース』。今週は観ているだけで歌って踊っているような気分になる激アツ傑作ミュージカル映画をご紹介します。
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』~カタワレを探して~

 ジョン・キャメロン・ミッチェルが監督・脚本・出演を務めた本作は、性転換手術に失敗し、アソコが数センチ“アングリーインチ”残ってしまったドイツ生まれの売れないロックシンガーのヘドウィグ(ジョン)が、音楽のすべてを教え込んだ元恋人で現在はロックスターとなったトミー・ノーシス(マイケル・ピット)を追いかけるとともに、愛を追求していくという物語。


 元はブロードウェイから少し離れた場所にあるウェストビレッジのオフ・ブロードウェイ「ウェストベス・シアター」でジョンと作詞・作曲のスティーヴン・トラスクのコンビが誕生させた舞台版がベース。オリジナルはミュージカルというよりもジョン演じるヘドウィグが、自身の過激な人生経歴と愛の遍歴をバックバンドを従えて歌い語るコンサートのようなものだった。しかしヘドウィグという魅力的なキャラクターと、その人生経歴を歌った楽曲のレベルの高さから瞬く間に話題となり、マドンナが楽曲の使用権利を申し込んだり、デヴィッド・ボウイがグラミー賞をすっぽかして観劇するなど、一流アーティストたちをもとりこにしていった。


 映画版は舞台のライブ感はそのままに、ミュージカル映画としてドラマの展開もきちんと描かれ、サンダンス映画祭では観客賞を受賞。日本でもロングランヒットを記録し、舞台版が日本人キャストで上演されるなど数多くのファンを生んだ。またカバーアルバムや映画『ヴォイス・オブ・ヘドウィグ』という本作関連のドキュメンタリーも制作されている。


この曲に注目!
「オリジン・オブ・ラブ」「アングリーインチ」「ウィグ・イン・ア・ボックス」「ミッドナイト・レディオ」

 

右からジョン・キャメロン・ミッチェルとスティーヴン・トラスク
Scott Gries / Getty Images

『RENT/レント』~No Day But Today~

 ミュージカル作曲家のジョナサン・ラーソンが自身の体験や思いを込めて1996年に誕生させた傑作ミュージカルを、映画『ハリー・ポッター』シリーズのクリス・コロンバス監督がオリジナルキャストを迎え映画化した作品。エイズが猛威を振るった1980年代を舞台に、家賃(レント)も払えない若き芸術家の卵たちがエイズや仲間の死に直面しながらも、夢や愛のために生きる姿を力強く描いた傑作青春群像劇だ。


 ベースとなったミュージカルはまさに伝説といっても過言ではなく、無名であったジョナサンと無名の役者たちが生み出したこの物語は、ピューリッツァー賞、トニー賞、ドラマデスク賞、オビー賞、ニューヨーク演劇批評家協会賞を受賞し、13年経った現在もブロードウェイでロングラン上演中だ。しかしこの伝説をジョナサン自身が味わうことはなかった。ジョナサンは上演初日の前夜に大動脈瘤破裂によって35歳という若さでこの世を去ってしまったからだ。


 映像作家のマーク(アンソニー・ラップ)、シンガーソングライターのロジャー(アダム・パスカル)など登場人物たちの声や思いはまさにジョナサン自身の叫びであり、ジョナサンそのものである。特にロジャーが歌う「ワン・ソング・グローリー」はジョナサンの切実な思いであるとともに、彼がたどる運命そのものだ。映画化にあたってマーティン・スコセッシ監督やスパイク・リー監督も興味を示したものの、ジョナサンや登場人物たちと同じように芸術家の卵が集まるイーストビレッジで青春時代を過ごしたというクリス監督に決定。完成した作品はオリジナル版同様傑作に仕上がった。楽曲はグリーン・デイなどで知られる名プロデューサー、ロブ・カヴァロが現代風にアレンジし、新たな名曲としてリメイクした。ロバート・デ・ニーロが製作に名を連ねていることにも注目したい。


 この曲がすごくイイ!
「シーズンズ・オブ・ラブ」「レント」「ワン・ソング・グローリー」「アナザー・デイ」「ラ・ヴィ・ボエーム」「ホワット・ユー・オウン」

 

