シネマトゥデイ

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木村祐一監督
『ニセ札』
映画が完成したときは、泣きそうになった
『ニセ札』木村祐一監督 単独インタビュー

取材・文: 平野敦子 写真:高野広美

お笑いタレントや放送作家、料理愛好家、コラムニスト、そして俳優という多くの肩書きを持つマルチな男、木村祐一。そんな木村が映画監督という新しい分野にチャレンジし、映画『ニセ札』という何とも愉快で心温まる作品を撮り上げた。自身も一人の役者として出演もしている本作への熱い思いや撮影中の苦労について、そして映画監督としての今後の野望について直撃してみた。

■映画監督は素晴らしい職業

Q:今回初めて映画監督をされた感想について聞かせてください。

素晴らしい職業があったんやなと。身近にありながら、知らない世界を経験できた幸せと喜びを感じていますね。正直なところ、それ以外の感想はないんですよ。苦労とかいうものは全部飛んでしまっていますね。

Q:今回ご自分でも出演もされて、監督も同時に務めたわけですが、苦労はしませんでしたか?

僕は、役者さんは“俳優部”というスタッフの中のキャストだという風に思うんですよ。照明さんもカメラも録音も衣装もメークも同じように、いろいろとある中のキャストなんです。そこに監督をやりながら、一つのコマとして自分が出演もするというのは、そんなに考えるほど大変なことじゃないですよ。

■世にも楽しいニセ札作り

Q:今回、ニセ札作りをテーマに映画を撮ろうと思ったきっかけについて教えてください。

題材(ニセ札作り)として提示されたときに、ぼわっと頭の中で構想が浮かんだんですよ。希望と夢が満ちあふれていたような時代に、このニセ札作りの話があって、豊かになるのはとてもすてきなことなんじゃないかと思い、何でそれを求めたらダメなの……というね。開き直りでもないですけど、そういう楽天的な部分もあったんじゃないかと頭が働いたんです。

Q:ご自分でニセ札を作ろうと思われたことはありますか?

思い返せば、幼稚園とか小学校のときに、紙に千円とか一万円って書いて作ったりしていましたね。当然使おうとはしないけど、作るだけでも楽しいですよね(笑)。そんときはあかんもんとも思ってないし、お金はあったらうれしいでしょ? そういう意識が誰しも残っているんじゃないですかねぇ……。

Q:この映画では、かげ子やみさ子をはじめ、とても頭が良くて強い女性が描かれていますが、特に意識されて強い女性を描かれたのでしょうか?

倍賞(美津子)さんが演じたかげ子の場合は、教育者(先生)だったんで、これは時代がどうあれ、しっかりとした人間性を持っている人を意識しましたね。西方凌さんが演じたみさ子は、男をそそのかしますが、男を頼りに生きている女性なんです。村の女性たちもそうなんですが、お金を持って集まってきて、わたしらもニセ札作りに参加させてと言うんです。やはり子どもたちとかだんなにちょっとでもうまいもんを食べさせたい、ええもんを着せたいというその辺の生活レベルでの強さというのは、断然女の人の方が強いんじゃないですかね。

Q:女性のほうが現実的ということですね?

男はやっぱり(犯罪と)聞くと怖がるでしょ。村のだんな衆は「犯罪に加担するのはあかんで!」という意識があるんですよ。男には家族を守るという責任がありますから。でも、女の人にはもしこれでわたしが捕まっても、だんながおるから子どもは大丈夫というような、捨て身になれる部分があるんじゃないかと思いますね。

■舞台あいさつでは泣いてしまうかも!?

Q:撮影中は毎日現場に行くのが楽しかったですか?

撮影に行くときの気持ちは、やっぱり不安と期待がほとんどを占めていましたね。半年前から脚本を書いたり、ロケハン(映画撮影に適したロケ地を探すこと)に行ったり、撮影の前の日はどういう風に撮ろうかとあらかじめ下準備もするしね。撮影がうまく運ぶだろうかという不安と期待が半々ぐらいでした。今回は楽しんでやっている余裕はあまりなかったです。でも、一日終わって良かったとほっとするのと、あぁそういえば(撮影中は)楽しかったというのがこみ上げてくることが重なって、仕上がったときはもう感動ものでしたね。泣きそうでしたねぇ……泣いていたかな……あんとき(笑)。

Q:撮影終了後に泣いてしまったんですか?

今までで一番泣きそうになったのは、編集が終わったときですね。舞台あいさつも泣くかもしれん! 映画『252 生存者あり』のとき、水田(伸生)監督がちょっと泣いてたんですよ。あれ、ものすごいわかるんですよ。何て自分は幸せなんだろうという喜びがわいてくるんですよ。今も泣きそうになってもうたわ。舞台あいさつはやばい、絶対に。しゃべられへんかもしれん(笑)!

Q:木村監督にとってお金に換えられない大切なものとは何ですか?

やっぱり思いやりでしょうね。人間同士ですから相手の立場に立ってあげるというね。見た目とか発した一言だけで、人を判断していけないということがありますね。だから僕、初めて入った店でも、まずいと思ってももう一回チャンスを与えるんですよ。こっちの頼み方が悪かったんじゃないのかと、もう一回行くことにしているんです。それで違うメニューでチャレンジして判断するんです。

Q:また監督をしてみたいと思われますか? またそのご予定は?

両方イエスですね。というのも今年から毎年、吉本が沖縄国際映画祭をやりますから、もう今度は必然的に製作の立場になるし、なりたいと思っていますんで、それができることが幸せだと思います。

ゴルフ焼けをしたとかで、ほんのり赤く染まった顔で現れた木村監督。その顔と、赤と白のチェックのシャツが見事にマッチしていた。実際にお会いするまでは、怖い方なのかと内心ビクビクしていたのだが、さすがは“キム兄”である。誰からも慕われる人物だけあって、物腰は柔らかく丁寧である。今回木村監督は初めてメガホンを取ったわけだが、あくまでもニセ札作りを楽しんだ人々の突き抜けた明るさが、木村監督自身の楽観主義とも重なってみえた。芸人という枠を軽々と飛び越え、役者としても、また監督としても未知の可能性を秘めた木村という人物から、これからも目が離せない。

映画『ニセ札』は4月11日よりテアトル新宿、シネカノン有楽町ほかにて全国公開

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