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行定勲&吉高由里子
『カメリア』
アジアのいろんな顔を見てほしい
『カメリア』 行定勲&吉高由里子 単独インタビュー

取材・文:斉藤由紀子 写真:吉岡希鼓斗

第15回釜山国際映画祭のクロージング作品として話題を呼んだオムニバス映画『カメリア』がついに日本公開となる。本作は、タイ、日本、韓国を代表するアジアの映画監督が、韓国・釜山を舞台に撮り下ろした三つのラブストーリーから構成された作品。ベテランの撮影監督(ソル・ギョング)と“カモメ”と名乗る謎の少女(吉高由里子)との触れ合いを描いた「Kamome」の演出を務めた行定勲監督と、ヒロインを演じた吉高が、映画に込めた思いや韓国での撮影秘話など、作品にまつわるエピソードを語り合った。

■新しいことにまい進することも映画の魅力

Q:アジアの才能が集結した「多国籍オムニバス映画」というコンセプトがとても斬新ですね。

行定勲(以下、行定監督):僕はアジアの映画人として、そんなに変わったことだとは思わなかったですね。このグローバルな時代に、日本という狭い市場の中だけで映画を作るのには限界があると感じているんです。いろんな国の人が混在して映画を作っていくべきですよね。今の日本は、映画の本質とは違う中で作品が作られている部分もあるような気がするんです。娯楽という側面から見れば、観客のニーズに応えるのは当然なんだけど、ニーズに応えるのだけが映画じゃない。今回のように、結果はわからないけど新しいことにまい進していくことも映画作りの魅力なんですよ。

吉高由里子(以下、吉高):わたしは、行定監督ほど考えてこの企画に挑んだわけではないのですが、行定監督とのお仕事というだけでテンションが上がりました。ちょうど台本をいただいたころに、監督の映画『パレード』に没頭していたんです。とにかく面白くて、何度も見返してしまいました。そのタイミングもあったので、これは良いご縁なんだと思って、撮影に入るのが楽しみでした。

Q:お二人が監督と主演を務めた「Kamome」は、観る者の想像力をかき立てる作品でしたね。

吉高:最初に台本を読んだときは、どんな映像になるのかよくわからなかったんです。「なんだかホワッとした作品だな」というのが正直な感想でした。

行定監督:今回、吉高さんには、カメラの前で虚無になることを望んだんです。カモメは、釜山の街に突然現れた異邦人の少女。セリフもほとんどないし、言葉もほとんど通じない。だから、ただぼうぜんと街を歩くしかないという設定の中で、吉高さんが衝動的に受けたものをそのまま出してもらったんです。それがこの映画の本質なんですよ。意味を考えるというよりは、そこに一緒に漂っている感覚で観てもらう作品にしたかったんです。

吉高:わたしにとっては、「とにかくやるしかない!」という感じでした。でも、知らないものに対して構えることも大切だと思うんですけど、知らないからこそ怖さを感じないってこともあるんですよね。すごく良い経験になりました。

■枠にとらわれないのが「行定流」

Q:吉高さんは、行定監督の演出から何か刺激を受けましたか?

吉高:とても刺激的でした! 監督はとにかく枠にとらわれない方なんです。今って、映画にもいろいろな規制があるじゃないですか。「これはダメ、あれもダメ」って(笑)。

行定監督:言っていることはよくわかるよ。僕の場合は「枠を破ってなんぼ」だからね(笑)。そうじゃないと意味がない。もっと自由に衝動を大切にするべきなんですよ。

吉高:本当に、いろいろな枠を超えてしまうパワーがあるんですよ。だから、現場でもわたしを放し飼いにしてくれるんです。もちろん、戸惑うところがあると、ちゃんと納得できるまで理由を話してくれるんですけど、基本は放し飼いでした(笑)。

Q:監督から見た、女優としての吉高さんの魅力を教えてください。

行定監督:吉高さんの中に、「陰」と「陽」が見えるんです。普段は「陽」のほうを前に出しているんだけど、「陰」の部分も内在しているんだろうなと思う。そこが魅力だし、期待できる女優さんです。今回、現場で初めて吉高さんとソル・ギョングが対話するシーンを撮ったときに、「この二人なら絶対いい映画になる!」と思いましたね。いろいろストーリーは考えたんだけど、それすらもいらないかなって思うくらい、映画ファンとしてずっと見ていたい二人でした。

■ソル・ギョングが吉高に韓国のタブーを伝授!?

