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みうらじゅん、田口トモロヲ
『色即ぜねれいしょん』
コンプレックスは、個性でチャンスだと感じてもらいたい
『色即ぜねれいしょん』みうらじゅん、田口トモロヲ監督 単独インタビュー

取材・文:斉藤由紀子 写真:秋山泰彦

原作・みうらじゅん、監督・田口トモロヲといえば、大絶賛された青春ロック映画『アイデン&ティティ』でおなじみの名コンビだが、彼らが再びタッグを組み、新感覚の青春映画を完成させた。1970年代の京都が舞台の映画『色即ぜねれいしょん』は、今流行の体育会系でもなく、ヤンキー系でもない、普段脚光を浴びることのない平凡な文科系男子高校生の一夏の成長物語を描いた青春映画。友人同士でもあるみうらと田口が、本作にまつわるエピソードや、お互いの高校時代について、ユーモアたっぷりに語ってくれた。

■『アイデン&ティティ』のゴールデンコンビ復活!

Q:みうらさんの自伝的小説の映画化ということで、田口さんが監督として一番こだわった部分は?

田口:みうらさんが観てOKかどうかにこだわりました。彼とは友だちなので、面白いと言ってくれるかどうかが気になるんです。もちろんキャスティングにも気を遣いました。みうらさんに、「原作とイメージが違う!」と思われるのだけは避けたかったんですよね。

みうら:僕は、「信用していますから」って何度も言っているんですよ。それでも、「いや、わからないね!」って何回も言うのがトモロヲさんの特徴なんです。実際、配役も内容も素晴らしかったですよ。本当に感動しました。

田口:ありがとうございます!

Q:本作は、『アイデン&ティティ』に続くゴールデンコンビの第2弾と言われていますが。

みうら:ゴールデンコンビって、記事に書かれたことはあるけど、実際に言われたのは初めてです(笑)。僕たち「ブロンソンズ」って音楽ユニットも結成しているんですけど、一度もブレイクしたことがないんですよ。テレビのゴールデンタイムにも出たことがないんで、ゴールデンはしっくりこないですねえ(笑)。

田口:僕ら、ブレイクじゃなくてブレーキですから(笑)。

みうら:そう、そう。「あいつらブレーキかけてんな~」って言われていますから。わざと止めていたからね、ずっと(笑)。

Q:前作が高い評価を得ただけに、プレッシャーも大きかったのでは?

田口:そうですね。みうらさんから好きなように作っていいと言われていたので、正直プレッシャーはありました。おかげさまで前作の評判が良かったので、それを超えられるかが課題でした。でも、今回はまったく違うドラマですから、撮影をしていくうちに自然とプレッシャーは消えていきました。

■テーマはズバリ、中流のコンプレックス

Q:本作を田口さんが監督されたのは、自然な流れだったんですか?

みうら:いや、僕がトモロヲさんに「撮ってもらえませんか?」って頼みました。この作品のテーマは中流ですよね。不良でも優等生でもない、金持ちでもド貧乏でもない。そのテーマは、実際に体験した人じゃないとわからないんですよ。

田口:僕も中流出身で、それがコンプレックスだったんです。大きな不幸がないことが不幸という、映画で描いた痛みのようなものは、みうらさんと話さなくてもわかり合えるんです。

みうら:普通なら、不幸がないのはいいことじゃないですか。でも、若いころにロックを知っていく段階で、ニュートラルでいる自分にコンプレックスを感じる人がいるんです。そこがトモロヲさんとは共通しているんじゃないですかね。

Q:文科系男子高校生の青春がリアルに描かれていましたが、お二人はどんな高校生でした?

田口:僕は転校生だったのでイジメられたんです。そのイジメからサバイブするのが大変でした。もう、ド暗い、忘れたい、封印したい過去ですね。学校に居場所がなくて、家族にも迷惑をかけたくなかったので、映画館に行って現実逃避していました。そこで、「映画ってこんなに自由なんだ!」と、感動して映画好きになっていったんです。

みうら:僕も、学校にも家庭にも居場所がなかったので、自分の部屋で勝手に締め切りを決めて漫画を描いたりしていました。今で言う引きこもりですよ。でも、当時はそんな言葉はなかったから、「夏休みも部屋から出てこない!」ってオトンに心配されたりして(笑)。まあ、陽気な引きこもりでしたね。

Q:お二人の高校時代も、本作の主人公・純のように性への興味でいっぱいでしたか?

