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仲村トオル、小西真奈美
『行きずりの街』
小西さんの平手打ちは僕の人生で最も圧力の高い打撃でした
映画『行きずりの街』仲村トオル、小西真奈美 単独インタビュー

取材・文:中山治美 写真:櫻井健司

俳優・仲村トオルが1985年に映画『ビー・バップ・ハイスクール』でデビューして25年。節目の年に挑んだのは、1992年に「このミステリーがすごい!」で第1位に選ばれた志水辰夫原作の同名小説を映画化した『行きずりの街』だ。劇中で12年ぶりに再会する教師と、元妻であり教え子という複雑な関係を演じた仲村トオルと小西真奈美。しっとり大人のムード漂う二人が、“笑撃”のインタビューを繰り広げた。

■女子高生からクラブのママまで!

Q:初共演ですね。お互いの印象は?

仲村トオル(以下、仲村):最初のシーンは波多野と雅子が12年ぶりに再会するシーンだったのですが、余計な話をしないままクランクインし、親しくなる前にアップしてしまいました(苦笑)。

小西真奈美(以下、小西):最初のシーンが再会のシーンということもあり、打ち解けまいとする気持ちもあって、撮影の3、4日目まではごあいさつ以外、何も話さなかったんです。でもだんだんとお話するようになると、温かくて、作品に真摯(しんし)に向き合っている方だなと思いました。

仲村:実は小西さんにはずっと伺いたいことがあったんです。クランクイン前に阪本(順治)監督から、小西さんの高校生時代の写真を持っていた方がいいと言われて、写真を預かったんですが、その中の1枚に「波打ち際を走っているところを誰かに声を掛けられて振り返った」みたいな写真があったんです。「コレ、誰が撮ったんですか?」と聞きたいんだけど、それを聞いてしまうと何かが終わってしまうような予感があって、聞けないままクランクアップを迎えてしまったんです。そのときにやっと「で、聞きたいことがあるんですけど」と。

小西:本当に「で!」という感じで聞いてこられましたよね(笑)。

仲村:そうしたら「友達と『月刊明星』(現『Myojo』)みたいな写真を撮りたいねと、撮った写真です」と。

小西:(アイドルに)成りきって撮ったんです。

仲村:それを聞いてホッとしたんですよね。その写真を見たときに感じた敵の見えない嫉妬(しっと)心みたいなものは、波多野の感情を作る上で役立ったような気がしますから。

Q:小西さんは今回の役づくりのために、銀座に偵察に行ったそうですね。

小西:そうなんです。クラブに行ったことがなかったので。銀座のママさんたちが髪をセットしてクラブに出勤する時間を狙って、ぶらぶら歩いてみたり、ちょっと近づいてしぐさを見たりと。そういうのを何日かやっていました。

Q:変装して?

小西:いえ、普通に行ったので、何人かの人に「何しているんですか?」「撮影ですか?」と聞かれてしまって……(苦笑)。でも、何も見たことがないのと、見たことがあるのとではだいぶ違うと思うので、自分の中で演じる上での核ができたかなとは思いますね。

Q:小西さんのようなママがいたらその店に行ってしまいますよね?

仲村:僕ですか!? その質問にまじめに答えるのも何ですが、僕は家で飲むことの方が多いので。ただ小西さんがいるような店だったら、とても繁盛すると思いますよ。阪本監督のような、ちょっと寂しそうなお客さんがいっぱい通われると思います。

小西:ありがとうございます!(笑)

■いまだに「自称おじさん」ができないんですよ(仲村)

Q:12年ぶりの再会シーンで、雅子が波多野に掛けた第一声は「おじさんになっちゃったわね」という言葉でしたが、その言葉の裏には雅子の複雑な心理が隠されているように思いました。

小西:同じ世代の相手に対しては厳しい言葉になりますが、波多野と過ごしていたころの子どもに戻ったかのような、そして12年という空白を表現するために無邪気に発した言葉だったと思うんです。実際、そんなふうに響けばいいなと思って演じました。

仲村:実は僕、いまだに「自称おじさん」ができないんですよ。撮影中に助監督さんが子役に「ホラ、あのおじさんの方へ走って」なんて言おうものなら、グーっと拳を握りしめてしまうような感情がわいてしまうんです(苦笑)。でも撮影を思い返すと、そんなに不快感がなかったんですよね。それは多分、言葉の裏に「12年前のことを忘れていない」という響きがあって、ちょっとした喜びを感じたんだと思いますね。

Q:そして小西さんは、仲村さんに見事な平手打ちもしていましたが、あれは本当にたたいているんでしょうか?

