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松本人志
『しんぼる』
主演を人に振りたいけど、自分でやった方が楽かなぁ?
『しんぼる』松本人志監督 インタビュー

取材・文:鴇田崇 写真:吉岡希鼓斗

第60回カンヌ国際映画祭・監督週間正式招待作品に選ばれた初監督映画『大日本人』に続いて、松本人志監督の長編第2弾映画『しんぼる』が、ついにベールを脱ぐ! ある部屋に閉じ込められた男が、知恵を振り絞って脱出を図ろうとする密室劇で、独創性あふれるストーリー展開が前作以上に話題を呼びそうだ。前作同様、企画・監督・脚本・主演をこなした松本監督に、映画完成までの道のりや本作で描きたかったテーマなど、さまざまな話を聞いた。

■貧乏性から始まった!? 密室劇誕生のコンセプトとは

Q:前作は日本人向けで、今回は海外を視野に入れると言われていましたよね?

まあ、海外と言いますか、無声劇にしたかったんですよね。しゃべってしまうと、どうしてもセリフを字幕に起こすときに、後は僕のあずかり知らないところで動いてしまうので……。自分の意図した感じに、ちゃんと伝わっているかどうかという不安やジレンマが、ちょっとストレスだったんですよ。今回、僕がしゃべらなければ、そこは一切気にしなくていいので、そこが一番の違いですかねぇ。

Q:お一人で出演するというコンセプトも、最初から決まっていたことですか?

いや、それがね、閉じ込められた男の一人芝居みたいなことをやりたかったからこうなったのか、それとも、一人だから会話する相手がいないので無声劇になったのか、どっちがスタートだったのか、自分でもちょっとよくわからないんです。多分、どっちもあるわけですけど、よく考えたら、おれしゃべっていなかったっていう感じですね(笑)。はい。

Q:閉じ込められた男が密室から脱出するストーリーは、どう生まれたのですか?

密室って、まずお金がかからなそうじゃないですか。そんなに人数も要らないし、天候に左右されることもないですし、ロケだと雨降られたら終わりやということもあるので、密室って低予算でできるぞっていう取っ掛かりがあったような気がするんですけどね。まあ、お金の面に関しては、少なめに少なめにって言われたことはあんまりないですけど、このご時勢、そんなにたくさんお金も使われへんやろみたいな発想からきていると思います。まあ、映画を撮りだしたら、結局は意外と金が掛かってしまいましたけどね(笑)。

■「ガキの使い」の罰ゲーム以上に過酷だった撮影現場

Q:密室編とメキシコロケ編がパラレルに進みますが、撮影はいかがでしたか?

メキシコの部分に関しては何ってことはないですが、逆劇中劇って僕は言っていますけど、とにかく本当に早くあの部屋から僕自身も抜け出したかったんです。スケジュール的にも大変でしたから、早く出たい早く出たいで、本当に僕自身も頑張っていましたけど、なかなか出られなくて。そういった意味では、僕も映画の中の彼も一緒でしたね。僕がいくつまでこの仕事をやり続けるのか、いくつで死ぬのかはわかりませんが、振り返ったときに結構最初のころに浮かぶ、きつかった仕事の一つでしょうね。

Q:「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」などバラエティーの数々の罰ゲームよりきつかったですか?

いやいや、あんなものじゃなかったですねえ……。っていうか、この映画の撮影をやりながら、「ガキの使い」の罰ゲームもやっていましたから(笑)。だから、もうきつかったですよねえ。

Q:そこまで言わせてしまうほど過酷な撮影だと、思い入れも強くなるのでは?

自分の中でのせめぎ合いみたいなものもあって、大変でしたね。

■次回作の主役はメル・ギブソン!?

Q:この作品には、松本監督の人生観や人生経験が投影されているのでしょうか?

撮影中本当に抜け出したかったっていうのがあったので、自分とダブっている部分はあるでしょうねえ。あるというか、かぶっているという感じで、最後の方ではほとんど一緒になっていましたからねえ。

Q:少年が大人になる過程が描かれた感じもしましたが、ご自身はどんな少年でしたか?

少年時代は、自分のチ○コしか触っていなかったかなぁ(笑)。いや、普通の少年でしたけどね。あの、皆さん深くこの映画を考えてくれるんですけど、それは本当にしてやったりというか、ありがたいというか、本人はそこまで深く考えていなかったりするんですけどね。でも、出来上がってみると、意外とそうなっているというか、後からつじつまが合ってくるというか。2、3割は現場で決めて、編集で1割変えてみたいな。

Q:この先も松本監督流のスタイルを貫いて、映画製作は続きそうですか?

あの、できれば主演を人に振りたいんです。まあ、それはメル・ギブソンが出たいって言うのなら、考えます(笑)。でも、自分はあんまり演出能力が高いタイプではないと思っているので、そうですねえ……。名前のある俳優さんを使うと、僕はどうなのかなぁ? しんどい気はするんですけどね。そう考えると、自分でやった方が楽かなぁと。どっちが楽なのかわからないですね。かなりきついですから。その前に、3本目があるのかどうかも、ほんまにわからないです(笑)。

人生を振り返ったときに最もきつかった仕事の一つと松本監督は表現したが、裏を返せばそこまでしてもやりたかった仕事ということだ。テレビの予算削減や自主規制の影響か、松本監督の笑いや描きたいテーマが楽しめるのは、もはや映画しか残されていないのではないか。そんなことを考えさせられた取材だった。出口を探してもがいている主人公は、松本監督自身なのでは? とすら思える。さまざまな意味に読み取れる、『しんぼる』をぜひ観てほしい。

『しんぼる』は9月12日より全国公開

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