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松山ケンイチ、水原希子
『ノルウェイの森』
トラン監督が殻を取り払ってくれました
映画『ノルウェイの森』松山ケンイチ、水原希子 単独インタビュー

取材・文:斉藤由紀子 写真:高野広美

現代文学の最高峰と言われる村上春樹のベストセラー小説「ノルウェイの森」が、映画『青いパパイヤの香り』『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』のトラン・アン・ユン監督の手でついに映画化された。本作は、自殺した親友の恋人だった直子と同級生の緑との間で揺れ動く主人公のワタナベが、愛すること、生きることの意味を見いだしていく物語。ワタナベを演じた実力派俳優の松山ケンイチと、人気モデルから緑役で女優デビューを果たした水原希子が、初共演の感想や作品への思いを語った。

■思っていた以上に深いものが描かれていた(松山)

Q:トラン・アン・ユン監督の『ノルウェイの森』に出演したことで、作品に対する新たな発見はありましたか?

松山:発見することばかりでしたね。僕が最初に原作を読んだときは、エッチな小説だなという印象が強かったんです。性描写の意味もよくわからなかったというのが正直なところなんですけど、トラン監督の演出でワタナベを演じたことによって、各場面の性描写がどういうものだったのかよくわかりました。思っていた以上に深いものが描かれていて、だからこそ世界中の人を魅了しているのだなと実感しました。

水原:わたしは、小説を読んだときのことが現場ですべて上書きされてしまったような感じなんです。この作品はトラン監督の「ノルウェイの森」だから、監督の感じたものに近づくことだけを考えていました。

Q:水原さんは、お芝居をするのが初めてとは思えないほどの存在感でしたね。

水原:でも、何もかもが初めてだったので、現場ではすごく苦労しました。わたしは形から入るモデルとしての表現方法しか知らなかったから、いろいろと悩んでしまうことが多くて……。監督から細かい動きや感情表現の仕方を教えていただきながら、この物語で一番の光となる太陽のような緑という役をつくっていきました。

松山:緑というキャラクターは、キャリアのある女優さんにとっても難しい役なんですよね。セリフの分量も多いし、精神的に輝いていなければいけない。初めての芝居でその難しい要求に応えるというのは、かなり大変なことだったと思うんです。監督の演出と希子さんの努力で、温かくて母性にあふれた素晴らしい緑になったと思います。

水原:ありがとうございます!

■松山さんはお兄さんのようでした!(水原)

Q:お二人は初共演ですが、現場でご一緒して最初のイメージと違うなと思ったところはありますか?

水原:わたしは、松山さんと最初にお話したときに、「わ、青森弁だ!」って思いました(笑)。青森弁をしゃべっているイメージが全然なかったので、ちょっとビックリしました。

松山:そうなんだ(笑)。

Q:神戸出身の水原さんも、関西弁でしゃべることがありますよね?

松山:そうですね。

水原:え? 松山さん、わたしの関西弁を聞いたことないですよね?

松山:いや、あるよ。撮影中に何回か。

水原:あれ? そうだったかなあ……(苦笑)。

松山:僕の中では、緑を希子さんが演じるというのがちょっと意外でした。緑ってショートヘアのイメージが強いじゃないですか。でも、希子さんと最初に会ったときは髪が長かったんですよ。しかも、腰くらいまであって……。

水原:そうなんです! 撮影するときにバッサリ切ったんです!

松山:まあ、意外だなと感じたのは、髪の長さのイメージが大きかっただけだと思いますけど(笑)、あのロングヘアがどうなるのか楽しみでしたね。

Q:ちなみに、ショートヘアにした水原さんをご覧になったときはどう感じましたか?

松山:似合うなと思いましたね。(隣の水原を見て)……うん、よく似合う。あと、最初の印象で声がいいなと思いました。

水原:わたし、自分の声があんまり好きじゃないんです……でも、うれしいです!

