シネマトゥデイ

吉岡秀隆&小雪
『ALWAYS三丁目の夕日’64』
「茶川家は茶川家、鈴木オートは鈴木オート」
それは、オフでも変わらなかった
『ALWAYS三丁目の夕日’64』吉岡秀隆&小雪 単独インタビュー

取材・文:浅見祥子 写真:高野広美

2005年に公開されて大ヒットを記録。ロングランを続けて、その年の日本アカデミー賞ほか多くの映画賞を総なめにした『ALWAYS 三丁目の夕日』。2007年に公開された続編に次ぐ第3弾『ALWAYS 三丁目の夕日’64』が完成した。東京オリンピック開催に沸く昭和39年を舞台に、夕日町に暮らす人々の人情味あふれる悲喜劇をつづる。三流少年誌に児童小説を連載するさえない小説家の茶川と、彼を支えながら小さな居酒屋「新やまふじ」を切り盛りするヒロミ。夫婦を演じた吉岡秀隆と小雪が撮影を振り返り、語り合った。

■人気シリーズ最新作が3Dで完成!

Q:シリーズ3作目を3Dで映画化すると聞いて、最初はどう思われましたか?

小雪:最初は、3Dでやる必要があるのかな? とは思いましたよね?

吉岡秀隆(以下、吉岡):……みんなが思うよね(笑)。

小雪:ええ(笑)。観ている方に臨場感やスケールを味わっていただきたいという趣旨は理解できても、映像が目立ち過ぎてストーリーに入り込めないかもという不安があって。でも、完成した映画はそのあたりに違和感がなく、こういう3Dの使い方はアリだなと思いました。

吉岡:僕も最初は、なんで? と驚いて、『三丁目』に3Dはいらないでしょ!? と思っていたんです。でも、映像を飛び出させることより、奥行きを味わえる上に、目が疲れない映像を目指すというお話を聞いて、「年配の方にも3Dを体感してほしい」という思いを実現するための作品として、『三丁目』はぴったりだと思えました。

■盛りだくさんな台本との格闘

Q:台本を読んだ感想は?

吉岡:茶川ほど不器用な人間が一世一代の大芝居をする。しかも、それを僕が演じなきゃいけない。できるのかな? という不安はありました。全体としては、1作目で他人の家に入り込んだ六ちゃん(堀北真希)と淳之介(須賀健太)が巣立つ話で、1作目に通じるなんとも言えない感動がありました。

小雪:盛り込んだなって感じですよね。いつも穏やかで温かい現場ですけど、役者同士は緊張感を保たなきゃいけないような大事なシーンがすごく多くて。

吉岡:この和やかな雰囲気を壊してはいけない、という緊張感がありますよね?

小雪:そうそうそう。淳之介くんなんて大事なシーンを前にどんどん緊張して、ご飯を食べられなくなっちゃって。

吉岡:最後はため息ですからね、「はあ」って。でも今回は小雪さんがちゃんと茶川家の一員になってくれていたので、それがすごく心強かったんですよ。撮影の待ち時間でも鈴木オートは鈴木オートで、堤(真一)さんと薬師丸さんを中心になんとなく固まる。でも茶川家は僕と淳之介しかいなくて心細かったんです、人数的に負けていて。本当の親子の役でもないから二人して“道に捨てられた感”丸出しで。でも今回は淳之介が緊張でため息をついても小雪さんが「大丈夫だよ」と言い続けてくれて、家族っていいなと思いました。

小雪:役者同士って、普段の雰囲気とか温度感を、画面に投影しちゃうことがあるんですよね。だから茶川と淳之介の間に緊張感を保たないといけないシーンの前は、わたしが淳之介を「お昼食べに行こう!」と誘ったりして。

吉岡:小雪さんはそうした気遣いで茶川家をコントロールしてくださっていました。重いシーンでは必ずヒロミがその場を見ていますしね。そういうシーンのときは、朝はあいさつをしても、その後は何も話さなかったりして。

小雪:そうした距離の取り方は、1作目からやっているのといないのではまったく違ったかもしれないですね。

■過ぎ去った5年の歳月を再現した美術セット

Q:シリーズを通して観ると、ヒロミは変化しましたよね?

吉岡:実は、いちばん変化しているんじゃないですかね?

