
取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美
累計発行部数1,500万部を超えるハロルド作石の人気コミック「BECK」が、映画『20世紀少年』や『TRICK』シリーズで知られる堤幸彦監督によって映画化された。アマチュアバンドのメンバーたちが夢に向かって突き進んでいく姿を描いた本作で、バンドの中心となるニューヨーク帰りの天才ギタリスト竜介を演じたのは、自身も帰国子女である水嶋ヒロ。今回の撮影でギターに初挑戦した水嶋が、作品にまつわるエピソードや、帰国当時に日本語で苦労したことなど、知られざるエピソードを語ってくれた。
■彼の気持ちはよく理解できた Q:原作「BECK」を読んで、音楽を始めた人も多いと聞きます。影響力の高い作品だけに、プレッシャーも大きかったのでは? かなりのプレッシャーでした。僕が漫画を読んでいた当時は、とにかくサッカーに夢中だったので、音楽をやろうとまでは思わなかったのですが、この漫画に影響されてバンドをやりたくなった人の気持ちはすごくよくわかりますし、だからこそ、映画化にあたっては責任を感じました。逆に、責任を感じながらやらないと、原作ファンの方に失礼だと思いましたね。 Q:今回演じた竜介は、帰国子女ということもあり、水嶋さんとリンクする部分も多かったのではないですか? そうですね。竜介は不器用な男なんですけど、熱い部分を持っていて、エキセントリックな面もあります。帰国子女という面では僕も同じなので、彼の気持ちはよく理解できました。 Q:ギターもかなり特訓されたそうですが、単に弾くだけではなく、見せるパフォーマンスという意味でも研究されたのでは? 撮影に入るまでに一か月くらいの練習期間しかなく、わずかな時間でギターをマスターしなければならなかったので、弾くよりも見せる方を重点的に練習するしかなかったんです。でも、ギターのテクニックだけなら僕じゃなくてもいいということになってしまうので、聴かせる演奏まではたどり着けなくても、見せるパフォーマンスまではたどり着けるように最大限の努力をしました。 | ![]() |
![]() | ■バンドメンバーの中で、意外なほどオチャメだったのは・・・・・・? Q:フジロックフェスティバルの会場で撮影されたクライマックスのライブシーンは、すごい臨場感でしたね! ありがとうございます! 撮影前に全員でセッションする時間もほとんどなかったのですが、各自が個人的に練習を重ねて本番に挑み、ステージ上でみんなとの一体感を味わいました。ただ会場が大きかったので、パフォーマンスが小さくならないように意識してしまい、ライブを楽しんでいる余裕はなかったですね(笑)。 Q:バンドのメンバーを演じた共演者の方とは、かなりコミュニケーションをとられたんですか? 竜介とほかのメンバーとの間には、スキルや考え方に距離ができてしまうという関係だったので、役者さんとも少し距離を置いて接していたような気がします。竜介はリーダーといっても名前だけで、内面的に大人なのはコユキ(佐藤健)やサク(中村蒼)だったりするじゃないですか。だから、役柄的にも少し距離感が見えた方がいいと思ったんです。 Q:では、メンバーの中で最初の印象と違うなと思った方はいましたか? 向井(理)くんですね。かなりオチャメな人で、とにかくノリ方がすごい(笑)。「そんなノリでくるのか!」と思うくらいオチャメで意外でした。逆に、桐谷(健太)さんは思ったとおりの真っすぐな方でしたね。 |
