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木村多江、窪塚洋介
『東京島』
人間は潜在能力を持っているものなんだと、改めて思いました
『東京島』木村多江、窪塚洋介 単独インタビュー

取材・文:鴇田崇 写真:尾藤能暢

直木賞作家・桐野夏生の同名ベストセラー小説をベースに、現代の東京を象徴する大胆な解釈を加え、島に流れ着いた23人の若い男たちと一人の女の姿を描いたサバイバル・エンターテインメント映画『東京島』。本作で主人公の清子を演じた木村多江と、清子と対立するワタナベを怪演した窪塚洋介が、40日以上のオールロケで行った撮影エピソードや意外な共演秘話などを語ってくれた。

■出演者をソノ気にさせる、『東京島』の魅力とは!?

Q:『東京島』には魅力的なテーマが満載ですが、お二人はどこにやりがいを感じられましたか?

木村:原作では清子の心情が描かれていましたが、映画の脚本ではその心情が割愛されていて、彼女の行動力に着目されていたんです。その行動はとっぴなものなのですが、すごく前向きで、つらいことでも笑い飛ばして元気になれるような強さを感じました。そこが面白いなと思いましたね。それに、なかなかこういう役をやったことがなかったので、ある意味では挑戦だなと思っていました。自分の中にいる清子を見つけたいと思って演じていました。

窪塚:どういう作品にしたいかという大それた気持ちはあまりなかったんですが、原作を読んでみて、そのグロさ、リアリティーに引かれるところがあったので、忠実に演じようと思っていました。最初の脚本では、僕が演じたワタナベがあまりにも普通の男だったんですよ。そのままだったらあまりキャラクターに面白みがないと思ったんで、なるべく原作に忠実に……と思って演じていましたね。

Q:木村さんふんする清子は、無人島での生活で思わぬ能力を発揮しますが、どのように役に入り込んでいかれたんですか?

木村:そうですね。ロケから10日目ぐらいでしょうか。わたしは清子ほどポジティブな性格ではないので、彼女のような環境に置かれたとき、あんなふうに即決はできないと思っていたのですが、あるセリフを発したときに、気持ちがそっちの方にどんどん向かっていったんです。人間は潜在能力を持っているものなんだと、改めて思いました。そこで自分の中の清子が生まれていった感じですね。

窪塚:面白い! そういうの、ありますよね。掃除したくないけれど、掃除を始めてしまったら、大掃除になっちゃったみたいな(笑)。気持ちが向いていくという意味では同じことだなあって。

木村:例えが面白いですね(笑)。

■対峙(たいじ)する関係性を表現するため、撮影前には会わなかった!

Q:清子とワタナベは対峙(たいじ)する関係でしたが、共演を経てお互いの印象は変わりましたか?

木村:以前、「GTO」というドラマでご一緒したときは、同じシーンはなかったので、打ち上げの席で、「初めまして、お疲れさまでした」とごあいさつをしたんです。そしたら窪塚さんに「お互いに頑張っていきましょうね!」と言われて(笑)。そんな印象が強くあって、そのときはどんどん行くぞ! という勢いや強さを感じました。

窪塚:そーんな偉そうなことを言っていたのねえ……(笑)。

木村:今回は、現場に入るまではお会いしていなかったんですが、リハーサルのとき、どんな球を投げても取ってくれるし、面白い球を投げてくれるから、こっちも取りたくなってしまうんです。面白くてステキな方だなと思って、演じることが楽しくなりました。そういうキャッチボールって大切なんですけど、窪塚さんはどんな球でも取ってくれるし、なおかつ面白い球を投げてくれる。ピッチャーとしてもキャッチャーとしても素晴らしい方です。

窪塚:お母さんに聞かせてあげたいです(笑)。

Q:窪塚さんは役柄の距離感を維持するために、わざと木村さんと会わないようにしていたとか?

