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クラシック・ミュージカルはこんなに面白い! フレッド・アステア&ジーン・ケリー映画ベスト5

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フレッド・アステア編ジーン・ケリー編

クラシック・ミュージカルはこんなに面白い!フレッド・アステア&ジーン・ケリー映画ベスト5

ミュージカル界の巨星、フレッド・アステアジーン・ケリーの名前は知っているけど、映画『ザッツ・エンタテインメント』でしか彼らのパフォーマンスを観たことがないという映画ファンも少なくないはず。そこでミュージカル映画&ダンスには一家言あるライターが、珠玉の作品群の中から2大スターの魅力が遺憾なく発揮されていると思われる私的ベスト5を選定。ハッピーな気分になれること請け合いの名作たちをダンスの見どころと共にご紹介します!

フレッド・アステア編 文・今祥枝

フレッド・アステア
フレッド・アステア
Sasha/Getty Images

シルクハットにえんび服、ステッキを片手に軽やかにステップを踏む優雅な紳士といえばフレッド・アステアである。姉アデールと共にブロードウェイ&ロンドンでも大成功を収め、1930年代に姉の結婚&引退を機に銀幕の世界に飛び込み世界的な大スターとなった。人気に火が付いたのは脇役で出演した『空中レヴュー時代』(1933)。本作で初のコンビとなったジンジャー・ロジャースは、彼女がブロードウェイで踊っていたころに、ダンスのアドバイスをしたというアステアだが、以後は黄金コンビとなった。そんなアステアの代表作といえば、ハリウッドのメジャースタジオMGMの『イースター・パレード』(1948)や『バンド・ワゴン』(1953)を筆頭に挙げるファンが多いかもしれないが、ここではアステアがロジャースと一時代を築いたRKO(アメリカの映画会社)作品の魅力の一端を語ってみたい。

自他共に認める完ぺき主義者の熟練の技

この時期、数多くのアステア&ロジャース映画を撮ったのがマーク・サンドリッチ監督。彼の代表作であり、冒頭で述べたトレードマークを決定付けた『トップ・ハット』(1935)は、ダンス・シーンを始めから終わりまでワンカットで撮ることにこだわったアステアのために試行錯誤の末、完成したアステアドリー(カメラマンが台車に乗り、ローアングルから俳優の体全体をとらえる撮影方法)をフル活用した映像に加え、音楽も歌もダンスも完ぺきだ。とりわけアステアのタップ専用特別フロアで録音されたサウンドを最大限に生かした楽しいソロナンバー「ノー・ストリングス」(byアーヴィング・バーリン)のテクニックは驚異的! 「ソロとしてのアステアは職人かたぎ過ぎる」と評されることもあるが、職人かたぎ上等。自他共に認める完ぺき主義者の熟練の技は文句の付けようもなく素晴らしい。すべるように滑らかなカメラワークとタップが織り成すコンビの名場面としては、『踊るニュウ・ヨーク』(1940)のエリノア・パウエルと踊るコール・ポーター作曲の「ビギン・ザ・ビギン」も見逃せない。

また、こだわりのタップと共に定番なのが、アステアが舞台時代に姉と共に観客を熱狂させたラン・アラウンド(二人で円を描きながらぐるぐると大きく舞台を回るスタイル)。ロジャースが長いドレスのすそをひらひらとさせながら、アステアと軽やかにくるくると円を描くさまの美しく優雅なことといったら! このペアの無敵のケミストリーは筆舌に尽くし難いが、個人的にはジョージ・スティーヴンス監督による、あきれるほど能天気な『有頂天時代』(1936)の二人のナンバーが、華があって楽しくおススメ。ちなみに本作では、ボードビリアン(舞台で踊り、歌などのショーを披露する演者)時代のアステアにタップを手ほどきしたビル・ボージャングル・ロビンソン(1930年代のアメリカで活躍した黒人のタップダンサー、俳優)にささげる「ボージャングルズ・オブ・ハーレム」も圧巻だ。ジャジーなナンバーに乗って、顔を黒塗りにして大勢の女性を相手に迫力のタップを踏み、さらには自分の三つの影と踊るアイデアも秀逸。

