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加瀬亮、蒼井優
『おとうと』
どんなことがあっても自分の人生を生き切ればいい
『おとうと』蒼井優&加瀬亮 単独インタビュー

取材・文:斉藤由紀子 写真:吉岡希鼓斗

吉永小百合と笑福亭鶴瓶を主演に迎え、しっかり者の姉とダメな弟とのきずなを人情味たっぷりに描いた映画『おとうと』。山田洋次監督の10年ぶりの現代劇としても話題の本作で、吉永ふんするヒロイン吟子の一人娘で薬剤師の小春を演じた蒼井優と、小春の幼なじみで大工の享を演じた加瀬亮が、山田監督ならではの演出方法や、恋人同士を演じる上で大変だったことなど、作品にまつわるエピソードを熱く語った。

■山田学校に入学したピカピカの1年生

Q:お二人とも山田洋次監督の作品は初めてですが、参加していかがでしたか?

蒼井:もともと山田監督のファンだったので、自分の大好きな監督が、あこがれの役者さんたちに演出されているのを見て、「何て幸せなんだろう!」って思いました。自分の出番がないときも休憩するのがもったいなくて、しっかり体育座りで見学させてもらいました。毎日が感動や衝撃の連続で、家に帰るころにはグッタリしていましたね(笑)。

加瀬:山田監督は人としての器が大きい方で、僕の存在をそのまま受け止めてくれるんです。一緒にいると発見することも多いし、現場で怒られたとしても全然不快ではなくて、逆に気持ちがいい。同世代の監督とは、作品について一緒に考えたり、意見のぶつかり合いでケンカをしたりもしますけど、山田監督は教えていただく先生のような感じでした。

Q:山田監督の要求は厳しいというイメージがありますが?

加瀬:僕も最初はそう思っていたんですけど、実際はそんなことなかったです。厳しいというよりも、よく見てくださっていると言う感じですね。監督がセリフのトーンや小さなしぐさまで細かく指導してくださるので、それをやってみると自分でも思っていなかった気持良さがあった気がします。

蒼井:山田監督の作品には確立された世界があって、セリフや表現に独特の「山田節」があるんです。わたしも、いつものお芝居とはまったく違う山田節に挑戦しなければならなくて、「どうしよう……」って思うことが多かったんです。でも、加瀬さんも同じように悩んでいたので、ちょっと安心しました(笑)。わたしたち、監督の現場を「山田学校」と呼んでいたんですけど、二人とも山田学校の1年生だったので、加瀬さんがいてくれてすごく心強かったです!

加瀬:僕も、何度も共演して信頼している蒼井さんと一緒に学べて良かったです(笑)。

■告白シーンで思わず笑ってしまった!

Q:蒼井さんは、バツイチの出戻り娘の小春を魅力的に演じられていましたね。

蒼井:小春はすごく子どもっぽい女性なんです。初めは自分が薬剤師ということもあって、お医者さんに惹(ひ)かれるんだけど、いざ結婚してみたら彼に気を使い続ける自分がつらくなってしまった。そして離婚して実家に戻ったら、自然体でいられる幼なじみの享が現れて、まさに「灯台もと暗し」(笑)。現実ってこういうものかもしれないと思いましたね。

Q:享を演じた加瀬さんも、朴訥(ぼくとつ)な大工さんの役がよくお似合いでした。

加瀬:享のモデルは山田監督のお知り合いの大工さんなんです。その方の写真を見せていただいたときに受けた真っすぐさとか、裏表のなさそうな雰囲気から影響されて演じました。でも、友達から恋愛に発展していく享と小春のような関係は、よく知っている蒼井さんが相手なだけに、かなりテレくさかったです(笑)。

蒼井:わたしも、享が小春に告白するシーンで吹き出してしまったんです!

加瀬:ひどいよ(笑)。

蒼井:加瀬さんはどんな場面もごく自然に演じるタイプなんですよね。そんな彼が、告白がうまくいったあとに「やったぜ!」って言うんですよ! 一体どんな風になるんだろう? と思っていたら、リハーサルではすごくテレくさそうだったので、思わず笑ってしまったんです。でも、山田監督が「もっと大きく言ってください」とおっしゃったので、本番では大きな声で、顔を赤くしながら言ったんですね。そしたら、何だかジーンと泣けてきてしまって……。加瀬さんも監督もすごいと思い、初めに笑ったことを反省してしまいました。

Q:そんな小春がとても愛らしかったのですが、普段の蒼井さんも小春のような方なんじゃないですか?