窪塚:そうです。よく聞くじゃないですか。仲が悪い役同士なので今回の現場では話をしなかった、会わなかったみたいなことって。そういうの、言ってみたいなと思って(笑)! 今回はそのタイミングだなと思いました。プロデューサーに多江さんの人となりが菩薩(ぼさつ)様みたいな人だと聞いていたんで、そんな人と一緒にご飯を食べたり、仲良くなっちゃったら、面と向かってあのセリフが言えるのかなと思って。そこで言えなくなるような仕事をしてきた覚えはないですけど、会わないで現場に入った方がやりやすいかなと。

木村:特にこういう無人島というシチュエーションの場合、観ている人がリアルに感じにくい世界じゃないですか。でもファンタジーじゃなくてリアルに感じてほしかったので、現実的に観てもらうためにはすごく良かったと思います。どう出てくるかわからないという恐怖心を、清子はワタナベに対して持っていたので、会っていない分、「こうくるのか!」と意外なことがたくさんあったので、面白かったですね。

窪塚:それは僕もありましたね。そういう意味で、お互いにその瞬間の世界を作り上げていたと思います。リハーサルのときから、多江さんは泣くシーンでは泣いていたし、はたかれるシーンでも、リアルに多江さんにはたかれたりして、「えっ!?」って言っちゃったこともありましたが(笑)。多江さんは真摯(しんし)に向かってきてくれる人だから、僕も一緒にやっていて気持ちも乗りましたね。

■あまりの孤独感に木村が話しかけた相手とは……!?

Q:ところで、木村さんは島でのロケ中、ヤモリに話しかけていたという情報が入っていますが。

窪塚:え!?

木村:そうなんです(笑)。役に入っていたら孤独になってきて、寂しかったんだと思います。現場に行けば当然皆さんがいらっしゃったのですが、清子を自分で保とうとしていたせいなのか……。

窪塚:ヤモリと?

木村:そう。部屋にヤモリが住んでいて、同居している感じでした(笑)。そのヤモリに「おはよう」とか言ったり、声がしないと、どこにいるのか探したりして。

窪塚:ヤモリって鳴くんですか?

木村:「キーキー」って鳴くんですよ、ヤモリって。だから鳴かないと不安になって(笑)。でも、こうやってわたしが演じた清子は自然と共存していたんだなと思いましたけどね。

Q:やはり島で40日以上ものオールロケとなると、自然のパワーに後押しされたこともあったのでは?

窪塚:それはありましたね。自然はセットで作っているものじゃなくて、もともとそこのあるものじゃないですか。そこでまとっている空気感みたいなものが力になって、いい感じでパワーが出てきましたね。僕自身ロケが大好きなんで、セットの時とは違うテンションになりましたしね。

木村:太陽の光もたくさん浴びますし、大自然の中に長くいると、自然と気持ちが強くなるような気がしますね。

■無人島だけれど実は現代の東京そのもの。そのリアリティーを感じてほしい

Q:この映画は閉塞的な現代の都会の人々へ、生きるアドバイスを与えてくれそうな一作ですよね。

木村:無人島だけれど、現代社会に置き換えられる設定だと思いました。原作を読んだときにワタナベは現実にいる人だなと思ったし、現実世界と似ているところも多いので、別世界と思わずに、観ていただきたいですね。ユーモアもあるので、笑って、楽しんでくれたらうれしいですね。

窪塚:僕はワタナベで変態パートを一身に担ったところがあったので、この先どうやって復帰しようかなという感じです(笑)。またか! みたいな(笑)。ただ、多江さんがいうリアリティーとか現実社会とか、そういうところにワタナベの存在が接続していたらいいなと思いました。ほおに付いた果物の種一つとっても、リアリティーが出ていればいいなと思ったので、そこは感じてほしいですね。

清子とワタナベは敵対関係にあるため、撮影前から会わないようにしていたなど、役者魂を感じさせるエピソードや、大自然と共存しながらの過酷で神秘的な撮影秘話の数々を知れば、映画版『東京島』をより深く楽しめること間違いなし! 二人が言うように、無人島というファンタジックなシチュエーションながら、そこで描かれていく人間関係や、むき出しになる人間の本質はリアルそのもの! 閉塞的な現代社会を生きるヒントに、少なからずなってくれそうな娯楽作だ。

(C) 2010「東京島」フィルムパートナーズ
木村多江ワンピース:ESCADA

『東京島』は8月28日よりシネスイッチ銀座ほか全国公開

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