小雪:前作までは一人で生きていて、自分が幸せになっていい人間かどうかという葛藤(かっとう)の中にいました。すごく苦労してきたので、家族という幸せの核となるものを得て、とても強い女性になっていますよね。やはり痛みを知る女性は強いですから。だからこそ、茶川家はとても安定するのだと思います。

Q:茶川、いい奥さんもらったな! って感じです。

吉岡:それ、皆さんにさんざん言われているんですよ。「こんな奥さんがいたらおれだってがんばっちゃいますよ」と言われながら、全然がんばれない茶川がおかしいですけど。今回は、むしろダメな方向にがんばっちゃう。前作でいい男になったのに、ダメな男に戻っている気がする。でも変わらない安心感ってあるんですよ。ダメだな、こいつは! って、茶川はそれ担当です(笑)。ヒロミも、不器用なところが変わらない茶川のことが好きなのだろうと思うし。

Q:シリーズ化が続いたら、ヒロミはどう変化するのでしょう?

小雪:どうしよう……「新やまふじ」が繁盛しちゃうかも。

吉岡:すると茶川は本物のヒモになっちゃう!?

小雪:あんな店があったら仕事の帰りにちょっと寄りたいですよね。店のセットは、実際に料理ができるように作られていて、そのほかの部分も、映らないところまでちゃんと作ってくださっていたんです。だから、すごくお芝居がしやすかった。

吉岡:前作の設定から経過している5年の歳月が、セットを見ればわかるんですよ。茶川家でいえば2階が増築され、淳之介の部屋に賞状がたくさんあったりして。茶川の書斎は灰皿がいっぱいで全体に散らかっていたりして、相変わらずなんだなとか(笑)。美術セットに助けられている部分はとても大きいと思います。

■幸せで、縁のあるシリーズへの愛

Q:完成した映画を観た感想は?

吉岡&小雪:面白かったです。

小雪:普通に感動しちゃった。

吉岡:最初に観るときはいつも、あそこはどうなったのだろう? と確認する意識があるんですけど、今回は観客として泣いていました。撮影のときの須賀健太の役者としての熱、何日も前からしゃべらなくなり、食事ものどを通らなくなり……そんな姿を思い出したら、泣いちゃいましたよ。

Q:『三丁目の夕日』シリーズは、お二人にとってどんな作品になりましたか?

吉岡:待っていてくれる方がいて、それを距離の取り方が絶妙なスタッフ、キャストの方々と一緒に作れる。特に、震災を挟んで撮影をすることになった今作の撮影では、そういう状況だからこそ、絶対にいいものを作ってやるという映画人の心意気が感じられ、「山崎組で良かった」と心から感じることができました。

小雪:わたしにとっては「縁」のある映画にもなりました。この8年間、役者として人としてどう生きてきたかで、ヒロミの演じ方もかなり変わってくると思うんです。この先どう続くのか完結するのかわからないけど、この世界観は多くの人に求められているし、ここに生きる人たちに学ぶことは多いですよね。エネルギーをもらったり、気付かされたりして。普遍的なテーマを描きながらいかに新しい作品を残していけるか、そういう挑戦でもあります。作品と一緒に成長していける、わたしにとっては本当に「縁」のある作品です。

吉岡:小雪さんがいちばん縁を感じるはずですよね。妊娠する役のときに、本当に妊娠するんだから!

小雪:そうですね(笑)。

最初に姿を現した吉岡さんの写真撮影をしていると、妊娠9か月の大きなおなかをした小雪さんが現れた。すると目を丸くして「こわいなー。異変があったらすぐ言ってくださいよ!」と、コミカルだけれど心から心配そうに、でもとてもうれしそうに相手の体を気遣う吉岡さん。それに応え、「おなかが痛い! とか言い出すかも」と笑う小雪さん。二人の間に流れる和やかな雰囲気は、役者として互いを尊敬するからこそ生まれるのだろう。それは映画を観ても実感するはず。笑って泣ける人情ドラマの裏には、スタッフの高い技術と役者たちの研ぎ澄まされた緊張があった。それらはすべて、作品への愛に裏打ちされているのだ。

(C) 2012「ALWAYS三丁目の夕日’64」製作委員会

映画『ALWAYS三丁目の夕日’64』は1月21日全国公開

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