シネマトゥデイ

渡部篤郎、高岡早紀
『コトバのない冬』
思い入れのある現場は、映画を素晴らしいものにする
『コトバのない冬』渡部篤郎、高岡早紀 単独インタビュー

取材・文:シネマトゥデイ 写真:尾藤能暢

俳優として多方面で活躍している渡部篤郎が、今から6年前にメガホンを取った映画『コトバのない冬』がいよいよ公開。ワンシーン、ワンカット、NGなしという独特な手法で撮り上げた本作は、日常の断片を切り取った、切ないラブストーリーだ。渡部が演じるコトバを話さない青年と惹(ひ)かれ合う主人公を演じたのは、女優の高岡早紀。2年前に東京国際映画祭で上映されたほか、海外での映画祭でも絶賛された本作への思いを、渡部監督、そして高岡に語ってもらった。

■現場では、監督自身が雪かき!

Q:映画が出来上がって6年の間に、世界中を映画が旅した感じがしますね。

渡部:そうですね。黒澤明監督の言葉のとおり「映画は世界の広場」ってことを実感しました。

Q:そして6年目でついに日本で映画が公開されるわけですが、公開が決まったときのお気持ちを聞かせてください

高岡:自分でも撮影から6年たっているっていう実感がないんです。6年たってようやく皆さんに観ていただけるチャンスがきたということは、すごくうれしいです。わたしは撮影の間もずっと渡部さんが頑張っている姿を観てきたので、「おめでとう!」って心から言いたいですね。

Q:現場で渡部さんが頑張っている姿とは?

高岡:一番率先して雪かきをしていたりとか(笑)。だって、こんな感じ(渡部の着ている服を指して)で行ってたんですよ! わたしが「その下、何か履いているんですか?」って聞いたら、「何も。これ一枚だよ」って! もうズボンの下にタイツも履かずに一生懸命雪かきしてるんです。そういう姿を見ちゃったら、「この監督のために頑張ろう」って気持ちになりますよね。

渡部:ありがとうございます(笑)。でも雪かきしなければ撮影できませんでしたし……。当たり前のことをしただけです。

高岡:だって渡部さん、北海道まで車で行ったんですよ! 

Q:北海道までですか!? 

渡部:自走といっても、仙台まで車で行って、そこからフェリーに乗って撮影現場に行っただけですよ。本当に、インディーズ映画ですね(笑)。

高岡:そうですね。本当にすごいです!

■俳優の立場として、俳優が持つ技術は良くわかっている(渡部)

Q:話は戻りますが、この作品は、ワンシーン、ワンカット、それもNGなしという条件のもとで製作されたんですよね? 

高岡:だって、カメラを止めないんですよ。ずっと(笑)! 監督がカメラを止めないってことは、こっちも演技をし続けなければいけないじゃないですか。だからやるしかなくて。やっと止めたと思ったら、「あ、ごめんなさい。テープが切れました」って(笑)。

渡部:助監督の経験はありませんが、自分自身役者の立場として、役者が持つ技術はわかっているつもりです。だからこそ、こういう形で撮ることを決断できたと思います。

高岡:怖いよね~(笑)!

渡部:信頼していますから(笑)。役者をやっている僕が映画を撮るなら、この方法だったんですよね。これはクセになりますね。

Q:まるでドキュメンタリー映画を観ているようでした。キャストの方々全員が、リアルな演技をされていましたね。

渡部:この映画に出演していただいた役者の皆さんは、力があるんです。それは役者としての技術だけではなく、人間としての魅力があるんです。生きてきた中で、いろんなことを経験し、吸収して、感じてきた方々だからこそ、こういうことができる。力がない人に演技してくださいって言っても、ここまでの深さは出てこないと思うんですよね。

■ワンシーン、ワンカット、NGなしでもあっさり了承!?

Q:高岡さんのキャスティングは、どのようにして決まったんですか?

渡部:高岡さんとは、デビュー当時からずっと親しくさせていただいていて。これほど力のある女優さんはほかにいません。高岡さんしかいなかったですね。

高岡:ありがとうございます!

Q:デビュー当時から、というとお二人が初めてお会いになったのはいつごろですか? そのときのこと、覚えていらっしゃいますか?

渡部:1991年かなあ。あんまりよく覚えてないんですけど、そのときにドラマで共演したのが最初ですね。

高岡:わたし、そのとき18歳でした!

