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キム・ヘジャ、ウォンビン単独インタビュー
『母なる証明』
この作品で登場する「母」は、主人公の母親であるのと同時に、
あなたの母親かもしれない
『母なる証明』キム・ヘジャ、ウォンビン単独インタビュー

取材・文:内田涼 写真:高野広美

殺人犯に仕立て上げられた息子の無実を証明するため、真犯人を探し一人奔走する母親の姿をエモーショナルに描いた映画『母なる証明』。純粋無垢(むく)な青年役で、兵役後初、5年ぶりの映画復帰を果たしたウォンビンと、本国で「韓国の母」として絶大な知名度を誇り、この作品では過激なまでの母性で息子を救おうとする女性を体当たりで演じたキム・ヘジャが撮影の舞台裏を語った。

■常に俳優として「これが初めて」という心境で臨む

Q:今回、5年ぶりの俳優復帰を果たしました。俳優としてのカンを取り戻すのに苦労しませんでしたか?

ウォンビン:確かに5年というブランクがあるので、今回の緊張感は相当なものでした。ただ、僕の場合は、どんな現場に臨む際も「これが初めて」という心持ちなんです。おっしゃっている「俳優としてのカン」のようなものは、いまだに僕の中には、明確に存在していなくて。今回、キム・ヘジャ先生やポン・ジュノ監督に本当に助けていただいたので、撮影を乗り切ることができました。

Q:キム・ヘジャさんにとって、今回の映画出演は約10年ぶりだそうですね。

キム・ヘジャ:わたしは長年、テレビドラマの世界でさまざまな母親を演じてきました。そうなると、映画でも同じような役柄ばかりオファーされるんですね。ですから、ありがたいと同時に、それでは映画に出演する意味がないじゃないかと思っていました。今回は同じ母親役ですが、長いキャリアを振り返っても、まったくやったことのない感情表現、例えば、極度の怒り、悲しみ、恐怖といった特別な演技をすることができ、自分自身、新しい発見の連続でした。

Q:大先輩であるキム・ヘジャさんとの共演から学んだことを教えてください。

ウォンビン:本当に多くのことを学べましたね。キム・ヘジャ先生は、数十年間のキャリアをお持ちなのに現場に来ると、まるで新人のような心構えで撮影に臨まれる。リハーサルを何度も何度も重ね、努力される姿を拝見してすごいなと思いました。自分の出番が終わっても、役柄の気持ちを維持しようと、なかなかお帰りにならないこともあったんです。僕にとっては、素晴らしいお手本となっていただきました。

キム・ヘジャ:どんなにキャリアを重ねようと、どんな役を演じてこようと、俳優というものは常に新人のような気持ちになるものなんです。自分が演じる人物は、わたしにとって初対面なわけで、新鮮な気持ちでなければ演技することはできない。きっとみなさんも、初対面の人と会うのは緊張しますよね。その気持ちと同じなんです。

■母という普遍的な存在感を意識

Q:今回演じたトジュンは、子どもの心を持ったままの純粋無垢(むく)な青年という役どころ。非常に複雑で難しい人物像だと感じたのですが。

ウォンビン:今までに演じたことがない人物でしたし、俳優であれば一度は演じてみたいと思う役どころでした。具体的な年齢設定はありませんでしたが、同世代の人たちに比べると、ちょっと「抜けている」部分があって、はたから見ていてもどかしいところがある。何よりも「母親の愛がないと生きていけない存在」です。

Q:演じる上で意識したのは、やはり純粋さ?

ウォンビン:そうですね。ただ、人間の純粋さを表現するのはとても難しいもので、非常に悩みましたね。それと同時に純粋さだけでは、とらえきれない部分もある。最終的には監督と話し合いながら、脚本に忠実に演じようと心がけました。

Q:そんなトジュンを救おうと奔走する母親の姿に圧倒されました。しかも今回、役名はなく、あくまで「母」という普遍的な存在感が要求されていたように思います。

キム・ヘジャ:それこそが監督の意図でした。人間誰しも、母親はいますよね。母親なくして生まれてくる人はいない。この映画が描いている「母」はトジュンの母親であると同時に、わたしの母親かもしれないし、あなたの母親かもしれません。ある意味、象徴的に「母」として存在することを今回は非常に意識しました。

Q:ウォンビンさんが息子を演じたからこそ、強烈な母性が引き出されたのでは?

キム・ヘジャ:まさにその通りです。ウォンビンさんは見ているだけで、はかないというか、思わず手を差し伸べてしまいたくなるんですね。(ウォンビンの方を見つめながら)、あなたが息子を演じてくれたからこそ、母親の過激な行動にも説得力が生まれたし、母子の関係性が効果的に描かれたと思います。自分としては、演技する上でウォンビンさんに本当に助けられました。

ウォンビン:(恐縮した表情で)ありがとうございます。

■ポン・ジュノ監督は演技もうまい?

Q:ポン・ジュノ監督の現場はお二人とも初めてでしたが、率直な感想を教えてください。

ウォンビン:まず驚かされたのは、監督が本当に俳優のことをよく知り尽くしているという点。キム・ヘジャ先生も現場で「監督は演技がとても上手。俳優に転身しても、成功するでしょうね」とおっしゃっていましたよね。とにかく俳優の演技全体を見極めて、うまくリードしてくれる方でした。

キム・ヘジャ:最初から最後まで、素晴らしいの一言でした。とにかくエクセレント! ポン・ジュノ監督の表現は、一瞬一瞬いつも違うんです。これまでのテレビ、映画の仕事を振り返っても、他の人とはまったく違うし、本当に素晴らしいと思いました。

Q:監督に「自分を極限まで追い込んでほしい」とお願いしたというのは本当ですか?

キム・ヘジャ:先ほども申し上げましたが、今回はとにかく新しい挑戦をしたかったんですね。監督もそのことを理解してくれて、最初の撮影シーンからいきなり十数テイク撮ったんです。クライマックスのシーンも同じくらい、時間がかかったんじゃないかしら。苦労したシーンは数えきれませんが、どれも素晴らしい体験でした。

Q:改めて、この作品をどのようにとらえていますか?

キム・ヘジャ:一言では言い表せないですね。ジャンル分けできる作品ではないし……あくまで母親の止められない愛情を描いた作品としか言えない、いろいろな要素を含んだ総合体のようなものだと思います。

ウォンビン:監督やプロデューサーは冗談っぽく「これは農村スリラーだ」って言っていましたけど、キム・ヘジャ先生のお言葉通り、なかなか簡単には説明できない作品です。ただ自分にとって、俳優として新たなステップになったことは間違いありません。ぜひ、日本のみなさんにも楽しんでいただきたいと思います。

目の前に現れたウォンビンとキム・ヘジャのツーショットは、まるで映画の世界から飛び出してきたような、本物の母子そのままに見える。と同時に、プロフェッショナルとして互いを尊敬し、刺激し合った関係であることがはっきりと感じ取れた。世界が注目するポン・ジュノ監督が、初めて真正面から母性と向き合った映画『母なる証明』は、韓国を代表する2人のスター俳優が、新たなステップを踏み出そうと果敢にチャレンジした証しでもある。

映画『母なる証明』はシネマライズ、シネスイッチ銀座、新宿バルト9ほかにて全国公開中

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