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織田裕二
『アンダルシア 女神の報復』
弱さを含めた人間くささを表現したかった
映画『アンダルシア 女神の報復』織田裕二 単独インタビュー

取材・文:鴇田崇 写真:吉岡希鼓斗

世界各国を舞台に邦人をテロから守るため、水面下で任務に従事する外交官・黒田康作の活躍を描くサスペンス超大作『アンダルシア 女神の報復』が完成した。スペインで発生した日本人投資家の殺人事件を皮切りに、全世界を揺るがす巨大な国際犯罪の全容を解明するため、今作では情熱の国スペインを縦断していく黒田。主人公を演じた織田裕二が、スケールアップを遂げた世界観、より鮮明になった黒田のキャラクターについて語った。

■今回は黒田以外の登場人物もプロ!その意外な効果とは?

Q:今作は、スペインを舞台に、サスペンスフルなストーリー、アクション、人間ドラマなどすべての映画的興奮がバランスよくちりばめられたゴージャスな続編になりましたね!

正直僕も今回は、出演者なのに完成した映画を観ながら驚いて声を上げてしまったくらいです。最初のシーンからびっくりして、中盤のカーアクションや銃撃戦にしたって、日本映画とは思えないほどの迫力でした。でも、今回のベースとして存在している要素は、ダマし合いが繰り広げられる人間ドラマで、その渦中にいる黒田がどうやって事件を解決していくのかが見ものですよね。

Q:今回の黒田は、インターポール捜査官の神足誠(伊藤英明)、ビクトル銀行行員の新藤結花(黒木メイサ)と繰り広げる、サスペンスフルな心理戦で観客を魅了していきます。

特に今回は黒田以外の人間もプロなわけですよ。黒田が相手にしていた人って、最初の『アマルフィ 女神の報酬』では観光客の女性だったし、テレビシリーズでは刑事の卵、一般人相手が多かったんです。でも今回は相手がプロだということで遠慮がいらないし、逆に黒田の弱い面を見せることができると思いました。黒田はかなりできる男だけれど、弱さを含めた人間くささを、今回の『アンダルシア 女神の報復』では表現していければなと思っていましたね。

■饒舌(じょうぜつ)ではないが、メッセージを込めて相手に接する、それが黒田イズム

Q:クールでミステリアスな黒田のキャラクターはそのままに、今おっしゃられた弱さを含めた人間くささに加えて、出会った人たちに影響を与えていくカリスマ性も強調されていますよね。

今回の黒田は神足、新藤の2人の人間と出会い、彼らの人生を変えていくわけですが、説教くさい感じにはしたくなかったんです。黒田は「そうしなさい」と直接的には言わないけれど、「それがいい」という信念を持って相手に接している。神足を演じていた伊藤君が、「黒田って優しいですね」と言っていたんですが、それは言葉にせずに伝える黒田のそういった側面を言っていたのかもしれませんね。

Q:そういう黒田のキャラクターについては、西谷弘監督とディスカッションを重ねたのでしょうか?

西谷監督は照れ屋のおしゃれさんで、黒田と似ているところがあるんです。男は黙って行動を起こすもの、言いたいことがいっぱいあっても言わないもの、面と向かって言い放っちゃうとカッコ良すぎて嫌だみたいな男の照れや、言われないと気付かれない男の優しさみたいなものをバランスよく黒田に投影していると思います。

■移動の連続で過酷なロケの中で、ほっと一息できる要素も忘れない

Q:“最大にして極限の任務”と銘打っているだけにアクションも目を見張るものがありますが、ストーリーに根付いていない無駄なアクションはやらないという潔さも感じました。

僕も本当にそう思います。もっとアクションを見せてもいい、映画の後半にデカいアクションがあってもいいとも思ったのですが、一切の無駄がなく、クオリティーもすごく高かったので、びっくりしました。実は現場にいながら、こんな機会はめったにないからもっとやっちゃえとあおっていたんです(笑)。ワンシーンだけで1か月ぐらいかかっているものもあるので……というのも、毎週日曜日だけしか撮影できなかったんですよね。エリアを封鎖する必要があったので、日曜日限定の撮影だったんです。だから月曜から土曜は別の国のアンドラへ行ってロケをして、スペインの正反対にあるアンダルシア地方に行って撮影して、移動、移動で、まるで旅がらすみたいでした(笑)。

