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北川景子
『花のあと』
新しいことに挑戦することが、怖くなくなった
映画『花のあと』北川景子 単独インタビュー

取材・文:鴇田崇 写真:吉岡希鼓斗

映画『たそがれ清兵衛』『武士の一分(いちぶん)』『山桜』など、数々の時代劇作品の原作者として知られる藤沢周平の同名小説「花のあと」が、また一つの映画になった。思いを寄せた武士が非業の死を遂げ、その敵討ちを誓う剣の達人の主人公を演じるのは、若手女優の北川景子。初挑戦の時代劇で殺陣に挑み、主人公・以登(いと)の姿を通じて日本女性の美しさを知り、仕事に対するスタンスが変わり、女優として大きな飛躍を遂げたと語る北川が、さまざまな話をしてくれた。

■普段食事をしていても時代劇の所作が!?

Q:本作に出られるにあたって、ご自身としてはどのような作品にしたいと思いましたか?

今回のオファーをいただく前から純粋に時代劇をやりたいと思っていましたし、初めての時代劇作品が藤沢周平さんの作品ということもすごくうれしかったです。最初に考えたことは、藤沢作品ファンの方たちに納得してもらえるような作品にしたいということでした。あと、時代劇が苦手と感じているような若い人たちにも観てもらえる作品になったらいいと思っていました。

Q:初挑戦ということで、現代劇で培ったノウハウが通じない! と思った瞬間はありましたか?

そうですね。動きに制約があったことが、まず一番大きかったですね。着物を着ているので、ただお茶を飲みながら話すことだけでも難しかったりしました。現代劇の場合は、普段と同じようにしていればいいこともありますが、時代劇の場合は、湯飲み茶碗の持ち方やふすまの開け閉めまで決まっていたので、そのことを頭の中で整理しながら考えて演技をする必要がありました。

Q:いわゆる所作と呼ばれるものですね。半年間ぐらい練習されたそうで、日常にも出そうですね。

そうですね。時代劇の所作や殺陣などを半年間ぐらいけいこしました。はしの持ち方などは、普段食事をしていているときにもできるようになっていました。日常生活に影響していましたね(笑)。

■自由恋愛禁止の江戸時代について

Q:本作は、映画人なら誰もがあこがれる藤沢周平原作作品ですが、改めてその魅力はどこにあると思いますか?

藤沢さんの作品をすべて読んだわけではないですが、いわゆる歴史ものというよりは、日本の美しさである風景や季節、言葉に出さなくても相手のことを思っているような昔の日本人の心など、そういう内側の美しさを丁寧に描いている作品だと、以登という女性を演じて思いました。

Q:特に今回は主人公の以登が敵討ちを果たそうとします。彼女の行動をどう受け止めましたか?

一度、孫四郎と剣の試合をして、そこで好きになる。一目ぼれで、会ってすぐ恋に落ちるという気持ちに共感しました。というのは、あの時代のいいなずけは両親が決めるだろうし、自由な恋愛ができない時代。その中で、さらに身分などがあって、特に女性は男の人に比べて、できることが少なかった。でも、孫四郎は女性ということで見下すことをせず、本気で打ち合ってくれますよね。それが当時の女性にとってはうれしいことだったと思いますし、衝撃的だったと思います。

Q:親が決めた相手と結婚するなど、自由恋愛じゃなかった江戸時代で暮らすことはあり得ないですか?

親が決めて、その上一度も会ったことがない人と結婚することは……ちょっと厳しいですね(笑)。たまたま以登のいいなずけ(片桐才助)はいい人だったから良かったですが、そうじゃなかったらと思うと、現代に生きている感覚で考えると怖いですよね(笑)。

Q:北川さんのあこがれの男性は、ショーン・ペンやダスティン・ホフマンだそうですね。

ショーン・ペンさんやダスティン・ホフマンさんの演技が好きという意味です(笑)。ショーン・ペンさんは悪そうな感じがして、彼自身のそういうところも好きですけどね。父親になっているのに、昔の悪さを忘れていないとか、ちょっと悪な親父役が似合うので、好きですね。映画『ミステック・リバー』のキャラクターとか(笑)。そういうキャラクターを演じている姿を観ることが好きですね。

■現代人にないのは耐える力

Q:あの時代の女性にあって、今の女性にないものは何でしょう?

耐えること、耐えられる力があることかなと思います。以登はとてもつらいことがあっても、簡単には人に相談しないタイプだと思います。自分の中でどうしようか考えて、決めて、消化してしまう。現代だと、すぐに友達に相談してしまうのではないかと思います。電話もメールもあるし、声をひそめて会話する必要もないですよね。困ったことがあっても、今は人に頼れる環境がある。自分で何とかするためにひたすら頑張って耐える精神が、女性に限らず、昔の人々にはあったと思います。

Q:もし、解決が難しい悩みごとがあった場合に、北川さんはどちらの時代の女性に近いですか?

わたしは、仕事の相談は、誰にもしないです。そもそも、相談してもわかってもらえない話が多いような気がするので、最初からあきらめている部分もありますけれどね(笑)。でも、親には心配をかけたくないし、友達と話しているときにも、わざわざ仕事の話を持ち出したくないですし。結局、カメラの前に立つのは自分一人だけなので、自分で悩み、解決するしかないんです。

Q:映画『ハンサム★スーツ』のころ、女優を続けていくかどうか考えているという記事を読みました。

はい。でも、今はその考えはないですね。わたしは就職活動をしないで大学を卒業しましたし、もう逃げ場がなくなった今では、この仕事で食べていくしかないと思っているので(笑)。できればずっと役者を続けていけたらいいと思っています。仕事があること自体が、現在のモチベーション、原動力になっています。働けることが、今は一番楽しいです。日々充実しています。

■不安がなくなり、今はとにかく演技がしたい!

Q:本作に出会ったことで、得たものが多そうですが、ご自身の最大の変化は何でしたか?

仕事に対する恐怖がなくなったということが、一番大きかったですね。今までは毎回違ったものをお客さんに見せたいという気持ちで出る作品を選んでいたので、結果、初挑戦の連続でした。だから、クランクインの前は、いつも不安で怖かったんです。例えば、いつも元気な女の子の役が多かったのに、今回はおとなしい役ができるのかなとか、不安に思いながら演じていました。今回初めて時代劇に触れて、殺陣や所作などの練習期間が多かったことも大きく影響していると思いますが、頑張ってできないことはないと思えるようになったんです。何か新しいことに挑戦することが、怖くなくなったんです。だから、この後の作品の話ですが、バイオリンも弾けるようになったのだと思いますけどね(笑)。

Q:新しいことに挑戦する不安が消えた女優・北川景子は今後どういうふうに変わっていきますか?

ずっと演技ができる場所があればいいなと思いますが、いろいろなことに挑戦したい気持ちが強くなっているので、どんどん新しい自分を見せ続けたいです。今の希望はとにかくそれだけです。

大学を卒業して女優に専念する環境が整った北川は、「今は仕事が楽しい。しばらくは働きまくりです!」と改めて女優業への決意を表明。本作を経て、岡田将生と恋人役で共演する『瞬 またたき』の公開も初夏に決定した。若手人気女優にオフタイムはしばらく訪れることはなさそうだ。

映画『花のあと』は3月13日より全国公開

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