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『感染列島』檀れい 単独インタビュー

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自分の代わりはいないと思うと、頑張って無理してしまう

取材・文:鴇田崇 写真:高野広美

未知のウイルスと、人類の壮絶な闘いというテーマを壮大なスケールで描き出す『感染列島』が完成。対処法が見つからない強力な新型ウイルスが引き起こす未曾有の大惨事をリアルに映像化したパニック・ムービーとしても話題だが、作品を通じて絵空事ではない世界を疑似体験するシミュレーション・ムービーとしても注目されている。その『感染列島』でメディカル・オフィサーを演じた檀れいに話を聞いた。

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誰にもわからない未知なる世界

檀れい

Q:完成した映画をご覧になった感想は?

自分の反省点ばかりが気になってまだ客観的に観られないので、感想と言われると困惑してしまいますね……(笑)。ただ、『感染列島』は絵空事ではないと深く考えさせられる映画になったと思います。

Q:この映画には、どうしても出たいと強く希望されたそうですね。

オリジナルの作品で、しっかりテーマが描き込まれていて、また人の命の大切さがきちんと描かれていたことが、出演したいと思った理由の一つでした。素晴らしいオリジナルの作品に出会うことはなかなか難しい中、まったく何もない白紙の状態から、瀬々敬久監督をはじめ、皆さんの思いが込められた台本に、心を動かされました。

Q:その情熱に、ご自身の女優魂も突き動かされた感じでしょうか?

ウイルスとの共存ということを一つのテーマに、自分たちが思い描いていることを形にしていこうという皆さんの思いと、それにぜひ出演して欲しいというオファーが、わたしにとってとてもありがたいことでした。それに応えるために、わたしには何ができるのかわからないけれど、一緒に映画を作っていきたいという思いが強くなっていきました。

Q:キャラクターを演じる上で、かなり準備もされたそうですね。

はい。感染に関する本を読んだり、JICA(国際協力機構)の方にお会いしてお話をうかがったり、また、医療現場に直接行ったりもしました。自分の具合が悪いときに病院へ行きますけど、お医者様の役となれば、見る視点が全然違ってきますから、改めて病院に行って現場の雰囲気や看護士さん、医師の方々が働いている姿を間近に感じたりする必要がありました。お医者様でも感染に関する知識は限られていますので、感染の専門の先生ともお会いしました。最終的には自分の中に集まった知識をいろいろ整理していって、感染が起こったときに自分ならどう対応するか、自分がメディカル・オフィサーだったらどう対応するのか、という想像をしました。結局は誰にもわからない未知なる世界だと思ったので、調べて知識を得て、感情を作っていきました。

パニック映画ではなくシミュレーション的映画

檀れい

Q:実際に、演じられた栄子と同じ立場になったら、どうしますか?

わたしはメディカル・オフィサーではないですし、彼女の立場だったらどうするかっていうのは、本当になってみないとわからないです。何とも答えられないですけれど、ただ、いろんな方々からお話をうかがって、人ごとではないと強く感じました。『感染列島』はパニック映画と言われますが、パニック映画というより、ある種のシミュレーション的映画だと思うんです。実際に新型ウイルスが日本に上陸したら、映画のような事態になるんだってことを感じてもらえると思うんです。わたしは実際にいろいろ調べたので、その怖さを強く感じましたし、エンターテインメントとして楽しむだけではなくて、さまざまな角度から観ていただけたらうれしいですね。

Q:本当の病院で撮影された感想は?

もともと使っていた病院をまるまる借り切って撮影したので、壁や床の汚れ、手すりの傷などを見るたびに、ここで入院した方々がいて、お医者様たちも必死に治療行為を行い、命を実際につないでいった現場だったんだと思い、本当に病院そのものが持っている力に助けられました。セットやスタジオでは、出せない空気感がそこにはありました。

Q:栄子とご自身を比べてリンクする部分はありましたか?