Q:また、今作ではシリアスなテイストだけでなく、ほっと一息できる演出も楽しいです。

前作の『アマルフィ 女神の報酬』が終わった後に反省会じゃないですが、西谷監督とちょっと飲んでいるときに、「作品は素晴らしかったけれど、欲を言えば笑いというか、ちょっとほっとする要素がほしいよね」という話をしていたことがあったんです。佐伯(福山雅治)というジャーナリストにしても、黒田の上司の安藤さん(鹿賀丈史)にしても、この映画に登場するキャラクターは各分野で一流と呼ばれる人たちばかりなんですが、安達香苗(戸田恵梨香)だけは、一般的な女性のキャラクター像なんです。だから彼女と2人だけでいるシーンでは、ちょっとほっとできるというか、観ていても笑いが起こるシーンになっています。

■信念を曲げない、一本筋が通っている性格は、青島も黒田も同じ

Q:黒田も『踊る大捜査線』シリーズの青島刑事同様に現場主義を貫くキャラクターですが、それを織田さんが演じることはファンにとってたまらない側面でもあります。

黒田も青島も一本筋が通っている男ということで共通していますよね。街のお兄ちゃん的な存在でふにゃふにゃしている青島君の場合は、勝手なことをやっているようで、それでいてチームやチームワークを大事にしていて、それに対して黒田は単独行動なので、すごく孤独だったりする。2人共、やるときはやるんですよね。やっぱり男って、やるときはやらないとダメだっていうことを彼らは教えてくれたし、そこは黒かろうが青かろうが僕が大好きなところですね(笑)。

Q:終盤、政治的圧力が黒田を襲うシーンでは、外交官・黒田康作の信念が問われます。

黒田って、すっきりと気持ちがいい対応をしてくれる男ですよね。まして公務員の場合、上司の命令は絶対じゃないですか。その意味でも、あっさりと対応してしまう黒田には、僕らの願望も込められていると思うんですよ。例えばこれだけコロコロとトップが変わってしまう日本を考えたとき、外交的な話はしづらいと思うんですよね。また担当が変わったのでイチからお願いしますって、周りからしてみればたまらない。中期的、長期的な話題ができる人じゃないと誰だって嫌でしょう。黒田が外交官として適任かどうかはわからないけれど、少なくとも自分の信念を持っていない人に外交や国は任せられないし、ましてや、すぐ担当者が変わってしまう国などお話にならないよねって思うんです。

Q:確かに信念で行動する黒田に日本の理想的なリーダー像を託していると言えそうですね。

僕はそう思いたいですね。とはいえ黒田康作シリーズは、大人が観ていてすごく考えさせられるテーマを含んでいるんですが、それを説教くさく問わないところが好きです。ただ、よく観ていると、「そうだよね!」って共感できる要素がたくさんある。そのバランス感覚がとても心地いい。そんなシリーズになったのではないかなって思います。

2009年に公開された『アマルフィ 女神の報酬』で初めて登場した外交官・黒田康作。以後、動画配信やテレビドラマなど回を重ねるごとに厚みを増したキャラクターへと変遷を遂げ、よりスケールアップしたサスペンスとヒューマンドラマが絡み合う本作において、単なる公務員としての職務を超え、人間としてリスペクトできる信念の男としての顔ものぞかせる。そんな黒田の成長に合わせるかのように、本作は、ストーリー、アクション、優美なロケ映像やテーマ、豊かなキャラクター同士の激突など、映画全体としてレベルアップを果たしているといえる。日本映画の新しい可能性や方向性を提示するかのような勢いとエネルギー、クオリティーを有している本作を観て、大いに語り合ってみてはいかがだろうか。

(C) 2011 フジテレビジョン / 東宝 / 電通 / ポニーキャニオン / 日本映画衛星放送 / アイ・エヌ・ピー / FNS27社

映画『アンダルシア 女神の報復』は6月25日全国公開

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