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ティム・バートン、ミア・ワシコウスカ
『アリス・イン・ワンダーランド』
迷ったときは「なぜこの仕事が好きなのか」を自問する
『アリス・イン・ワンダーランド』ティム・バートン監督、ミア・ワシコウスカ 単独インタビュー

取材・文:斉藤博昭&鴇田崇 編集:シネマトゥデイ

ジョニー・デップとティム・バートン監督の7度目のコラボレーション作品として、すでに世界41か国でオープニング興行記録を塗り替えている『アリス・イン・ワンダーランド』。誰もが知る「不思議の国のアリス」のアリスを主人公に、成長したアリスのその後の冒険を完全オリジナルストーリーで映像化したファンタジー超大作だ。持てるイマジネーションを爆発させ、未知なる映像世界を創り出したバートン監督と、アリス役に大抜てきされたオーストラリア出身の新生ミア・ワシコウスカに、有名原作を映画化することについて、一緒に仕事をしてみた感想や、ジョニー・デップの話題まで、さまざまなテーマで聞いた。

■アリスで「夢の探求」をしたかった

Q:原作はあまりにも有名ですが、あえて「アリス」の世界を映画にしようと思った理由から聞かせてください。

ティム・バートン(以下、バートン):「アリス」にまつわる映画は過去に何作かあったが、多くの人に愛される特定のアリス映画は、まだ存在してないと思っていたんだ。映画だけでなく、音楽や歌、イラストや文学、彫刻などで、アーティストたちがさまざまなアリス像を作ってきた。「アリス」は、一つのカルチャーになっていると言っていい。つまりオープンな領域だと感じたので、決定版を作るプレッシャーもなかった。

Q:もともとルイス・キャロルの原作は、いつごろ読まれたのですか?

バートン:僕が育った(カリフォルニアの)バーバンクは、ルイス・キャロルの原作が本屋に置かれているような土地柄じゃなくて(笑)、子ども時代に原作を読んだ記憶がないんだ。でも多くの人がそうなんじゃないかな? 「原作を読んだ記憶はないけど、『アリス』のキャラクターならいろいろ知っている」というふうにね。

Q:出来上がった映画は、すっかりティム・バートン監督の世界になっていて驚きました。夢の中にカメラを据えたようでしたね。

バートン:それこそが僕のやりたいことの一つだった。キャロルの原作から受けたインスピレーションは、夢の探求だったからね。人は、現実や人生の問題に対処するため、自分が見た夢や、空想の世界を探ったりする。実際のところ、現実と夢は絡み合っていると僕は思うんだ。キャロルも、そのあたりを美しく、暗号めいたスタイルで表現したんじゃないかな?

■バートン監督の頭の中は、イマジネーションの洪水!?

Q:子どものころからティム・バートン監督の熱心なファンだったそうですね。

ミア・ワシコウスカ(以下、ミア):あえて挙げるなら『シザーハンズ』『エド・ウッド』『ティム・バートンのコープスブライド』などがお気に入りだけれど、そのほかの作品も独特な世界観が大好きなの。バートン監督は独自の視点で世界を見ていると思うし、それと同時に自分の経験などを、映画を通じて伝えることにオリジナルの手法を使っているわ。それは、バートン監督特有のものだけれど、多くの観客たちがその考え方を理解して、広く共感しているわよね。そこがバートン監督の素晴らしさだと思うの。

Q:今回一緒に仕事をして、それまでのバートン監督のイメージと違ったところはありましたか?

ミア:違っていたというより、バートン監督との仕事で一番楽しかったことは、とてつもないハイスピードで頭の中にいろいろなアイデアが渦巻いていると思うけれど、それが目に見えるような気がしたことね(笑)。バートン監督はアイデアを途切れなく、まるであふれるように出し続けていたわ。スピードが全身からあふれ出ている感じよね。とはいえ、バートン監督の演出はとてもシンプルなの。とてもわかりやすくて、それは楽だったし、演技の経験が少ないわたしをすごく信頼してくれていることがうれしかったわ。

Q:「不思議の国のアリス」の映画化とはいえ、物語はオリジナルになっています。原作のキャラクターを当てはめるのに苦心したのではないですか?

