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豊川悦司&大竹しのぶ
『一枚のハガキ』
大変だからこそ、生きていく意味がある
『一枚のハガキ』豊川悦司&大竹しのぶ 単独インタビュー

取材・文:柴田メグミ 写真:吉岡希鼓斗

現役映画監督として日本最高齢の巨匠・新藤兼人監督が、「映画人生最後の作品」と公言する『一枚のハガキ』が、ついに公開。戦争末期に召集されながら、上官が引いたクジの結果、戦地へ赴かず生きて帰る啓太と、仲間の未亡人・友子が、一枚のハガキを媒介に巡り合う人間ドラマだ。クジが人命を左右する戦争の不条理さを、新藤監督は体験者ならではの視点で時に激しく、時に笑い飛ばすように描いた本作で、監督の分身ともいうべき啓太にふんした豊川悦司、友子をパワフルに演じきった大竹しのぶが、新藤組の魅力や作品について語った。

■新藤組の名優たちが再結集

Q:新藤監督の前作『石内尋常高等小学校 花は散れども』でもお二人は共演されていますが、再共演が決まったときのお気持ちはいかがでしたか?

大竹しのぶ(以下、大竹):前作の撮影中に、監督から『一枚のハガキ』のストーリーについては、聞いていました。「映画化しようと思っているので、また一緒にやりましょう」と言ってくださったんです。六平(直政)さんや大杉(漣)さんもその場にいらっしゃいましたけど、「いよいよ実現するんだな」と思ってうれしかったですね。

豊川悦司(以下、豊川):前作は、みんなが広島に集まって合宿状態で撮影していたので、撮休の前日などに大竹さんが音頭を取って、監督を囲んでパーティーをしたり、楽しい機会が多かったんです。

大竹:イタリア料理店で大騒ぎして、すごく楽しかった。りりィさんがミニコンサートみたいに歌ってくれたり。

豊川:大竹さんも歌っていたよ。僕は適当に、みんなと大合唱しただけだけど。

大竹:「泣きなさい~」って、「花~すべての人の心に花を」を歌ったのかな? 監督の好きな歌ですね。

Q:大竹さんはよく、親睦会を企画されるんですか?

大竹:いいえ。そのときは広島で本当に毎日みんな一緒だったし、撮影もそろそろ終わりというときだったので、監督を中心にスタッフもキャストも全員集まれる、打ち上げみたいなことを何かしたいと思ったんです。監督のプレゼントを、六平さんと3人で買いに行ったよね。

豊川:帽子を買いに行ったね。

大竹:地方のデパートで、すごく目立っていた。

Q:今回の撮影中にも、合宿のように集まる機会はありましたか?

豊川:今回は残念ながら、それぞれのロケ場所に、各自の自宅から通うようなカタチでした。僕はまだ2本目ですけど、新藤組の方が多くて、俳優同士みんな仲が良いのでやりやすかったですね。

大竹:ロケ地がバラバラだったので、撮影中は(パーティーを)できなかったんですけど、このあいだ監督の99歳のお祝いにスタッフと一緒に集まりました。

■芝居ってもっともっと自由でいいんだ

Q:豊川さんは監督の分身というべき役を演じられたわけですが、プレッシャーや役づくりの苦労などはありましたか?

豊川:監督の実体験がかなり投影されたキャラクターだったので、監督がおっしゃっている言葉の一つ一つにヒントがありました。監督の言葉を自分の中でじっくりかみしめて、イメージしていくようにやっていましたね。本物(監督)が目の前にいるといったらヘンですけど(笑)、現場に入る前に持っているイメージを覆されることがすごく多くて、面白い経験でした。自分ではそういうつもりはなくても、やっぱり自分のスタイルというか、現代的なお芝居のスタイルみたいなものに縛られているんだな、と再認識した部分はあります。

大竹:いろんなタイプの役者さんがいるけれど、結局、役者って台本を読んだときに、無意識のうちに演技プランのようなものを、自分のあまり豊かでない想像力で(笑)イメージしてしまいがちなんですよね。でも今、豊川さんがおっしゃったように、それを監督がまったく別の方向から演出されるので、「えっ、そっちにいくんだ」みたいに驚くことはありました。

Q:特にご自分のイメージと違ったのは、どんな点ですか?