『RENT/レント』メンバーたち
Paul Hawthorne / Getty Images

『ヘアスプレー』~もう誰にも止められない!~

 本作はボルチモアの変態ジョン・ウォーターズ監督が1987年に製作した同名の映画を、ブロードウェイで2002年にさわやかにアレンジしてミュージカル化し、それを基にアダム・シャンクマン監督が映画化したという何ともややこしい経緯を持つ作品。オリジナルで顕著にあった矢印のずれたような笑いや異質な展開は影を潜め、男優のディヴァインがママを演じたという性別を超越したキャスティングのみが受け継がれ、本作ではジョン・トラヴォルタが特殊メークを施し見事に演じている。


 人種差別が色濃く残る1960年代のボルチモアを舞台に、巨漢少女のトレーシーが美男美女オンリーだった差別的なテレビ番組「コーニー・コリンズ・ショー」に出演することによって、町全体を変えていくという終始ノリノリなシンデレラ・ストーリー。はち切れんばかりの存在感を残したトレーシーは、千人を超えるオーディションを見事勝ち抜いたニッキー・ブロンスキーが好演。ニッキーはそれまでアイスクリーム屋でバイトする“普通の大きな少女”だった。


 本作は人種差別という重苦しいテーマを掲げているようにみえるが、実はそれは表面的で、本質的テーマは「自分らしく生きればいいのよ!」というポジティブなものである。太めの体型だからといっておっくうになることなく、自分の夢を精いっぱい追求し、そのプロセスをも楽しんでいくトレーシーの姿にどれだけの人々が勇気付けられ、笑顔になっただろうか。本作には遊びの演出が多く、ウォーターズ監督の地とも思える露出狂役での出演を皮切りに、オリジナル版キャストや作曲家のカメオ出演など、細部まで行き届いた演出に脱帽させられる。


 この曲が楽しい!
「グッド・モーニング・ボルチモア」「ザ・ナイセスト・キッズ・イン・タウン」「ウェルカム・トゥ・ザ・60s」「ウィズアウト・ラブ」「ユー・キャント・ストップ・ザ・ビート」

変態監督ジョン・ウォーターズ
Stefanie Keenan / wireimage.com

『アクロス・ザ・ユニバース』~ザ・ビートルズの名曲とコラボ~

 舞台版「ライオン・キング」や映画『タイタス』で知られる天才女流演出家ジュリー・テイモア監督がザ・ビートルズの名曲33曲を使い、初めてミュージカル映画に挑戦した作品。ベトナム戦争真っただ中のニューヨークを舞台にヒッピー・カルチャーや反戦運動などに青春をささげる若者たちの姿を独特な映像表現で描いていく。


 ザ・ビートルズの楽曲はすべてキャストたちが歌い、映画『ラスベガスをぶっつぶせ』のジム・スタージェスエヴァン・レイチェル・ウッドが美声を披露している。またU2のボノや映画『愛と青春の旅だち』の主題歌で知られるジョー・コッカーも出演。グラミー賞最優秀サウンドトラック賞にノミネートされるなど、楽曲の面でも話題となった。


 その挑戦的なスタイルでブロードウェイに衝撃を走らせたジュリー監督だが、長編監督デビュー作となる『タイタス』でもそのスタイルを貫き、ウィリアム・シェイクスピアのバイオレンス戯曲「タイタス・アンドロニカス」をベースに時代考証を無視した設定と抽象的な映像表現を取り入れ、暴力と復讐(ふくしゅう)を描き切った。本作にもそのスタイルは健在で、制作時にはぶっ飛んだ映像表現や演出、上映時間をめぐってプロデューサーとの衝突もうわさされたが、完成した作品はポール・マッカートニーやリンゴ・スター、オノ・ヨーコが絶賛するなど評価は高い。アメリカ公開時には単館上映から口コミで話題となり、最終的には964もの劇場で上映され、映画ランキングにも食い込んだ。本作を通じてきずなを深めたのか、ジュリー監督はじめエヴァン、ジム、ボノは現在ミュージカル版「スパイダーマン」の制作準備に取り掛かっており、ジュリー監督が挑戦する新たなミュージカル舞台にも注目していきたい。


 素晴らしいカバー!
「オール・マイ・ラビング」「アイ・ウォント・トゥ・ホールド・ユア・ハンド」「アクロス・ザ・ユニバース」「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」

映画『アクロス・ザ・ユニバース』
(C) 2007 Revolution Studios Distribution Company,LLC.All Rights Reserved

文・構成:シネマトゥデイ編集部

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