シネマトゥデイ

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竹内結子
『はやぶさ/HAYABUSA』
イメージでしかなかった宇宙を体感
『はやぶさ/HAYABUSA』竹内結子 単独インタビュー

取材・文:柴田メグミ 写真:吉岡希鼓斗

映画配給大手3社による競作が話題を呼ぶ、小惑星探査機「はやぶさ」奇跡の帰還のドラマ。その先陣を切るのが、20世紀フォックス配給の『はやぶさ/HAYABUSA』だ。『20世紀少年』シリーズの堤幸彦監督が、7年もの間「はやぶさ」を支え続けた人々の知られざるドラマに迫る。宇宙科学研究所(現・JAXA)のスタッフとして偉業の一端を担い、自らの生き方も見つめ直す研究生・水沢恵を演じた竹内結子が、撮影時のエピソードなどを披露した。

■恵は観客に近い“リアクション班”

Q:竹内さんから見た恵は、どんなキャラクターですか? また、演じる上で心掛けたことは何でしょう?

周りの登場人物たちを、(映画を観る)お客さんとちょっと近い立場で眺めていくような部分が強かったので、リアクション班みたいな立場ですね。いろんな人の言葉を耳にしながら、自分自身が変化していく役柄でもあり、そのときそのときに感じたものを素直に出していこうと思って臨みました。同時に、終わりの見えないプロジェクトや、自分は何を目標にやっていけばいいんだろう、自分は何のためにやっているんだろうという迷い、きっと誰もがぶつかる壁みたいなものを表せたらいいなと思っていて。役をつくり上げるというよりは、状況になじむことを考えましたね。

Q:とんぼメガネや無造作なヘアスタイル、シャツをジーンズにインして着るような平成らしからぬ恵のファッションに関しては、竹内さん自身のアイデアも反映されているのですか?

わたしからは、特にアイデアを出していませんね。すべて監督のアイデアです。監督がイメージする恵のファッションは、母親や祖母のクローゼットから借りてきたもの。それくらい、自分のたたずまいに関しては頓着のない女性というイメージのようです。ですから肩パッドが入っていたり、ちょっとクラシックなんですね。

Q:恵の歩き方にも、彼女の不器用さが表現されていますね。

なぜか、ああいう歩き方になってしまったんですけど、ちょっとヘンですよね。恵は一生懸命さゆえに前のめりになってしまったり、逆に人との生身のコミュニケーションが苦手だったり。その気持ちから、ああなったのかもしれません。

■栃木県ウーメラ市!?

Q:冒頭のシーンでウーメラ砂漠に立つ恵は、何を考えているのでしょう?

役柄としては、すごくドキドキする感じでしょうか? はやぶさが帰ってくることをずっと待っていた気持ちと、手に触れることもできないとわかった上で、見届けに来ているわけですけど。「お帰り」とただひと言、声を掛けるためだけなのかなと思います。

Q:オーストラリアロケには参加されたんですよね?

実は、わたし自身は行っていないんです。栃木県ウーメラ市というところが突如誕生しまして(笑)、そこでグリーンバックを使って撮影しました。実際にオーストラリアへ行かれたのは、カプセル回収班の福本役のマギーさんですね。ホテルの部屋で、恵が「福本さん、時間ですよ」というシーンは合成です。扉の部分だけ日本で撮っておいて、オーストラリアへ行かれたマギーさんのシーンに組み合わせたわけです。きっと撮影スケジュールの都合でしょうね。行く気は満々だったんですけど(笑)。

Q:では、ウーメラ砂漠に立ったときの気持ちを作るために、何か工夫したことはありますか?

台本を読んでイメージしていましたし、国内の撮影現場で機材を扱っていた方が、実際に当時オーストラリアへ行かれたスタッフの方だったんです。はやぶさが大気圏に突入する音というのを、聴かせていただきました。すごく不思議な音で、花火みたいなドーンという音にも近いし、響きが花火の音とは少し違う気もするし。はやぶさが帰ってきた音だと考えると同時に、はやぶさが砕けた音なんだと思うと、なんだかとても複雑な気持ちになりましたね。その音を聴いたり、当時の状況を教えていただいたり。そして撮影前に観たドキュメンタリーの映像を頭の中にイメージして、今の状況を想定しながらやりました。

■キャリア初のドン引き弾丸トーク

Q:「スタッフより俳優のほうが多い現場」だったと、製作記者会見の際に監督がおっしゃっていましたが?

