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吉瀬美智子
『神様のカルテ』
女優として、常に“いい鮮度”を保っていたい
映画『神様のカルテ』吉瀬美智子 単独インタビュー

取材・文:斉藤博昭 写真:吉岡希鼓斗

信州の病院を舞台に、主人公・一止(いちと)のさまざまな葛藤(かっとう)や夫婦愛を描いた映画『神様のカルテ』。櫻井翔と宮崎あおいの共演が話題を呼んでいる本作で、一止と同じ病院に勤務する救急外来看護師長の静枝を、吉瀬美智子が演じた。一止に対しても常に冷静沈着で、クールビューティーという言葉がぴったりの静枝は、まさにハマリ役! 映画やドラマで大活躍の吉瀬が、今回の役へのアプローチや、女優としての今後の展望を語った。

■周りの空気になじむ演技を勉強

Q:今回の外村静枝は看護師長ですが、どのような役づくりをして現場に入ったのですか?

外村さんは病院内での立場も上で、強い女性をイメージしていたんです。それで、最初の撮影のとき、姿勢よく堂々と部屋に入ってセリフを言ったら、深川(栄洋)監督から「それだと『今からステージに出ます!』という感じだね」と指摘されちゃって(笑)。ちょっとやり過ぎちゃったので、もう少し優しく、普通の姿勢で演じることにしました。

Q:最初のシーンで、いきなりダメ出しですか……。

監督が人間っぽさを求めてくれたんです。上からというわたしの意識が強過ぎたんでしょうね。外村さんは、いつも自然にそこにいる人なわけで、自分の役づくりと、周りの環境をうまくなじませることが勉強になりました。でも監督はとても優しい方で、頭もキレる。その場その場での演出の言葉がわかりやすかったです。

Q:監督のどんな指導が勉強になりましたか?

わたしは女優としての経験がそんなに長くないので、芝居をしていても、相手のセリフを聞いてしまって、うなずいてしまうんです。それを監督が、「そんなにうなずかないで」と指摘してくださって、癖になっていることに気付かせてくださいました。

■不安だった白衣の衣装も、反応は上々!?

Q:看護師長役ということで、注意したことは?

とにかくテキパキ動くことですね。救急患者が運ばれてきたときも、あせらず、明確な言葉で指示を出す。そこだけはしっかり意識しました。

Q:白衣が似合っていましたね。

こういう役と巡り合う機会があまりなかったので、最初、白衣は似合わないと思っていたんですよ。でも「似合っている」という反応が多くて、安心しました。確かに白衣を着ると、気持ちがシャキッとしましたね。

Q:実際の病院のハードさを痛感しましたか?

本作の一止さんの場合は、眠る間もないくらい神経を削られている。24時間体制といった医療現場の過酷さは想像することができました。

Q:その一止役は櫻井翔さんですが、共演の印象を聞かせてください。

テレビのバラエティー番組では何度かご一緒したことがありますが、素顔の櫻井くんは、ニュース番組に出ているときの誠実な感じに近いですね。今回はそんなに現場では話さなかったのですが、明らかにバラエティーとは違う彼がいました。ずいぶん演技で悩みつつも、それをサラッとこなしている姿にはさすがだなと感心しました。

Q:物語の中で一止が葛藤(かっとう)し、決断に迷う姿が、女優としての吉瀬さんと重なったりすることはありませんでしたか?

思い切って選択し、前に進んでいく人にしか、新しい空気は入ってこないと思うんです。その場に留まっていたら、何も変化は起こらない。わたしの場合、演技の仕事に思い切って飛び出してよかったと思っています。すべては自己責任ですから、単純には決められませんが、一止が飛び出さないで、(病院の上司である)貫田先生の道を選んでも、それはそれで幸せかもしれないし……。

■年下男に夢中の妄想好きな役で、新境地の演技に挑戦!

Q:では吉瀬さんは、演技をやりたくて、思い切り“飛び出した”ということですね。

そういうわけでもないんです。若い時期に演技の仕事をしたときは、何だかよくわからなくて、モデル業に戻りました。もともと演技にすごく惹(ひ)かれていたというより、自然の流れで演技の道に飛び出したという感じでしょうか。

Q:女優業に導かれる環境があったのですか?

そうですね。今回の深川監督のように、いつもいい方向へ導いてくれる方との出会いが大切だと思います。どの作品でも、作り手が何かを引き出してくれて、「次は吉瀬の違う部分を見たい」と、また使っていただける。そういうふうに言われれば、わたしも「じゃあ次はもっと頑張ろう。今できるベストは尽くそう」って思える。本格的な女優業は30歳を過ぎてからのチャレンジなので、他人よりペースは遅いかもしれないけれど、セリフが一言だけの役だったのが、映画の主演もやらせていただけるようになり、ステップになっていった気がします。

Q:深川監督とは、次の『ガール』でも一緒に仕事をされていますね。

今回とはまったく違うキャラクターです。わたしも見たことのないような女性(笑)。年下の男性を好きになるのですが、妄想好きで、その妄想がおかしくて、おかしくて……。自分を表現することに不器用な女の子が必死になる姿が笑える。ものすごい距離を走ったりとか、妄想シーンでの監督の演出もユニークなんです。とにかく今までにないタイプの役なので、自分でも早く観たいですね。監督がこういうわたしを見たいと思ってくれたのかもしれません。

Q:女優としての役の幅も広がっているみたいですね。

以前はクールな役が多かったのですが、最近は、等身大の女性や普通の役もいただけるようになりました。“普通っぽい演技”は逆に難しいですね。この先はお母さん役なんかも目指しつつ、何歳になっても、その時期に輝いている女優でいたい。演じる側は料理で例えれば食材なので、いい鮮度を保っていたいです。旬の人って、そうじゃないですか? 歳を重ねながら、ワインのように熟成できたらいいですね。

吉瀬美智子は、「旬の人は、いい鮮度を保っている」という言葉を実証するような人だった。それほど出番は多くないにもかかわらず、『神様のカルテ』で主人公を支える看護師長が強く印象に残ったのは、彼女の“鮮度”が理由だったことに、このインタビューで改めて気付かされた。女優として大きく開花する瞬間に、結婚という人生の大きな転換も訪れた吉瀬。仕事もプライベートも充実した人は、周りにも幸せなオーラを与えるのだろう。温かな瞳の輝きが、それを証明していた。

(C) 2011「神様のカルテ」製作委員会

映画『神様のカルテ』は8月27日全国公開

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