Q:吉高さんは、ソル・ギョングさんとの初共演はいかがでしたか?

吉高:もう、何もかもが大きい人でした。人間が大きいんですよね。撮影期間は1週間しかありませんでしたが、ご一緒できてとてもうれしかったです。あれから1年以上たつのに、今でも「ギョング、ギョング」って言い続けています(笑)。

行定監督:もう、すっかり呼び捨てだからね(笑)。

吉高:電話で話すこともあって、「ギョング! アニョハセヨー!」ってしゃべっています。ギョングさんは日本語がとても上手なんです。

行定監督:ギョングは、現場で吉高さんのことを「すごくナチュラルな女優だ」と言って、休憩時間も一緒に過ごすようにしていたんです。本当に吉高さんでよかったですよ。もしも、しょっちゅうメイクを直して鏡を見るような女優さんだったら、あんなふうに親しくならなかったと思います。吉高さんに、わざと言ってはいけない韓国語を言わせて喜んでいたりしてね(笑)。

吉高:そうですね。ふざけていることが多かったです(笑)。

行定監督:でも、そのコミュニケーションの果てに映画が生まれたような感覚でした。俳優としてだけではない人間としての触れ合いが、作品の中に出ていると思います。

Q:撮影の合間に、ギョングさんに釜山の街を案内してもらうこともあったのですか?

吉高:おいしいお店を教えてもらいました。だから、ギョングさんが日本に来たら、どこかおいしいお店に案内してあげたいです。

行定監督:彼が日本に来たら、絶対に吉高さんと会いたがると思うよ。僕と話すたびに、「由里子さんは元気ですか?」って必ず言うから。

■未来へとつながるアジアの集大成

Q:釜山の街並みも見どころですが、特に印象に残っている場所はありますか?

吉高:韓国は初めてだったので、どこに行っても刺激的でしたね。とにかく楽しかったです。もっと長く滞在して、もっと韓国のことを知りたいと思いました。辛い韓国料理もとてもおいしかったですし。

行定監督:吉高さんは、韓国人よりも辛いものがイケちゃうタイプだもんね。吉高さんが食べている料理を現地の人が味見して、「これ、辛すぎるよ!」って言ったり(笑)。

吉高:どんなに辛くても大丈夫です(笑)。

Q:最後に、オムニバス作品としての本作の見どころを教えてください。

吉高:ミュージカルのような作品、情緒的な作品、近未来的なお話など、いろんな視点から切り取った三つのラブストーリーです。「愛」という共通のテーマなのに、カラーがバラバラですごく面白いんです!

行定監督:普通は事前に打ち合わせをするのでしょうけど、今回はみんなが好きなようにやらせてもらったんです。僕らは、愛なのか恋なのか尊敬なのかわからない、淡い物語を作ったけど、ほかの2本は究極のラブストーリーをやろうとしたんでしょうね。それぞれのお国柄が出ているんですよ。似かよった作品になってもおかしくないのに、まったく似ていないところが面白いし、その偶然が必然になっている。アジアのいろんな顔を見てほしいですね。

吉高:今だからできる、アジアの集大成です。みんなが協力して何かを作る、未来へとつながる第一歩だと思います。もっといろいろな国の方々が、こういった形で作品を作ったら楽しいでしょうね。

映画に対する真摯(しんし)な思いを熱く語った行定監督と、無邪気な笑顔の中に豊かな才能を感じさせた吉高。二人にとって、今回の企画はとても刺激に満ちていたようだ。タイ、日本、韓国の監督が「愛」をテーマに個性豊かな作品を作り上げ、アジアのエンターテインメント・シーンに新鮮な風を吹き込んだ『カメリア』。映画を通じて国籍を超えた人間同士のつながりが生まれ、そこからまた新たな作品が生まれていく。そんな素晴らしいサイクルが、これからもずっと続いていくことを願いたい。

映画『カメリア』は10月22日より公開

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