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中谷美紀
『阪急電車 片道15分の奇跡』
行きずりの他人だからこそ言えることがある
『阪急電車 片道15分の奇跡』中谷美紀 単独インタビュー

取材・文:斉藤由紀子 写真:舞山秀一

人気作家・有川浩のベストセラー小説「阪急電車」が、中谷美紀、戸田恵梨香、宮本信子ほか、豪華キャストによって映画化された。本作は、片道わずか15分のローカル線・阪急今津線を舞台に、偶然乗り合わせた乗客たちのふれあいを描くハートウォーミングな群像劇。婚約者を後輩に寝取られ、2人の結婚式に純白のドレス姿で“討ち入り”に行くOL翔子を熱演した中谷が、“討ち入り”について思うことや、撮影で感じた関西の魅力など、素直な気持ちを明かした。

■失敗することで成長する不完全なヒロイン

Q:気丈で行動的な翔子に共感を覚える人も多いと思うのですが、中谷さんは翔子をどのような女性だと解釈されましたか?

翔子は不完全な女性なんです。仕事も恋も遊びもしたい、ある程度仕事でキャリアを重ねた典型的な女性であるがゆえに、すべてを手に入れようとして失敗してしまうんですね。何かを手に入れるためには、何かを手放さなくてはいけない。そのタイミングが、婚約者を奪われるという形で現れてしまったのだと思います。

Q:かわいがっていた後輩に婚約者を寝取られてしまうなんて、想像しただけでつらいですよね。

ただ、翔子自身にも落ち度があったというか、自分で自由になるお金もあり、選択肢がたくさんある中で、自分の婚約者をないがしろにした部分があったと思うんです。だからこそ、あのような結果になったと思うので、失敗して良かったのではないでしょうか。彼女はここで失敗しなかったら、もっとかわいげのない、鼻持ちならない女性になっていたかもしれない。この作品の原作と台本を読ませていただいたときに、翔子の輝かしい未来や大きな希望を感じました。

Q:元彼の結婚式に、純白のドレスを着て“討ち入り”を果たす翔子。演じているときはどんなお気持ちだったのでしょうか?

“討ち入り”に行けば気持ちがスカッとするかというと決してそうではなくて、とても後味の悪いものなんです。原作の中でも「彼女は返り血を浴びていた」と表現されていますが、自分で演じていてもそんな気分でした。視覚的に血は見えないけれど、本当に相手を刺しに行って、血だらけのまま電車に乗っているわけですから、とてもみじめでむなしいんですよ。自分でも愚かなことだとわかっているけれども、人間って理性よりも感情のほうが先走る生き物だから、“討ち入り”を決行してしまった。そんなときに、電車で乗り合わせた時江さん(宮本信子)が、とがめるのではなくて丸ごと受け止めてくださったことが、翔子の救いになったのでしょうね。

■もしも自分が男性だったら、ウソ泣き女を選ぶ!?

Q:ちなみに、もしも中谷さんが翔子のような立場になってしまったら、どのような行動を取ると思いますか?

わたしだったら、翔子のように自分が火の粉を浴びてしまうようなやり方はしないと思います。やるのなら、もっと陰湿にやります(笑)。一番悔しいのは、元婚約者と後輩は会社に残っていて、自分が会社を辞めざるを得ない形になっていることですよね。もちろん、そこでしがみついていても仕方がないのですが、わたしだったら、2人に退職していただくように計らうかもしれません。

Q:「わたしたちのような女は損をする」という翔子の言葉が印象的ですが、中谷さんご自身は、損をしてしまうタイプだと思いますか?

どちらかというと損をしてしまうタイプですね。でも、もしもわたしが男性だったら、勝気な翔子よりも後輩のようなかわいらしい女を選ぶと思います。

Q:それがウソであったとしても?

たとえウソの涙だったとしても、最後までウソをつき通してくれればいいんです。どこかで化けの皮がはがれてしまうかもしれませんけど(笑)。

Q:やはり、涙を武器にできるような女性のほうが得をする世の中なのかもしれませんね。

でも、わたしは彼女たちを疎ましいとは思わないです。女の子らしいかわいらしさって、同じ女性から見ても魅力的だと思います。男性の立場になってみても、仕事で戦ってきて家に帰ってもガミガミ言われたらいやなのではないでしょうか。

■撮影を通じて改めて感じた関西の魅力

Q:車内のシーンは、実際の阪急電車を臨時運行して撮影したそうですね。通常の撮影とは違って、ご苦労もあったのではありませんか?