頑張っちゃう部分は似ていると思います。この仕事は無理をしちゃうでしょう(笑)。期待されているというのもありますが、自分が倒れたら代わりはいない場合もあるので、自分にもおのずと厳しくなりますし、無理をしちゃいます。踏ん張っている自分と栄子は似ているような気がしますね。松岡先生(妻武木聡)と栄子が離れ離れになるシーンで「無理すんなよ。栄子は頑張り過ぎるから」って言われたときに、わたしのことだって思ってしまいました(笑)。

Q:妻夫木聡さんとの共演の感想は?

とてもすてきな俳優さんでした。いつも現場を明るくしてくれて、いろんな方に心配りをされて、ちゃんとみんながうまくいくように間を取り持つことができる方で、本当に頼れる人だって思いました。妻夫木さんのスタンスなのかどうかはわかりませんけれど、お互いにいい形で信頼し合えるような、遠慮なく飛び込んでいける部分が彼の中にあったので、いい共演者とめぐり会えることができたって思いました。わたしは比較的これまでも共演者の方々とのめぐり合わせが良くて、本当にいつも皆さんに助けられながら、演技をさせていただいています。

映画の現場はいつでもドキドキワクワク

檀れい

Q:映画への出演が続いていますが、映画の現場には慣れましたか?

それはないですね(笑)。映画って、こういう現場なんだっていうのは、何となくわかってきましたけれど、慣れないですし、逆にあえて慣れないようにもしています。脚本をいただいてどのように演じようか毎回悩みますし、毎回役作りの方法も違いますよね。本当に白紙の状態から、いつもドキドキしながら仕事に向き合っている感じです。また、慣れてしまうと、怠惰になりそうな自分がいるので嫌なんです。わたしは、いつも新鮮な気持ちで、ドキドキワクワクしながら仕事をしていきたいと思っているので、慣れたくはないですね。

Q:映画の現場の楽しさとは何でしょうか?

まだ無我夢中で、共演者の方がどう出るのかもそのときにならないとわからないですし、監督が何を求めているのか、どんな画作りを考えているのかもわからない。現場に行ってみないとわからないことが多くて、仕上がった映像を観て毎回反省しています(笑)。だからこそ、楽しいのだと思っているんです。自分を見つめ直す機会にもなると思いますし、思うようにならないところも、かえって面白いと思いますね。

Q:この映画に出て、女優として最大の収穫とは?

何がではなく、すべてがプラスになっていると思います。ただ、それが具体的に何かはわからないんです。確実にわたしの血や肉となっているんですけれど、それが何年後に表に出てくるのか、何作目に出てくるのかって感じですね。何かしらの蓄積はあると思いますが、すぐにどうっていう感じではないです。ゆっくりわたしの体に染み込んでいって、何年後かに出てくるものだと思います。そんな気がしますね。

Q:今後、演じてみたいキャラクターはありますか?

楽しい役です。過酷なキャラクターは嫌いじゃないですが(笑)、楽しい役、コメディーもやってみたいです。パッと明るいキャラクターを演じてみたいですね。

Q:最後に、これから映画をご覧になる方へのメッセージをお願いします。

命をテーマにした作品は今までたくさんありましたし、パニック映画もたくさんあったと思いますが、『感染列島』はまったく違う作品になったとわたしは思っています。命の大切さや、ウイルスとの共存など、いろんなメッセージが込められていますが、スクリーンからどう感じ取って、キャッチするかは皆さんの視点に委ねられていると思います。最後には生きる希望みたいなものがきちんと描かれているので、ぜひ観ていただきたいと思いますし、ある意味で怖いと思わせる映画でもあります。エンターテインメントとしてだけではなく、感染ということに関して、もっと日常的に考えるきっかけにしていただけたら、わたしとしてはうれしいですね。


檀れい

WHO(世界保健機関)から派遣されたメディカル・オフィサーとして、地獄のような現場でウイルスと闘う檀演じる栄子は、これまでスクリーンで観てきた檀のイメージとは違い、新たな一面を見せてくれる。また同時に女性としての強さと弱さをバランス良く表現しなければならない難役を彼女の持ち前の演技力で、見事にこなしている点も見逃せない『感染列島』。明るいキャラクターを演じてみたいと意欲を新たにする檀の今後の活躍にも期待したい。

『感染列島』は2009年1月17日より全国公開

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