小西:はい。ああいうシーンのときは気を使うと音がしないとか、外しちゃったりして、撮り直しになることも多いので、1回で終わりにするには思い切りいくしかないなと思っていて。撮影前にスタッフさんからも「遠慮するなよ、思い切りいけよ」と言われていたので、それまでためていた感情を爆発させると同時に、思い切りいかせていただきました。

仲村:間違いなく僕の人生の中で、女性から受けた最も圧力の高い打撃でしたよ(笑)。

Q:でも仲村さんは本作を観ると、毎回、そのシーンでなぜだか泣けてしまうそうですね。

仲村:まだ全然冷静に映画を観ることはできないんですけど、最初に観たときに泣けた、あのときの感情は何だったんだろう? という気持ちは、少しずつ熟しているというか……。自分が演じているんですけど、時間がたつにつれて「そういうことだったのか」と気付かされることが多い映画だと思います。

小西:わたしは登場人物の心の機微が描かれていたこと、作品から希望が見えたことがうれしかったです。映画を観に行くときは、すがすがしい気持ちになって映画館を出たいと思っているのですが、そういった気持ちになれる映画に仕上がったと思っています。

■祝!仲村トオル芸能生活25周年

Q:本作は仲村さんの芸能生活25周年記念作品となります。25年を振り返っていかがですか?

仲村:短い言葉で言うなら「すごく楽しかった25年」です。もちろんたくさん失敗したし、挫折や屈辱、敗北感もたくさん味わいましたけど、でも大切にしたい記憶をかき集めると「楽しかったな」になるんですよね。

小西:わたしは「あぶない刑事」のころから(仲村さんを)拝見していたんですよ。

仲村:夕方の再放送ですよね?

小西:はい、大好きなドラマでした。そのイメージがあったので、子どものころに観ていた方が恋愛対象になる役を演じるなんて、不思議な感覚でした。初めてお会いしたんですけど、わたしの方は昔から知っている……みたいな。もっと言うと、『ビー・バップ・ハイスクール』も観ていたので、この方はいろいろな役ができてすごいなあと、子ども心に思っていました。

Q:ほとんどの人が仲村さんがデビューした瞬間から今までをずっと見ているというのは、それだけずっと第一線で活躍してきた証。すごいことだと思います。

仲村:そうなんですかね。デビュー当時は俳優として赤ちゃんのような、幼稚園に入る前のような状態でしたから、それを見られている、知られているというのは恥ずかしいような気がします。

Q:仲村さんはデビュー当時の話をすると、嫌がっている感じが顕著に表情に出ますね(苦笑)。

仲村:嫌がるというか、恥ずかしいです。「あぶない刑事」の再放送とかしないでほしいと思うくらい。(柴田)恭兵さんにも言ったことがあるんですが、「あのころの仲村トオルと一緒に芝居しろ! と言われたら、おれは嫌ですよ」と。恭兵さんには「そんなおまえと一緒にやっていたおれたちはどうなんだ!」と返されましたけど(苦笑)。

1985年当時、『ビー・バップ・ハイスクール』のラストシーンが撮影された女子校へ見学に行こうしても、やじ馬が殺到していて断念せざるを得ない状況だった。それほど映画界に現れた新星・仲村トオルの人気はすさまじかった。ヤンキー・ブームを起こした仲村が、25年がたち、丸くなるのではなく、「おじさん」と呼ばれることに抵抗しているとがった一面を隠し持っていたことにニンマリ。本人の意向は無視して、これを機会に日本映画界の斜陽時代にも奮闘してきた仲村トオル25年の軌跡をDVDなどでぜひ見直してほしい。

映画『行きずりの街』は11月20日より全国公開

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