「トップハット」
「トップハット」
価格:1,890円(税込み)
販売元:アイ・ヴィー・シー
「踊るニューヨーク」
「踊るニューヨーク」
価格:5,040円(税込み)
販売元:ジュネス企画
(C)株式会社ジュネス企画
「スイング・タイム 〈有頂天時代〉」
「スイング・タイム 〈有頂天時代〉」
価格:1,890円(税込み)
販売元:アイ・ヴィー・シー

ロマンチックでエレガントなダンスが持ち味

「踊らん哉」
「踊らん哉」
価格:1,890円(税込み)
販売元:アイ・ヴィー・シー
「バンド・ワゴン」
「バンド・ワゴン 特別版」
価格:1,500円(税込み)
販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
(C) 1953 Warner Bros. Entertainment. All Rights Reserved.

ロジャースとのコンビ作は、すべてボーイ・ミーツ・ガールというジャンル映画の典型。男女が出会い、惹(ひ)かれ合い、反発してトラブルを乗り越えるハッピーエンドの図式はほとんど同じだ。そんな極めて限られたパターンの中でも、すぐれた楽曲とダンス、そして演出によって、男女のロマンチックな名シーンが誕生する。マーク・サンドリッチ監督の『踊らん哉』(1937)ではクライマックスで、愛する人リンダ(ロジャース)の仮面をかぶった大勢の踊り子を相手に踊るペトロフ(アステア)が、仮面を端から取っていくのだが、実はその中にリンダ本人が混じっていたという設定。単純明快な結末ながら、ロマンチック気分は大いに盛り上がる
 
もちろん、シド・チャリシーとのジャジーでセクシーなナンバー「ガールハント」のほか、色鮮やかな映像に多彩なダンスを見せる『バンド・ワゴン』、ケガをしたジーン・ケリーの代わりに出演し、一躍引退状態から華麗なる復帰を果たした『イースター・パレード』も押さえておきたい名作。これらの作品やジーン・ケリーなどのMGM作品を見慣れていると、モノクロのアステア映画は少し物足りなく感じるかもしれないが、洒脱さやエレガントといった彼の持ち味はシンプルなストーリーとモノクロの映像が持つ、ロマンチックでソフトな印象にしっくりくる。今年度の賞レースをにぎわせている異色のモノクロ無声映画『アーティスト』をきっかけに、モノクロ映画に興味を持った人には、本作にはアステア(とその映画)を彷佛させる場面が散見することも付け加えておこう。

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ジーン・ケリー編 文・なかざわひでゆき

「巴里のアメリカ人」
「巴里のアメリカ人」
価格:2,500円(税込み)
販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
ジーン・ケリー
ジーン・ケリー
Michael Ochs Archives/gettyimages

ジーン・ケリー作品の私的ベスト5といっても、彼の膨大なミュージカル映画群の中から5本だけ選ぶという作業自体が難しい。なおかつ、ナンバー・ワンを決めるとなると、当然ながら異論も多々あるとは思うが、個人的には『巴里のアメリカ人』(1951)を推したい。「アメリカ庶民に初めてバレエの魅力を広めた人物」といわれるケリーだが、これはその最高峰と呼ぶべき作品。中でも、タイトルにもなっているガーシュウインの曲をバックにケリーと相手役のレスリー・キャロンが踊る、実に18分にも及ぶ壮大で幻想的なクライマックスのダンス・シーンは圧巻だ。クラシック・バレエをベースにしつつ、タップやモダン・ダンスなどを織り込んだバラエティー豊かな振り付けはケリーの真骨頂。バレエの本場であるフランスの文化に対するケリーの愛情と憧憬(しょうけい)はもちろんのこと、同時にアメリカ人としての誇りも垣間見られるところが、まさに『巴里のアメリカ人』たるゆえんだろう。

歓喜に満ちた力強く躍動感あふれるダンス

「雨に唄えば」
「雨に唄えば」
価格:1,500円(税込み)
販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
(C)1952 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
「踊る海賊」
「踊る海賊」
価格:5,040円(税込み)
販売元:ジュネス企画
(C)株式会社ジュネス企画