みうら:当たり前じゃないですか! 引きこもりっていうのは、発散できる人よりも妄想が強いですからね!

田口:バリバリ興味がありましたけど、そういうのって、ものすごくハードルが高くて、一生手が届かないと思っていました(笑)。

みうら:僕もそう思っていたなぁ。好きでするのか、遊びでするのか、マジメに考え過ぎていましたね。

田口:まさに、純そのものですよ(笑)。

■監督がミュージシャンをキャスティングした理由とは?

Q:銀杏BOYZの峯田和伸さんや、くるりの岸田繁さんなど、主人公を取り巻く大人たちの役にミュージシャンを起用したのは、田口さんの狙いだったんですか?

田口:高校時代って、自分のことを客観的に見られないじゃないですか。家庭と学校の大人しか知らない主人公の胸に、さりげなく発した言葉が突き刺さる大人ってどんな人なんだろう? と考えたときに、やっぱりロック系のミュージシャンだろうと思ったんです。それで、純が出会うユースホステルのヘルパーを峯田くん、家庭教師を岸田くんに演じてもらいました。

Q:映画初出演の岸田さんも、とても魅力的でした。

田口:役者さんじゃないからいいんでしょうね。あれはほとんど本人のまんまで、演技ではないと思います。峯田くんの場合は、『アイデン&ティティ』のときから芝居も音楽もできる奇跡的な人だと思っていましたけど、基本的にミュージシャンの方は芝居じゃないですね。その人の持つ魅力を、そのまま映画で生かしています。

Q:黒猫チェルシーのボーカル・渡辺大知さんが演じた純は、みうらさんの分身的な存在だと思うのですが、ご覧になっていかがでしたか?

みうら:分身としては観ていないです。あくまでも自分が小説で描いた乾純という人で、再現ドラマではないですからね。でも、実際の渡辺くんも文科系なので、僕の高校時代に似ているところはありますよね。

Q:映画『ROOKIES -卒業-』『クローズZERO』のメンバーにはいないタイプの高校生ですよね?

みうら:当然いないでしょ! 逆にボコボコにされちゃうヤツでしょ(笑)。体育会系ではないジャンルの青春映画ですから。

田口:文科系『クローズZERO』ですね(笑)。

■最後に、映画を観る方にメッセージをお願いします。

Q:主人公たちは、隠岐島のユースホステルで一夏を過ごしますが、あれはみうらさんの実体験なんですよね?

みうら:そうです。ユースホステルで夏を過ごしたのは、クラスの中で僕だけでした。だって、キャンプファイアーでハンカチ落としですよ! 夜空の星を見て泣くんですよ! まさに、青春ノイローゼですよ(笑)。

Q:ヒッピー文化の名残りを残す、1970年代の最先端カルチャーではなかったんですね(笑)。

みうら:違います! 映画で主人公がやっている通信空手みたいなもんです。あれも僕が実際にやっていたものですけど、通信で空手をやるなんて笑っちゃうでしょ? そんな感じです。

Q:最後に、映画を観る方にメッセージをお願いします。

田口:主人公が優等生にもヤンキーにもなれない中途半端な童貞高校生で、旅に出てさまざまな人と出会うことで、ちょっとだけ自己解放するようになるという、今までなかったタイプの青春映画です。コンプレックスは個性でチャンスなんだと感じてもらえる作品になっていると思うので、幅広い人に観てもらいたいです!

みうら:大人が青春映画を観たときに、ゼロになると郷愁を感じるけど、この作品は主人公が何かを始めた一歩目を描いているので、郷愁を感じないんです。そんな、ゼロじゃなくて1のところで踏ん張ったり叫んだりした自分がいたことに気付いてもらえたら、疲れている人も安らかな気持ちになれるんじゃないかと思います。

息のピッタリ合った面白トークを繰り広げてくれたみうらと田口。心の深い部分で共鳴し合う二人が作り上げた『色即ぜねれいしょん』は、熱血教師も校内バイオレンスも登場しない、ごく平凡な高校生の青春映画だが、ユーモラスな描写と胸キュンなドラマとのバランスが絶妙! 内向的だった主人公が、音楽で情熱を爆発させるクライマックスを観れば、誰もが最高のカタルシスを味わえるはずだ。田口の希望で実現したという、みうらのカメオ出演もお楽しみに!

『色即ぜねれいしょん』は8月15日よりシネセゾン渋谷、新宿バルト9、吉祥寺バウスシアターほかにて全国公開

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