大竹:想像以上に、感情をはっきり出すよう求められることが多かったですね。

豊川:芝居ってもっともっと自由でいいんだ、と思いましたね。つぶやくようなイメージだったセリフを大声で叫んだり、体も派手に動かしたり。芝居を自分の既成概念の中だけで考えていたと思うんですよ。でも人間って、芝居って、もっともっと自由なはずじゃないかと感じましたね。

■新藤監督にしか作れない不思議ワールド

Q:多くの現場を経験されているお二人ですが、また新たな発見のようなものがありましたか?

大竹:新たな発見というよりは、新藤監督の現場は、新藤ワールドに包まれるから。そこへまた行けたな、とうれしかったです。監督にしか作れない世界だよね?

豊川:そうだね。

Q:新藤ワールドを具体的な言葉で表現すると?

大竹:悲しい話だけれど、力強くて地に足が着いていて、シュールで不思議な世界です。たぶん、映画を観て感じてもらうのがいちばんですね。

Q:友子はひたむきに運命を受け入れていくヒロインですが、演じられた大竹さんの目から見て、どんな女性に映りましたか?

大竹:きっと友子は特別な人間ではないと思います。生きていくためには、悲しみに沈んでばかりいるわけにもいかない時代だったのかなと。家を守ることや命をつなぐこと、新藤監督がよくおっしゃる「生と性」ということですよね。啓太に対しても、好きとか恋に落ちたというたぐいの感情とは異なるところが、面白いですね。

豊川:僕もそう思いますね。友子と啓太の関係はたぶん、僕らが考える恋愛とはちょっと違う。例えば周りに何万人も異性がいる中から選ぶのではなく、そばにはその人しかいなくて。そこから始まっていくような男女の関係なんだと思います。

■新藤監督の100歳記念作品が始動!?

大竹:男女の話とは変わるけど、避難所に暮らしている83歳のおばあさんが、抽選で仮設住宅に当たったというニュースを見たの。でも山の近くでクマが出る場所らしくて、「クマを討たねばなんねえから、猟銃の免許を取らなくちゃ」と言っているのを聞いて、すごいなと思ったのね。生きていくって、そういうことなんだなと。

豊川:生きていくって、実はすごく大変で、だからこそ生きている実感があるというか、意味があるのかもしれないですね。

Q:新たな気持ちで前へ歩もうとする友子と啓太のように、これから挑戦したいことはありますか?

大竹:わたしは新藤監督の100歳記念の作品を撮ってもらえるよう、働き掛けようかな。来年、100歳になられるので。

豊川:100歳で撮影して、公開のときには101歳だね。

Q:最後に、この作品が観客にどんなふうに届いてほしいと思いますか?

大竹:いろいろありますけど、麦が輝いている畑でご飯を食べるシーンが本当に素晴らしくて。人間の基本は食べることと働くこと、そして自然があれば生きていけるし、幸せなんだということを再認識させられる映画だと思います。

豊川:この映画は、生きていく上での希望を示唆してくれる、元気を与える映画だと思うので、ぜひ観てほしいです。

猛暑の某日。その暑さを忘れさせ、緊張を解きほぐしてくれるかのような、柔らかな笑顔を浮かべる豊川と大竹。第23回東京国際映画祭で審査員特別賞に輝く自信作の主演として、また六平直政や柄本明、大杉漣など新藤組キャストの代表として、真摯(しんし)に取材に向き合おうという気持ちが、それぞれの表情や言葉にあふれていた。監督の実体験に基づく、反戦の思いが込められた力作で魅せる2人の熱演を、スクリーンで堪能してほしい。

(C) 2011 「一枚のハガキ」近代映画協会 / 渡辺商事 / プランダス

映画『一枚のハガキ』は8月6日よりテアトル新宿、広島・八丁座にて先行公開、8月13日より全国公開

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