阪急電車沿線のお客様には本当にご迷惑をお掛けしてしまったのですが、原作が地元でもかなり支持されていて、皆さん協力してくださいました。ですから、さほど苦労はしなかったのですが、強いて言うのであれば、お昼ご飯がなかったことくらいですね(笑)。時間がない中での撮影だったので、電車での撮影中はずっと昼食抜きだったんです。

Q:それだけ分刻みの撮影だったわけですね。

そうですね。臨時電車での撮影が終わると次の電車がホームに入ってくるので、照明機材もすぐに片付けなくてはいけなくて……。きっと、わたしたちキャストよりも、スタッフの皆さんのほうが大変だったと思います。

Q:エキストラの皆さんも関西の方が多かったのですか?

関西で募集をしたと聞いています。想定人数の何倍もの方が応募してくださったそうですが、原作ファンの人ばかりだったようです。普通はエキストラの方にまで台本を配るゆとりはないので、内容もよくわからずに参加されていることのほうが多いと思うのですが、おそらく、今回の皆さんはどのシーンを撮っているのかわかっていらしたのではないかと思います。

Q:今回の撮影で、関西の魅力を改めて感じたのではないですか?

撮影のために通行止めをさせていただくこともあったのですが、関西の方は本当に協力的でした。皆さんお忙しいでしょうに、声を荒げるどころか温かい声援を送ってくださったり、普通に話し掛けてくださったりするんです。あと、撮影の合間に、串揚げやおいしいおうどんをいただいたりして、関西の魅力を味わいました。

■偶然の出会いから生まれる人と人とのきずな

Q:同じ電車に乗り合わせた人々の人生が交差し、それぞれの人生に影響を与えていく本作。インドの旅行記も書いていらっしゃる中谷さんは、旅先でそんな出会いを経験したことはありますか?

そうですね。海外を旅するときは、飛行機や夜行列車などで隣り合わせた方や、コンパートメントでご一緒した方と、友人にも話さないようなことを思わず話してしまったりします。自分の悩みなど、行きずりの他人だからこそ言えることってあるんですよね。

Q:その偶然の出会いが、長いお付き合いに発展してくこともありますか?

どちらかというと、その場限りで終わってしまうことの方が多いのですが、旅先で出会ってそのまま交流が続いている友人もいます。今回も、日本の地震を心配して、海外の友人からメールや電話をたくさんもらいました。いつもベッタリ一緒でマメに連絡を取るという友人関係はあまり得意ではないので、逆に、遠くにいてなかなか会えなくても、どこかでつながっている友人関係が大事ですし、ありがたいです。

Q:最後に、「終着駅は、きっと笑顔。」というコピーがピッタリな本作に出演された中谷さんから、これから映画を観る方にメッセージをお願いします。

人と人とのきずなとか、利害関係のない相手に対する気遣いの大切さなど、いろいろなことを感じていただける作品だと思います。本当にさりげない、ほんの少しのふれあいがあるだけでも、その一日をとても気持ちよく過ごせるんですよね。皆さんにもぜひ、この作品から人と人とのふれあいを感じていただけたらと思います。

旅の話になったとき、「ハンガリーのホロッコという町がすごくステキで……」と瞳を輝かせた中谷。旅好きの彼女は、見知らぬ他人との一瞬のふれあいが、どれほど人生を豊かにしてくれるのか実感しているようだった。そんな彼女がとても魅力的に演じたヒロインに、思いっきり感情移入してしまう人も多いだろう。仕事や恋愛に悩んでいる女性にオススメしたい、サプリ効果抜群の本作を観れば、いつの間にか心のモヤモヤが晴れて、笑顔になっている自分に気付くはずだ。

映画『阪急電車 片道15分の奇跡』は4月23日より関西先行公開の後、4月29日より全国公開

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