「雨に唄えば」(1952)もまた、ジーン・ケリーを語る上で絶対に欠かせない傑作ミュージカル。あのあまりにも有名な雨の中のダンス・シーン。恋をすれば雨に濡れるのもまた愉快、とばかりにタイトル・ソングを歌いながら踊りまくるケリーのなんとも楽しそうなこと! 曇り空をも吹き飛ばしそうな爽快(そうかい)感、自由奔放かつエモーショナルな高揚感こそがジーン・ケリーのダンスの魅力といって間違いないだろう。例えば、フレッド・アステアの華麗なステップが観る者をウットリとさせる完ぺきな芸術品だとすれば、ケリーの力強く躍動感あふれるダンスは観ている方も一緒になって踊りたくなるような歓喜に満ちている。共演者ドナルド・オコナーとの一糸乱れぬパワフルなタップを披露する「モーゼス」も必見だ。
 
ケリーのダンスといえば、そのアクロバティックな振り付けも大きな特徴。この『踊る海賊』(1948)なんぞはまさにそのお手本だろう。アクション映画も真っ青のスタントを織り交ぜながら、ダイナミックで豪快なバレエ・ダンスを披露する「パイレーツ・バレエ」は、ほかのミュージカル・スターには決してマネできまい。有名な黒人ダンサー・コンビ、ニコラス兄弟と共に曲芸のごときダンスを見せる「ビー・ア・クラウン」なんか、それこそ後のブレイク・ダンスにも匹敵するような激しさ。当時はともすると「女性的」だと揶揄(やゆ)されたダンスについて、「ダンスはスポーツと極めて共通するものであり、男性的なものだ」と語っていたケリー。本作はそんな彼のアスリートとしての卓越した才能をまざまざと見せつけてくれる。

ルールに縛られず、観客の意表を突くアイデア

「雨に唄えば」
「いつも上天気」
※ソフトは未発売
Time & Life Pictures/Getty Images
「ブリガドーン デジタル・リマスター版」
「ブリガドーン デジタル・リマスター版」
価格:3,980円(税込み)
販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
(C) 1954 Warner Bros. Entertainment Inc.

バレエやジャズ・ダンスをバックグラウンドとしながら、特定のスタイルに縛られない自由なダンスを信条としていたケリー。大切なのは「何をどう表現するか」であって、そこにルールなど必要ないのである。なので、フラメンコからアイリッシュ・ダンスまで、あらゆるスタイルを振り付けに取り入れるのはもちろんのこと、意表を突くアイデアで観客を驚かせることも少なくなかった。この『いつも上天気』(1955)で見せてくれる、ローラースケートによるタップ・ダンスなどはその最たる例だろう。しかも、ニューヨークの街中を自由自在に滑りまくりながら。アルミ製ゴミバケツのふたを足にはめながら仲間とタップを踊るシーンも、実にユーモラスで楽しげだ。  最後に紹介するのは『ブリガドーン』(1954)ジュディ・ガーランドからレスリー・キャロン、ヴェラ=エレンなど数多くのミュージカル女優とコンビを組んだケリーだが、その中でもベスト・パートナーと呼ぶべきは、やはりシド・チャリシーだろう。もともとバレエ・ダンサーだったというキャリアの背景や、ちょうど同じくらいの背丈であるという体格的な特徴もさることながら、ダンスにおけるスケールの大きさやキレのある動きなど、チャリシーの男性的ともいえる身体能力と女性ならではの妖艶なエレガンスは、マッチョなケリーと並んでこそなお一層の輝きを放った。本作で見せるチャリシーとのクラシカルなバレエ・ダンスは言うまでもなく、二人の本格的な初共演となった『雨に唄えば』の「ブロードウェイ・メロディー・バレエ」も素晴らしい。

筆者プロフィール

なかざわひでゆき

映画&海外ドラマ専門フリーライター。ホラー映画やB級カルト映画が大得意。と言いつつミュージカル映画も大好きで、特にバスビー・バークレイ作品のファン。ロシアの生んだ20世紀最高のバレリーナ、プリセツカヤの舞台を本場のボリショイ劇場で観て育ったこともあり、生意気にもダンスには結構うるさい。

今祥枝

映画&海外ドラマライター。小学生時に観たABT(アメリカン・バレエ・シアター)の公演でモダンの魅力に目覚めて以来、ミュージカルは歌よりもダンス重視に。現役ブロードウェイ俳優ではノーバート・レオ・バッツとハンター・フォスターがごひいき。2010年に来日したアーロン・ソーキンが取材時に熱く語っていた「Follies」の進捗状況が気になる。

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フレッド・アステア編ジーン・ケリー編
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