加瀬:いや、小春とは全然違います! これ以上は言えませんが(笑)。

蒼井:そう言う加瀬さんも、享とはだいぶ違います(笑)。山田監督の映画に出てくる人物って、「こんな人が本当にいてくれたらいい」って思うことが多いんですよね。どこかファンタジーのようでありながら、人ごととは思えなくて、観る人の共感を誘う。だから監督の作品が好きなんです。

■鶴瓶と蒼井が、吉永小百合を取り合ってバトルに!?

Q:吉永小百合さんや鶴瓶さんと共演した感想を教えてください。

蒼井:吉永小百合さんは本当にステキな方で、いつもわたしと鶴瓶さんで吉永さんを取り合っていました(笑)。鶴瓶さんは、自分の方が吉永さんに気に入られようとして、「こいつがこんなこと言いよった!」とか、あることないこと言いつけて、わたしをおとしめようとするんです(笑)。もちろん、そんな鶴瓶さんもステキな方です!

加瀬:吉永さんも鶴瓶さんも、役者以前に人としての魅力がすごくありますよね。二人とも驚くほど周りに気を配ってくださるし、とても謙虚。吉永さんはあんなにキャリアがあるのに、姿勢はまるで新人のようで、こちらが背筋を伸ばさなくちゃいけないくらいでした。鶴瓶さんは本当に楽しい方で、現場でもみんなを楽しませてくれました。

蒼井:鶴瓶さんが演じた鉄郎叔父さんも、すごく面白かったですよね。でも、小春の最初の結婚式のシーンは、演じていてつらかったです。今から二人の生活がスタートするのに、鉄郎叔父さんが会場で大暴れして……。鶴瓶さんが面白ければ面白いほど、胃が痛くなってしまいました(笑)。

Q:小春と鉄郎との関係も、この作品の中で重要な意味を持ちますよね。

蒼井:初めに台本を読んだときは、小春の心情の変化があまりにも急過ぎて、どう表現すればいいか戸惑ってしまったんです。鉄郎叔父さんのことをあんなに嫌がっていたのに、最後は叔父さんのためにわざわざ大阪に行ったりして。でも、演じているうちに、これは家族の中で成長していく物語だから、それでいいんだろうと思いました。学校や会社など、ほかのコミュニティーでは成立しないかもしれないけど、家族の前だから恥じらいもないし、急に意見を変えたりもする。山田監督はそれをわかっていたんでしょうね。

■家族の大切さを感じてほしい

Q:加瀬さんにも弟さんがいらっしゃるそうですが、本作の鉄郎のように世話を焼かされたことや、弟がいてよかったなと思ったことはありますか?

加瀬:小さいころは仲が良かったんですけど、中学や高校のころはよくケンカをしました。でも、お互い社会に出てからの方が対等に話せるようになりましたね。それまでは、僕が弟の面倒を見ていた部分もあるし……今の方が自然な関係だと思います。好きなところも嫌いなところもあるけど、「家族なんだから仕方がない」っていう感じですね。

Q:家族のあり方や人生の最期をどう迎えるべきなのかなど、いろいろと考えさせられる作品でした。お二人はどんなメッセージを感じましたか?

加瀬:ラストシーンの吉永さんの背中を見たときに、ちゃんと自分の周りで起こったことを受け入れて、どんなことがあっても自分の人生を生き切ればいいんだと思いました。寒い時期に公開されるのですが、本当に心が温まる映画です。ぜひご家族で観てほしいと思います。

蒼井:映画を観てくれた人から、「田舎の両親に連絡を取りたくなった」って言われることが多いんです。わたしも、家族の大切さを改めて感じました。だから、最近、家族に連絡していない人や、家族の存在が当たり前になってしまっている人に観てもらいたいです。遠くにいる息子さんや娘さんに、ご両親からこの映画のチケットをプレゼントしてもいいかもしれません。家族のつながりができるキッカケになったらうれしいです。

山田監督に心底敬服している様子の蒼井と加瀬。そんな二人も、本作が3度目の共演というだけに、お互いをよく理解し、リスペクトし合っていることが伝わってきた。共に「若手の演技派」と呼ばれる蒼井と加瀬だが、山田学校で多くを学んだことで、役者としての幅を大きく広げたに違いない。テレくさかったと言いながらも、息の合った芝居を繰り広げる二人の渾身(こんしん)の山田節を、ぜひともスクリーンで味わってほしい。

(C) 2010 「おとうと」製作委員会

映画『おとうと』は1月30日より全国公開

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