渡部:高岡さんが、高校を卒業した次の日に製作発表があったんですよ。

高岡:え、本当に!? わたしが高校卒業した次の日だったの? 今初めて聞きました(笑)。

渡部:製作発表で会ったとき、「昨日、高校を卒業してきました」と言っていたの覚えています。

Q:そのときから、もう20年近くたっていますが、当時の印象は覚えていますか?

渡部:はい。一番最初に親しくさせていただいたビッグネームなので(笑)。

高岡:渡部さんは、そのころから夢を語っていましたよね。でもそれを着実に実現させているからすごいと思うんです。若いころって、大きな夢を語っても、それを現実させることは、なかなかできないと思うんです。だからこそ、渡部さんは素晴らしいと思います。

Q:それで、高岡さん自身も「渡部さんの夢の実現のためなら……」って思ったんでしょうか。

高岡:そうですね。最初にこのお話をいただいたのは、雑談していたときだったんです。もちろん、OKしました!

渡部:もう直談判ですよね(笑)。

Q:条件がワンシーン、ワンカット、NGなしって、すごく勇気が要りますよね。

高岡:最初にお話をいただいたときの条件には、なかったんですよ。撮影が始まるときになって、渡部さんが「ワンシーン、ワンカット、NGなしでやりたい」とおっしゃって(笑)。

渡部:ここが高岡さんのすごいところだと思います。もし僕が、現場入って同じように「ワンシーン、ワンカット、NGなし」って言われたら……、たぶん文句言っていますよ(笑)。でも、すぐに「はい、わかりました」と受け止めてくれました。

高岡:女性は、あまり先を考えないんですよ。「なるようにしかならない」って思いません? あれ、わたしだけかな(笑)。その条件で演技がちゃんとできたときはうれしいですし、もしできなかったら、それはそれで仕方がないと思いますね。

■映画は「どう作るか」が重要!

Q:撮影で大変だったことといえば、何でしょう?

二人同時に:寒い!(笑)

渡部:ちょうど真冬の北海道だったので、本当に寒かったです。大雪でしたね。

Q:景色がとてもきれいでしたね。

渡部:北海道の由仁町というところで撮影をしました。ここは僕がすごく思い入れのある場所で、撮影で北海道に行くときは必ず立ち寄るところなんです。もともとこの企画も、由仁町で食べるご飯がすごくおいしくて、「みんなを連れて行きたい!」というところから始まったくらいですからね。

高岡:今回の撮影で、渡部さんが北海道をロケ地に選んだ理由が、よくわかりましたね。ご飯はおいしいし、北海道の皆さんもとても温かいし、温泉もあるし(笑)。本当にいい現場でしたね。

渡部:僕が過酷な現場が嫌いなので(笑)。皆さんで鍋を囲み、温泉に入って夜はゆっくり過ごす……。いい現場を作ることは、とても大切なことだと考えました。思い入れのある現場は、作品を素晴らしいものにすると思います。もちろんストーリーも大事ですが、「どう作るか」ということが重要だと思うんですよね。これからどう映画と向き合うか考えたとき、この経験はとても貴重だったと思います。

Q:最後に、この作品の魅力を教えてください

高岡:渡部さんのステキなところが、たくさん詰まっている映画です。温かい空気にどっぷりハマッてもらえたらいいですね。観ているだけで、すごく温かくなれる映画なので、ぜひたくさんの方に観ていただきたいです。

渡部:出演していただいている方々が素晴らしいです。こう観てくださいってことは、僕からは言いません。ただ、日常の中に大切なものがあるということを伝えたかった。こういう時代、こんな素朴な作品もいいんじゃないかなって思います。

渡部と高岡は、監督と女優でもなく、共演者同士でもなく、紛れもない信頼関係で結ばれていた。それはデビュー当時からお互いを知っているからこそ、生まれるものだろう。渡部は高岡に絶大な信頼を寄せ、高岡もまた、渡部の才能に身を任せた……それは映画の中からも伝わってくる。役者としての経験から、俳優が一番欲するものや、限りない才能を理解している渡部。役者にしか持ち得ない、演技に対するこだわりと自信が、キャストからここまでの最高の演技を引き出すことができたのに違いない。そんな彼が監督としての才能を開花させた本作を、ぜひ劇場で確認してほしい。

映画『コトバのない冬』は2月20日より渋谷ユーロスペースほかにて全国公開

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