シネマトゥデイ

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柴田恭兵
『ハゲタカ』
「この国も捨てたものではない」というセリフを言うために
走り続けてきた感はあります
『ハゲタカ』柴田恭兵 単独インタビュー

取材・文:鴇田崇 写真:高野広美

100年に一度といわれる未曾有の経済危機を反映した、リアルなストーリーに注目が集まる「ハゲタカ」の劇場版が完成。主演はテレビドラマ版からの続投となる大森南朋で、大森演じる“ハゲタカ”こと天才ファンドマネージャーの鷲津政彦を日本へ呼び戻す企業再生家・芝野健夫を、柴田恭兵が引き続き演じた。完成した映画にかつてないほどの愛おしさを感じ、俳優として転機になったシリーズと語る柴田にさまざまな話を聞いた。

■『ハゲタカ』のドラマとしての魅力と、大人気の理由

Q:今回の映画『ハゲタカ』を最初に観たときの率直な感想はいかがでしたか?

日本映画っぽくないといいますか、とにかく不思議な感じがしました。もともと僕は自分が出ている映画は、1回観れば十分なところがあるのですが(苦笑)、今回は本当に何度も観たいと思いました。しかも、観た翌日ぐらいにもう一度観て、大森さんや遠藤(憲一)君、中尾さん、全員に会いたいという愛おしさを感じた映画でした。

Q:日本を愛する男たちのドラマに感情移入されたからでしょうか?

確かに経済問題を扱う内容で、今回はたまたま中国が市場の買収を仕掛けてくるストーリーでしたが、そういうことではなく、もっと人間くさい話になっているので、それが良かったと思います。映画全体としては個々の人間ドラマになっていると思いますね。

Q:では、テレビドラマから続く人気の秘けつは何でしょうか?

もう2年ほど前になりますが、もちろんタイムリーな題材がウケたことはあると思います。テレビドラマのときは宇崎竜童さん、冨士眞奈美さん、菅原文太さん、それぞれのゲストのエピソードをはじめ、一話一話がふくらみのある内容だったことも大きかったと思います。魅力的なゲストの方たちが人間ドラマを盛り上げて、それは中小企業だろうが、大企業だろうが同じことで、そういう熱意が観ている人たちへと伝わったのだと思います。

■企業再生家・芝野健夫と俳優・柴田恭兵を比べて

Q:企業再生家・芝野として、役へのアプローチをどのように行いましたか?

企業再生家と聞くと仰々しい感じもしますが、根っこの部分では企業も人間と同じ生き物で夢や希望も必要だという芝野の芯(しん)がブレなければ、演じ切れるのではないかと思って取り組みました。スタッフ・キャストの間で、観終わった後にちょっとでも元気になって映画館を後にしてほしいという話を撮影前からしていて、そのために芝野のセリフをギリギリまで粘って現場で考えたことも多かったです。最後の最後までせりふをいろいろと考えていましたね。

Q:テレビドラマ版からの続投になりますが、芝野に対しての思い入れは?

今回の「この国も捨てたものではない」というセリフを言うために、ドラマ時代から走り続けてきた感はあります。ドラマ版では銀行を辞めますが、そのときは銀行の方針と自分の方向性にズレを感じて辞表を出しました。自分をごまかしてまで銀行員として生きていくのはつらいと。単なる正義感だけではないと思います。絶対に譲れないものを芝野は持っていて、企業再生家としての目先の数字や利益だけではなくて、先のことまで考えている男だと思うんです。だからこそ有能なのだと思います。ドラマ版では大空電機という大企業を再生して、数年後に日本を代表する、日本の誇りである会社に雇われているわけですから。人知れず頑張ったのでしょうね(笑)。

Q:当時の芝野が抱いていたような葛藤(かっとう)が、柴田さんご自身にもありましたか?

葛藤(かっとう)というか、俳優は個人商店。その意味では社長であり社員ですが、柴田恭兵という会社は一人では成り立たないわけです。多くの人たちの助けがいる。そしてその人たちの期待に応えられているのか、応えなければいけないといつも不安でいっぱいです。と同時に「ハゲタカ」のようなドラマに出会えたときのような喜びもある。そういう気持ちは永遠に続くことなのだろうと思います。もっともっといろいろな人や作品に出会いたいです。

Q:その意味でも芝野というキャラクターに入りやすかったのでしょうか?

そうですね。芝野は企業再生家ですが、「ハゲタカ」の中では心情的なセリフを担当していた方だと僕は思っています。演じることは難しかったですが、逆に楽しかったですね。

■素晴らしい脚本に出会えたことの幸せ

Q:派遣問題や金融危機を扱う本作は、現代において大きな意義がありそうです。

映画はいろいろな受け止め方があって当然だと思います。僕は愛おしさと切なさを感じた映画でした。観終わった後に、たくさんのことを感じ取ってもらって、なおかつちょっと元気になってもらえたらうれしいですね。

Q:監督は、スーツの男たちはカッコいいと女性にもアピールしたいそうですが。

現場では執拗(しつよう)に撮っていたと思います(笑)。そのお陰で余計な緊張感や力みがどんどんと抜けていって、それぞれのキャラクターの本音まで浮き彫りになっていったと感じます。

Q:そもそも社会性やメッセージ性がある映画はお好きなのでしょうか?

いえ。結果的にそうなっているだけだと思います。今まで社会性やメッセージ性を意識したこともなかったですし、今回は脚本が素晴らしかった。すてきな脚本に出会えたことは、俳優として本当に幸せなことだと思います。

■俳優として転機になった「ハゲタカ」の存在

Q:「ハゲタカ」との出会いで、最も心に残っていることは何でしょうか?

ドラマの撮影が始まり、いろいろなシーンを重ね、3話ぐらい撮ったところで、僕にガンが見つかりました。緊急手術をしなくてはいけない状態だったんです。途中まで撮っておきながら手術をしなくてはいけないということになって申し訳ないとNHKの人に言いました。場合によっては降板もあり得るという話を切り出したところ、皆さんが「元気になって戻ってほしい。待ちます」と言ってくれました。

Q:柴田さん自身「ハゲタカ」に元気をもらった経験者ということなのですね。

ええ。その思いに応えるために病を克服して、一刻でも早く現場に戻りたいと思いました。関係者の皆さんからの励ましがあったおかげで僕も元気になれたし、その応援に応えたいがために頑張ったことも事実です。「ハゲタカ」は俳優として大きな転機になったドラマだったんです。だからとてもうれしかったですね。実際にすてきなドラマになっていろいろな賞もいただいて、映画にもなった。今度は映画を観る人が元気になって、語り合ってほしいと思います。

『ハゲタカ』の魅力だけでなく、俳優・柴田自身のことやガンとの闘病についても語ってくれた柴田。企業再生家・芝野をはじめ、数々の映画やドラマで当たり役を持ち、名作と評価される人間ドラマを生み出すことができる真の俳優でありながら、常に観客や周囲の期待に応えられているのか自問自答しているという謙虚な姿勢が印象に残った。そんな名優の確かな演技を、本作で目の当たりにしてほしい。

『ハゲタカ』は6月6日より全国東宝系にて全国公開

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