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トニー・レオン
『レッドクリフ Part I』
俳優を辞めようと思っていると、必ず“小さな天使”が現れる
『レッドクリフ Part I』トニー・レオン 単独インタビュー

取材・文:南樹里 写真:田中紀子

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『M:I-2』でハリウッドの頂点を極めたジョン・ウー監督が、10億円もの私財を投じ製作費100億円で完成させた映画『レッドクリフ Part I』『レッドクリフ Part II』。天下統一を目指して、魏・呉・蜀の三国が争覇したことをつづった歴史書「三国志」を基に、80万の曹操(そうそう)軍に対し、劉備軍と孫権軍による連合軍が立ち向かったとされる“赤壁の戦い”を描く。孫権軍の司令官である武将・周瑜をスタントなしのアクションで臨み、かつ、カンヌ国際映画祭でも認められた演技力を発揮したトニー・レオンに話を聞いた。

■覚悟して臨んだジョン・ウー監督の現場

Q:ジョン・ウー監督とは3度目のお仕事ですね。「ハリウッド経験後の変化が楽しみだ」とおっしゃっていましたが、いかがでしたか?

そうです。ハリウッド進出後「どのような変化があるか」いう期待を抱いたことが出演の大きな決め手です。ジョン・ウー監督はとてもいい人なので、仕事はいつも楽しかったです。長いこと一緒に仕事をしていなかったから、今回は久しぶりで大興奮しました。群衆や軍勢を演出する際の統御は本当にすごかったです。それにCGの使い方は、ハリウッドで学ばれたことの一つでしょう。

Q:「トニーは大好きなお酒を絶ち、撮影に臨んでくれた」とジョン・ウー監督がおっしゃっていました。本作の撮影は、やはりそれほどの覚悟が必要だったのですか?

確かに体力がないとできない撮影でした。ただ本作に限らず、撮影の間はお酒は飲みません。今回は体調の回復ができていない状態で撮影現場に入りましたし、大変な撮影であるほど規則正しい生活をするように心掛けています。普段は毎朝9時に体操をするのですが、本作の撮影中は7時前に起きて体を動かしました。また本作だけではなく、どの現場にもトレーナーを連れてゆき、現場で鍛えています。

Q:撮影中に熱中症で倒れたそうですね?

はい。熱中症で倒れたのは初めてです。それ以後、漢方薬を飲み始めてからは熱中症になっていません。倒れたのは真夏で、周瑜が馬に乗り突入する! という場面を撮影しているとき。実は、その場面を含んだ九官八卦の陣で戦うクライマックスシーンは、夏と冬の2度、撮影をしています。夏に撮影した仕上がりにジョン・ウー監督が満足しておらず、アクション監督をディオン・ラムさんからコリー・ユンさんに変えて、再び冬に撮り直しました。

Q:戦う男たちの生きざまにしびれましたし、趙雲が劉備の妻子を命懸けで救う忠義に涙しました。周瑜と孔明は3度戦った背景がありますが……。

『レッドクリフ Part I』では互いを認め合うスタイルになっています。ジョン・ウー監督はこれまでも男同士の理解、助け合いを描いてきましたから、まさしく監督らしい描き方だと思います。

■苦手なラブシーンについて

Q:孔明役の金城武さんとの再共演はいかがでしたか?

金城武さんとは『傷だらけの男たち』での共演で仲良くなり、食事をしたりするようになりました。お互いに助け合って大変な現場を乗り越えていきました。

Q:本作ではリン・チーリンさん、前作『ラスト、コーション』ではタン・ウェイさん。どちらも新人女優とカップルを演じています。現場で気を遣われたのはどのようなことですか?

仕事はチームワークで良くなりますし、楽しくやらなければ意味がないと思っています。僕にできることは、一つ。彼女たちが緊張していれば、緊張しないような雰囲気を作ること。緊張を和らげるように「これから楽しいことがあると考えたら」などの声をかけます。彼女たちがプレッシャーを感じないようにすれば、各自の持つ潜在的な能力を発揮できると思うからです。

Q:リン・チーリンさんが演じられた周瑜の妻・小喬をどう思いますか?