バートン:過去の映画化作品は、原作を忠実にフォローしたから苦労したのだと考えた。だから脚本のリンダ・ウールヴァートンが作った物語の構造に対し、僕がふさわしいキャラクターを織り込んでいったのさ。ちなみに原作で印象的なセイウチのキャラクターなんかは、壁に掛かった絵だけの登場になったよ(笑)。

Q:そして主人公のアリスは、ほとんど無名のミア・ワシコウスカが演じています。これは大抜てきですね。

バートン:かなり手を広げて探したが、ミアに会った時点で決まったと言っていい。まだスターでない点が良かったし、何より彼女は年齢の割に成熟した内面の持ち主なんだ。これまでのアリスのイメージは、ちょっとむっつりした用心深い子どもだったよね? そのまま映画化すると、観客も戸惑うと思ったのさ。

■名作から影響を受けていた10代

Q:そもそも、女優を目指したきっかけは?

ミア:女優を目指すことになった特定の出来事はないけれど、14~15歳ぐらいの時期にすごく映画に興味を持つようになったの。その当時、映画をよく観ていて思ったことは、映画に影響を受けている自分がいるということだったわ。特定の俳優、特定の物語に、すごく影響を受けている自分がいて、いつかはその仕事に携われればいいなと漠然と思っていたのよ。

Q:自分に強烈な影響を与えた作品はありますか?

ミア:クシシュトフ・キエシロフスキー監督の『トリコロール/青の愛』かしら。赤の愛、白の愛の3本全部を観て、一番良かったわ。この映画は、母が教えてくれたの。キエシロフスキー監督はポーランド出身で、母もポーランド出身なのよ。10代だった当時、母が古いオーストラリアの映画を観せてくれるようになって、そこから多大な影響を受けているところはあると思うわ。

Q:『アバター』の大ヒットで3Dブームが本格化してきましたが、本作も最初から3Dで製作しようと決めていたのですか?

バートン:3年前にプロジェクトが始まった時点で、3Dで製作すると決めていた。ワンダーランド(アンダーランド)へのトリップ的な感覚が、3Dにマッチしていると思ったのさ。3Dじゃなかったら、おそらく映画化に興味を持たなかっただろう。この映画は、『アバター』と違って、通常の2Dで撮った映像を3D に変換しているんだ。『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』ですでに経験した作業だったので、満足のいく仕上がりになったよ。

Q:ティム・バートンの作品が、今回さらにメインストリームに近づいてきた感じがありますが、ご自身抵抗感があったりしますか?

バートン:いや、そういうことを分析していたら、僕は正気を保てないだろう。デップと7回も仕事したことは、確かにメインストリームかもしれないが、僕にすれば「そうか、今回で7回目だっけ?」っていう程度。そんな余計なことは考えず、迷ったときの僕は「なぜこの仕事が好きなのか」を自問する。そして「映画を撮り続けたい」という初心を思い出すことにしているんだ。

■ジョニー・デップからの贈り物とは!?

Q:撮影中にジョニー・デップから吸血鬼映画のDVDをもらったそうですね。

ミア:そうね(笑)。トッド・ブラウニング監督の『魔人ドラキュラ』『フリークス』など、全部で4枚ほどもらったわ。撮影中に好きな映画の話で盛り上がって、デップがブラウニング監督の大ファンということを教えてくれたの。わたしが観たことがなかったので、DVDを何本かくれたのよ。

Q:ところで、アリスのビジュアルと違って、今はショートヘアですね。

ミア:ガス・ヴァン・サント監督の最新作『レストレス』(原題)に出ることになって、その撮影のために切ったの。巨匠たちとの仕事が続いて、とてもラッキーに感じているわ。特にヴァン・サント監督の映画は、ティーンエイジャーのころによく観ていて、すごく美しい映像だと思っていたのよ。

Q:最後に今回のアリス役ですが、キャリアの中で早くも当たり役になったと思いませんか?

ミア:とにかくこの映画を楽しんで観てほしいわ。おなじみのキャラクターが一癖も二癖もある感じで登場するのよ。欲を言えば、わたしが演じたアリスのキャラクターに共感を抱いてくれたらうれしい(笑)。

ジョニー・デップ、ティム・バートン監督なくして『アリス・イン・ワンダーランド』はなし、ミア・ワシコウスカなくしてアリス役はなし、と言えるほどの緊密な相性の良さが作品の完成度を高めている。救世主として活躍する強いアリス像を含め、本作はバートン色がフルスロットルでさく裂しているが、全編をデジタル3Dで加工したことでバートン監督の夢の探求がより具体的に実現したファン必見の一作に。映画界が新たに得た才能、ミアのアクション・ヒロインとしての雄姿とともに、映画史に残るだろう驚異の映像体験に酔いしれてほしい。

(C) Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.

映画『アリス・イン・ワンダーランド』は4月17日より丸の内ルーブルほか全国公開

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