松山:キレイな声をしていると思います。

水原:いつもこうやって褒めてくれるんです。松山さんはすごく優しいんですよ! お会いする前は、「もしかして無口な人なのかな?」とか、いろいろ考えていたんですけど、実際の松山さんはすごくフレンドリーで、お兄さんのように接してくれたんです。わたしが現場で何回泣いても、何度ミスしても、「大丈夫だよ、緑」という感じで大きく構えてくださっていたので、すごく安心できました。

■二人の女優さんに引っ張られた部分はすごく大きい(松山)

Q:直子を演じた菊地凛子さんからも大きな刺激を受けたのではないですか?

松山:もちろんそうです。ワタナベは直子を追っていくキャラクターですから、凛子さんに引っ張られていく部分はたくさんありました。いつまでたってもリズムが合わない二人なんですけど、ワタナベは直子と一緒にさえいればいつかはリズムが整ってくるし、彼女には自分が必要だろうと信じている。だけど、どうやって直子を救えばいいのか具体的な考えは見つからないんですよね。自分の本当の意思がないから、直子の空気に引っ張られてしまうし、揺れ動いてしまう。その空気感を凛子さんはきちんと表現してくれていたので、すごく助けられました。僕がワタナベを演じる上で、直子と緑を演じた二人の女優さんに引っ張られた部分はすごく大きいと思います。

Q:水原さんは、ワタナベと直子のシーンを見学されていましたが、現場で見て学ぶことも多かったのでしょうか?

水原:それが、学ぶつもりで行ったのに、圧倒されて見入ってしまっただけになってしまったんです。素顔の凛子さんと直子があまりにも違っていて、そこにいるのは完ぺきに直子で、本当に鳥肌が立ちました。わたしはプライベートでも凛子さんと仲良くさせてもらっているんですけど、凛子さんは直子と違って朗らかでハッピーな方なんですよ! まるで本当のお姉さんのような感じで、わたしがハタチになったから、今度一緒に飲みに行こうねって約束しているんです!

Q:ハタチのお祝いですね! そのときは松山さんもご一緒に?

松山:いや、僕はもう……。二人でどうぞ(笑)。

水原:松山さんは、わたしたちが誘っても嫌がるんです(笑)。

松山:女性二人に男一人だと、何だか気が引けちゃうんですよ。

水原:何でですか? 寂しいなあ……。

松山:……じゃあ、ネクストタイムということで(苦笑)。

■緑に似てきたような気がするんです(水原)

Q:最後に、お二人がこの作品から得たもの、感じたこと教えてください。

水原:この映画を撮り終えてから、自分がどんどんポジティブなって、緑に似てきたような気がするんです。それまでのわたしは、殻をかぶることで自分を守っていたのだと思うんですけど、その殻をトラン監督が取り払ってくれたのかもしれません。以前よりも自分の感情を素直に出せるようになれたので、毎日がすごく楽しいんです。この作品が、わたしの脳みそを柔らかくしてくれたのだと感じています。

松山:僕は、「どんなに誰かを愛しても、人は簡単には救えないのだ」ということに気付きました。ワタナベは直子と一緒にやっていくんだという覚悟でいましたけど、その覚悟だって実は大したものではなかったのだということに彼自身が気付く。身の程を知るということですよね。そうやって何かに気付くことで、またひとつ大人になっていくのだと思うんです。僕自身もそこに気付いたので、大人になったように感じています。この映画を観てくださる人も、何か感じること、気付くことがたくさんあると思うので、そこを楽しみにしてもらいたいですね。

何か話すたびに隣の松山の顔をのぞきこむ水原と、そんな彼女を安心させるように優しくうなずく松山。そのほほ笑ましい光景に、二人が兄と妹のような信頼関係で結ばれていることを強く感じた。まるで原作から抜け出てきたような松山のワタナベと、もぎたての果実のようにみずみずしい水原の緑が、トラン・アン・ユン監督の映像美の中で光輝く映画『ノルウェイの森』は、観る人に新鮮な驚きと感動を与えることだろう。まさに、「奇跡の映画化」という表現がふさわしい作品が完成した。

(C) 2010「ノルウェイの森」村上春樹 / アスミック・エース、フジテレビジョン

映画『ノルウェイの森』は12月11日より全国公開

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