そうですね。技術者役の方たちなど、本当に細部に至るまで顔が似ているとか雰囲気が似ているとか、ドキュメンタリー映像や資料など、多くの情報をもとにキャスティングされた俳優陣と伺っています。画面の隅々まで、個々の役柄に責任を持って演じられる俳優で埋め尽くしたいという、監督の希望に沿った夢のような豪華な布陣ですよね。

Q:今まで経験してきた現場とは「勝手が違う」と思いましたか?

現場というのは、作品ごとにいつも違うものなので。ただ、人数に関しては確かに多いですね。朝、スタジオ入りすると「おはようございます」のあいさつが途切れませんでした。管制室に50人くらいはいる、すごく密度の濃い現場だったと思います。(差し入れた)お菓子があっという間になくなりますね。お菓子の数が足りないね、とマネージャーと二人でよく話していました。

Q:竹内さん自身がもらってうれしい差し入れは何でしょう?

やっぱり、そのとき食べたいものですね。甘いものもしょっぱいものも好きです。そして差し入れてくださる方ご自身が食べたいと思っていたものであれば、その方の好みも知ることができるし会話も弾みますよね。

Q:劇中に専門用語が飛び交っていて、よどみなく話す竹内さんのセリフ回しに感心しました。

やっていて、気持ちがよかったですね。子どもに対しても、容赦なく専門用語を浴びせる役で、話をしてあんなにドン引きされるのは初めてでしたから、楽しかったです。

Q:夜空を眺める感覚が、以前とは変わりましたか?

変えようとは思っているのですが、数学や数字に弱いものですから。星空はどう見えるのかを(専門家の)先生に伺ってみたら、「立体に見えますね」と。わたしからすると、完全に平面なんですよ。たとえばオリオン座とか、カタチとしては理解できるんですけど。先生いわく、星と星の距離を把握していると、星空が立体に見えるんですって。それって頭の中で完全にプラネタリウム体験ができているわけで、「3Dだな、いいな」と思いました。

■キャッチフレーズは、「泣きたくなくても、竹内結子」

Q:完成作をご覧になった印象はいかがですか?

CGを使っているシーンもあって、わたしのイメージでしかなかった宇宙というものを、体感するかのような作品になったと思います。はやぶさが実際に行って何をしていたかは理解していても、どんな景色を見ていたのかとか、どんな場所にいたのかが、大画面で観るにふさわしいCGで再現されているので、はやぶさと一緒に宇宙へ行っている気分になれました。ああ、こういう景色を見ていたんだなと。それが観られるのはうれしかったです。

Q:この作品は、ハリウッドのスタジオである20世紀フォックスが日本で製作する第1号作品ですが、ハリウッドへの足掛かり的な気負いは特になく?

ありませんね。今できることを精いっぱいやるだけです。海外に住まうことが可能であれば、日常そのものから英語にシフトチェンジして、将来に生かせたらいいなあとは思いますが。

Q:『黄泉がえり』の公開時に、宣伝の方が「泣きたい夜には、竹内結子」というキャッチフレーズを付けられたそうですが、記憶にありますか?

はい、聞いたことはありますね。

Q:もし、今の自分にキャッチフレーズを付けるとしたら?

じゃあ、希望を込めて「泣きたくなくても、竹内結子」でお願いします。最近は、“泣き”ジャンルでないお仕事も増えてきているので。

シンプルなパンツスタイルで、撮影スタジオに現れた竹内結子。透明感のある肌と長い黒髪をたたえたその姿は、同性が見ほれるほど美しい、まさに女優のかがみだ。そんな竹内が今作では「存在感を消してほしい」との監督の要求に応え、女優としての新境地を見せている。不器用さが魅力の恵をはじめ、はやぶさをめぐる人々の信念や「あきらめない」という強い思いは、復興にかける日本人の心をきっと動かすに違いない。

映画『はやぶさ/HAYABUSA』は10月1日より全国公開

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