■妹役の忽那汐里は、本当の妹のようだった! Q:妹の真帆を演じた忽那汐里さんとは、英語の会話がすごくリアルでしたね。 忽那さんとはかなり積極的にコミュニケーションをとりました。ウザがられない程度に(笑)。彼女も僕と同じく帰国子女なので、どちらかというと英語の方が得意なんです。でも、役者というのは日本語を大切にしなきゃいけない仕事だから、いろいろと苦労することもある。それは僕自身も経験したことなので、彼女の悩みや気持ちがよくわかるんです。どこかほっておけないというか、少しでも力になれればと思ってアドバイスをさせてもらいました。僕は、女性の共演者の方とそんなにしゃべる方ではないのですが、忽那さんには本当の妹のように接していましたね。 Q:映画で拝見した忽那さんの日本語に違和感はなかったのですが、実は努力をされていたんですね。 もちろん、お芝居ではちゃんとした日本語をしゃべるように仕上げてきますが、普段はそこまで意識しないので、変な日本語が飛び交うんです(笑)。僕も日本語がちゃんとしゃべれなくて苦労したことがあるので、「わかるわかる」と思いながら忽那さんを見ていました。 Q:ちなみに、水嶋さんご自身が日本語で一番苦労されたのはどんなところですか? やはり発音ですね。今でも発音を気にしながらしゃべります。セリフでもイントネーションがおかしくなってしまうことがあって、誰かに指摘されないと気付かないこともあるんです。それを意識しながらセリフを言うので、ほかの役者さんよりも超えるべきハードルが多いのかもしれません。 | ![]() |
![]() | ■俳優・水嶋ヒロが目標とする存在とは? Q:竜介たちには強力なライバルがいますが、どんな世界でも、ステップアップにはライバルの存在が必要だと思いますか? ライバルというか、目標を置くということは大切だと思います。その目標となる存在が身近にいるといいですよね。ただ、僕自身は「自分らしくありたい」という思いが強いので、特定の誰かに対して「この人のようになりたい」とは考えないようにしているんです。決められた枠の中で目標を作るのではなく、どんどん開拓して視野を広げたいと思っているので、いろいろな方から刺激を受けて、いいところを学んでいきたいですね。 Q:今回の作品にかかわった方からも、学ぶべきところがあったのでは? 作品とは直接関係ないのですが、一番に浮かぶのは木村拓哉さんです。この映画でギターの練習をすることが決まったとき、いち早くアドバイスしてくださったのが、ドラマでご一緒していた木村さんだったんです。しかも、木村さんは竜介の愛用ギターがレスポールだと知っていて、ご自身のギターをわざわざ持ってきてくださったんです。「これでしょ?」って。それをお借りして練習したんですよね。そんな木村さんのスタンスには学ぶべきところがすごくありますし、この世界のトップでいるべき存在だと思います。今回の現場では、木村さんから学んだことを僕なりに生かさせていただきました。 Q:先輩の木村さんからそんなことをしていただいたら、感激しちゃいますね! とても感謝しています。やはり、考え方や人間性も含めて、木村さんのようにトップでい続ける方には、納得できる理由があるんですよね。確固とした理由のない人がトップでいられる世界なら、そんなところにはいたくないと思ってしまう。僕は今、そうではない世界にいられて本当に良かったと思います。 Q:最後になりますが、本作には意外な方々が意外な場面でカメオ出演されています。必見のシーンを教えてください。 まずは、漫画にも登場している某プロレスラーさんですね。彼が出るのか出ないのかは、原作ファンの方も楽しみにしていると思うので、どんな場面に出てくるのか見逃さないようにしてほしいです。あとは、いろいろなお笑い芸人さんたちが、ほんの一瞬だけ登場するところも注目です(笑)。漫画の細かいディテールもリアルに再現していますので、楽しみにしていてください! |
「今でも発音を気にしている」なんて信じられないくらい、きちんとした日本語でインタビューに答えてくれた水嶋。イケメン俳優として今どきの若者を演じることも多い彼だが、素顔は日々の努力を怠らない、とてもマジメでクレバーな青年なのだ。仕事に対するストイックな姿勢と、丁寧な物腰が印象的だった水嶋が、本作ではちょっとやんちゃな天才ギタリストを熱演! 海外仕込みの流ちょうな英語と、伝説のギタリスト、ジミー・ペイジを参考にしたという渾身(こんしん)のパフォーマンスを、ぜひともスクリーンで堪能してほしい!
『BECK』は9月4日より全国公開
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