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伊勢谷友介&ジュリアン・ムーア
『ブラインドネス』
今の時代に必要な、大事なメッセージを投げかけていると思う
『ブラインドネス』伊勢谷友介&ジュリアン・ムーア 単独インタビュー

取材・文:古川祐子 写真:鈴木徹

ノーベル文学賞作家、ジョゼ・サラマーゴの小説「白の闇」をブラジル出身の鬼才フェルナンド・メイレレス監督が映画化した映画『ブラインドネス』。謎の伝染病によって失明し、収容所に強制隔離された患者たちが、極限状況で次第に本性をあらわにしていくさまを描くパニックサスペンスだ。壮絶なサバイバル劇を展開していくキャスト陣は、国際色豊かな顔触れ。主演女優のジュリアン・ムーアと、“最初に失明した男”を演じた伊勢谷友介の二人に、お互いの印象や撮影現場の雰囲気、作品のテーマまで幅広く語ってもらった。

■ユースケはとてもハンサムで素晴らしい俳優!

Q:初共演となる伊勢谷さんの印象は?

ジュリアン:ユースケはとてもハンサムで、すてきな俳優さんね。もうメロメロよ(笑)! 同時に、すごく勇気のある人だと思ったわ。というのも、わたしは英語圏の役者だからいいけど、彼のように自分の母国語以外で演技するのはとても難しいことだと思うの。それにもかかわらずユースケは、普段使うものとは違う言葉で、きちんと素晴らしい演技を見せていたわ。

伊勢谷:(テレ笑い)

ジュリアン:撮影初日だったかしら……。ユースケとヨシノ(木村佳乃)の二人が、とても感情を込めなければいけない、大事なシーンの撮影があったのよね。覚えてる?

伊勢谷:僕が最初に撮影したのは、けんかのシーンだったかな?

ジュリアン:覚えてない? ユースケとヨシノが、お互いに目が見えない中で探し合うシーンよ。すごく美しくて感動的な演技を見せてくれて、その場にいたみんなが泣き崩れちゃったの。本当に素晴らしかったわ!

伊勢谷:ああ、あのシーンね(笑)!

Q:伊勢谷さんは、撮影前に視覚障害トレーニングを受けたそうですね。

伊勢谷:はい。目隠しをして、ベルを鳴らしてもらいながら外を歩きました。視覚がなくなることで、周囲のいろんなものとの距離感があいまいになっているんで、そばを通る車がすごく怖かったです。近くのものに触れてチェックしようとすると、誰だか知らないのに、隣の人に触っちゃう(笑)。でもやっていくうちに、自分が置かれている場所が、だんだんわかってきました。改めて自分の五感を再確認したというか、いろんな発見がありましたね。

■ジュリアンはロボット?

Q:ジュリアンさんのような実力派女優と共演した感想は?

伊勢谷:最初は緊張しました。お会いする前は勝手にすごく大きい人だと思ってたんですけど(笑)、実際には小柄でかわいらしい女性で。とてもオープンマインドな方で、フレンドリーに接してくれました。

Q:演技面で刺激は受けましたか?

伊勢谷:もちろん。かわいらしいけれど、しんが強くてしっかりした方で、この映画の主人公にぴったりだと思ったし、彼女の存在感には大いに刺激を受けました。例えば、フェルナンド監督は「ジュリアンはロボットだ」と言うんです。逐一細かい部分を拾って、表現する能力にとても長けていて。彼女のプロフェッショナルな姿勢には学ぶところがたくさんありました。一緒にお仕事ができて、本当に幸せです。

■撮影現場でのランチタイムはサッカー大会!

Q:撮影現場の雰囲気はいかがでしたか。

ジュリアン:どのシーンでもほぼ全員がそろっているので、一つのコミュニティーみたいになったわね。ランチも一緒に食べて、同じ車に乗って。本当にいつも一緒にいたから、団体意識が強まって、年中みんなで冗談を言い合っていたわ(笑)。

伊勢谷:ジュリアンさんのだんなさんやお子さん、飼っている犬まで現場に来ていましたしね(笑)。

ジュリアン:そうね。ランチタイムに子どもたちがサッカーをすると、誰かが一緒にやってくれていたわね。

Q:伊勢谷さんもジュリアンさんのお子さんとサッカーをしたんですか?

伊勢谷:はい。サッカーをしたり、一緒に遊んだりしましたよ。お子さんたちはすごくかわいかったです。いい思い出ですね。

Q:映画はシリアスな内容だけど、現場はとても和やかだったみたいですね。

伊勢谷:確かに映画の中では、登場人物たちが災害に見舞われているようなひどい状況にいる。撮影前は、僕も共演者の方たちもこれは過酷なものになるぞ、と覚悟していたんですけれど、実際の現場の雰囲気はまったく違っていて。病棟にいるときは誰もがメインにもエキストラにもなる同等な状況の中に置かれて、みんなフラットな関係だった。汚くて臭いところにいる設定なので、不快さを表現しなくてはならなかったけど、実際撮影以外の場所ではお互い笑い合って、一緒にいることを楽しんでいる状況だったんです。

■人間は善悪を含め、あらゆる可能性を持っている

Q:この映画には、文明の崩壊をショッキングに描く一方で、失明することによって人々がお互い内面で通じ合うようになるといった、ポジティブな面もあります。さまざまなメッセージが含まれていると思いますが、お二人はどんなところに一番惹(ひ)かれましたか?

ジュリアン:人間というのは、本当に善悪を含めたいろんな可能性を秘めている存在なのね。ある状況に置かれたとき、何をするか本当はわからないし、常にわたしたちは、自分自身をも驚かせる可能性に満ちているわ。それはいい意味で驚く場合もあるし、嫌な意味のときもあるの。例えば、怪物みたいにもなれるし、真のリーダーのようになれるときもある。文明を作り上げることもできて、それを壊す可能性も持っているわ。わたしたちがお互い助け合って、コミュニティーを作っていく能力があるおかげで、どうにか生き延びてきている。そういったことをこの映画は示しているんじゃないかしら。

伊勢谷:この映画が持つテーマは、今の時代に必要かつ大事なメッセージを投げかけていると思います。これから人類は、地球規模でお互い共存する道を考えていかなくてはならない。だけど実は、自分たちが今いる世界も、映画と同じような状況だと思うんですよ。目が見えていても相手の本当の内心はわかっていない。わかっているようで、何も見えていない現実をちゃんと認識して、次の行動を見極めることが大事。そのあたりを比喩(ひゆ)的に描いているのではないかと。見た方が自分に照らし合わせて感じてもらって、次の行動を見つけてもらえるような作品なのではないでしょうか。

今回の共演を通して、すっかり仲良くなった二人。インタビュー中に、お互い英語で当時の思い出話に花を咲かせてしまうこともしばしばだった。クールなイメージのあったジュリアンだが、実際に会ってみると高い声でよく笑う、気さくな女性といった印象だった。一方、フェルナンド監督やジュリアンも太鼓判を押す俳優で、スクリーン同様に見事な英語力を披露した伊勢谷は、今後もワールドワイドな活躍を予感させる存在感に満ちあふれていた。

『ブラインドネス』は11月22日より丸の内プラゼールほかにて全国公開

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