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中山美穂
『サヨナライツカ』
決めたことは突き進み、どこまでも完ぺきにやり遂げたい
『サヨナライツカ』中山美穂 単独インタビュー

取材・文:金子裕子 写真:尾藤能暢

美しいタイを舞台に、25年にわたる壮大な愛を描いた辻仁成のベストセラー小説『サヨナライツカ』が、『私の頭の中の消しゴム』のイ・ジェハン監督によって映画化された。ヒロインの沓子(とうこ)を演じるのは、辻氏の夫人でもある中山美穂。12年ぶりにスクリーンに復活した彼女に、撮影の裏話を聞いた。

■作品との運命的な出会い

Q:12年ぶりの映画出演の感想は?

まず、最初に、「12年ぶり」という言葉を耳にすると、わたし自身としては「ああ、そうなのかぁ」という思いだけで、あまり感慨はないんです。でも、観る方にはそれによって大きな期待を抱かれてしまうでしょうから。それでプレッシャーはありました。

Q:いわば女優業を封印していたわけですが、その封印を破ってまで出演した理由は?

タイミングというのが、一番大きかったと思います。この作品のお話は10年ほど前に一度あったのですが、今回改めてイ・ジェハン監督が映画化するということになり、お話をいただき、そこでかつての思いがよみがえり、演じたいと思いました。もう一つは、やはりジェハン監督と一緒にお仕事したいという強い思いです。とにかく、この作品との出会いは運命なんです。

Q:沓子は、どんな女性ですか?

彼女には共感するというか。一人の人をずっと愛し抜くということの強さ、そしてあの自由奔放さにもあこがれますね。わたし自身とは、全然違います。わたしは、25年間も待っていられないですもの(笑)。たぶん、思いは心の奥に残して、新しい人生を進むんじゃないかなぁ……。

■監督のこだわりに翻弄(ほんろう)されて……

Q:相手役の豊を演じた西島秀俊さんは、イ・ジェハン監督を「完ぺき主義者で、狂気の人」と言っていますが、中山さんは?

まさにその通りです。とてもこだわりのある方で、そのこだわりに付き合っていると、時間もかかるし、肉体的にもハードだし。本当に大変なんです。でも、普通だったら「ノー!」と言うところを、結局はやってしまった勢いやエネルギーは、やはりジェハン監督だからこそです。今にして思えば、そうでなければ監督はできないでしょうし、良い作品も生まれないんですよね。

Q:一番大変だと思ったことは?

たくさんありますよ(笑)。例えば、老けメイクをして現在を撮って、すぐにメイクを落として若いころを撮るといったことが1日のうちに何度か繰り返されるとか。スタンバイをして何時間も待っているのに、急に「今日は、やめ」と言われたときは、本当につらかったですね。でも、監督は自分のモチベーションをすごく大切にして撮る方なので……。正直、最初は泣いてしまうほど残念だったり、悔しかったりしましたが、不思議なことに、だんだん慣れてくるんです。最初の方でこそどこか翻弄(ほんろう)されている感じがあったのですが、途中からは、朝まで撮影が続いても何とも思いませんでした。

■西島さんの淡々とした演技に感動

Q:沓子はタイのザ・オリエンタル バンコクのVIPルームに暮らすミステリアスな女性。そんな彼女が、赴任してきた航空会社の社員・豊とめくるめく恋に落ちる物語。ハードなラブシーンに戸惑いはありましたか?

決めたことは突き進み、どこまでも完ぺきにやり遂げたいというのが、わたしの性格なんです。ラブシーンがあることも最初からわかっていて、撮影前に心の準備はしてありました。ですから、現場では何のためらいもなく、監督に言われるがままでした(笑)。

Q:実際の撮影で苦労したことは?

いろいろパターンの違うラブシーンがあって、それぞれきれいに、幻想的に撮ってくださった監督には感謝しています。やはり、きれいに撮られるのって、うれしいじゃないですか。でも実際の撮影の現場は、すごくリアルで全然ロマンチックじゃないんです。監督のこだわりで、足の角度は絶対にこうで、手はこっちというのがあって。その条件をすべて成立させて演じようとすると、とんでもないことになっちゃうんです(笑)。

Q:豊を演じた西島秀俊さんとのコラボは?

撮影前に役についてや、撮るシーンの話をあれこれするんですけど、いつも「大丈夫ですよ、美穂さん。何とかなりますよ」とおっしゃっていただいて、安心させられたことがたくさんありました。演技については、沓子は感情の起伏が激しい女性なので、わたしもそのように心の準備をしていたのですが、西島さんは本当に淡々とした演技をされる方でした。これでいいのかなぁと思ったこともありましたが、完成品を観たときに、あの淡々とした豊の存在によって、沓子とのバランスがうまく取れていることに気付いて、うまいなぁと感動しました。

■多彩なファッションを楽しんで

Q:美しいタイの独特な風景にマッチした沓子の多彩なファッションも見どころですが?

ある意味、キャラクターや時代にこだわらず、いろいろなファッションができたことは、楽しかったですね。衣装デザイナーのキム・ソンウィルさんの才能は、すごいと思いました。とくに70年代の時代考証にこだわって作ってはいないですが、その中にちょっとした時代性とエレガントさを込めて。監督のこだわりで、急きょ作られたウエディングドレスも、淡いパープルのすそ飾りのあるマーメード・ラインのワンピースも、気に入っています。90パーセント以上の衣装がオリジナルで作られているのも、すごいですよね。

Q:長期のタイ・ロケには、息子さんも同伴されたそうですね。

最初のうちは、主人に来てもらって息子の面倒を見てもらっていました。でも、あまりに長いので、途中で二人は日本に帰って。その後は、わたし一人で過ごしていました。

Q:ロマンチックなラブシーンを撮影した直後に、息子さんのいる現実に戻る。その気持ちの切り替えが、大変だったのでは?

昔のわたしだったら、ありえないシチュエーションですよね。大変過ぎて、混乱してしまったと思います。でも、今回はすんなりと切り替えられました。たぶん、目の前に飛び込んでくる世界で、パンと切り替わる術を知らず知らずに覚えてきてるんでしょうね。日常の、訓練でしょうか(笑)。

カラフルなワンピースをエレガントに着こなした姿は、演じた沓子がスクリーンから抜け出してきたかのような中山。もちろん、中山自身も長年「演じたいと!」願ってきた本作だけに、臆(おく)することなく大胆なラブシーンも披露して演技派の貫禄(かんろく)。まずは12年のブランクを感じさせることなく熱演した運命の愛に、酔ってほしい。

映画『サヨナライツカ』は1月23日より新宿バルト9、丸の内TOEI2ほか全国公開

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