小喬は、優しくて、気遣いができ、人の気持ちがよくわかる人だと思います。それにとても美人! その美しさを例えるなら、もしも水に倒れたならば水がケガをするぐらい美しいと言えるでしょう。

Q:苦手だというラブシーンについてうかがいたいです。

ラブシーンは撮るのが最も難しいシーンの一つです。事前にたくさんのコミュニケーションを要するし、信頼関係を築くことが大切。この場面はストーリーの展開において、どうしても必要な場面なんです。後編をご覧になれば、その意味がわかると思います。それと監督は映画の中に美しいシーンを入れたかったんだと思いますよ。

Q:ジョン・ウー監督はラブシーンがあまり得意ではないと思うのですが。

いい質問ですね。ラブシーンを撮影する日の現場は、大変な緊張感が漂っていました。前回のラブシーンの撮影がうまくいったからといって、今回がうまくいくとは限らないでしょ。さらに監督は役者の心のケアをできるような術を持たなくてはならなのに、ジョン・ウー監督は「トニー、僕はラブシーンをどう撮ればいいのか、正直わからないんだ」って言ったんです! そのあと監督とは口を利きませんでした!……というのは冗談ですけど(笑)。

Q:どうなったんですか?

「監督ならできなくちゃ、だめですよ」と返しました。だって監督に「わからない」と言われたら、俳優は演じ方がわからない。かといって僕に指揮はできない。なぜならリン・チーリンさんは、初めての演技ですし、僕とは以前からの知り合いでもないですし、現場でのコミュニケーションも十分ではない段階だったんです。もしもその場で、僕が指示していたら「トニー・レオンはスケベ野郎だ」ってうわさになってしまいます(笑)。結局、すべてジョン・ウー監督の指示です。

■トニー・レオン、自身の瞳の魅力を語る

Q:“瞳で多くを語る俳優”と称されますが、特別な目のケアをなさっていますか?

皆さんが、そうおっしゃっているだけですよ(笑)。僕は何もしていません。ただ思い当たることがあるとすれば、小さいころは話すのがあまり好きではなかったことですね。とにかく考えることが好きだったので(笑)。まあ、それが心にいっぱいたまって、目を通してあふれだしているのかもしれませんね。

Q:1980年代、1990年代前半は俳優引退発言をされていまいたが、その後心境の変化があったのでしょうか?

それは毎回、自分の演技について何ら進歩がないあるいは新境地を見いだせないと落ち込んでいたから。でも「もう俳優をやめよう」と思っていると必ず“小さな天使”が現れるんです! その天使というのは、素晴らしい監督に出会うとか、素晴らしいチームに出会うことなんです。彼らとの出会いによって新たな発見が生まれます。そういったラッキーなことの繰り返しで、今の自分があると言えます。

Q:今後のご予定は?

来年の春にクランクイン予定のウォン・カーウァイ監督の『一代宗師』(原題)です。現在はそのために必要な詠春拳(えいしゅんけん)という拳法の練習をしています。

Q:『レッドクリフ Part II』では、どんな姿を見せてくれますか?

冒頭に周瑜の周りの危機や矛盾が描かれます。そして国か家族かと選択を迫られるのです。前編は戦闘シーンもありますけれど、どちらかといえば登場人物の紹介がメインだと思います。大規模な合戦はすべて後編で描かれます。でも前編を観なければ、後編の面白さはわからないと思いますよ。ぜひ、前編からご覧いただきたいです。

歴史は繰り返す。21世紀になった今も世界に戦争のない日々は訪れないものとの憂いはある。だが、戦下の一人一人に焦点をあてた『レッドクリフ Part I』『レッドクリフ Part II』で描かれるのは、勇気・友情・愛をなおざりにしない本気の男たちと、それを支える女たちの生きざまだ。トニー・レオンは謙遜(けんそん)して言葉にしなかったが、友人である監督のピンチを救うために体調不良のまま本作に出演した。それこそ勇気・友情・愛だといえるだろう。単なる合戦映画としてではなく、根底に流れる粋な精神に触れ、心躍らせよう!

『レッドクリフ Part I』は11月1日より全国公開

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