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クリント・イーストウッド監督&レオナルド・ディカプリオ
『J・エドガー』
役者と監督のコラボレーションこそが、映画史に残る演技を生む
『J・エドガー』クリント・イーストウッド監督&レオナルド・ディカプリオ 単独インタビュー

文・構成 シネマトゥデイ編集部

FBI初代長官ジョン・エドガー・フーバーの半生を描いた映画『J・エドガー』。絶大な権力によってアメリカ中の秘密を手にし、およそ半世紀にわたってその座に君臨した男の内面に迫る衝撃作だ。謎に包まれたフーバーの、周囲の人々や側近との親密な関係など、私生活にスポットを当てたクリント・イーストウッド監督。青年期から晩年までのフーバーを演じ、その演技に高い評価が集まるレオナルド・ディカプリオが、本作とこれからのキャリアについて語った。

■大きなチャレンジだった老人への変身!

Q:この役で一番のチャレンジは何でしたか?

レオナルド・ディカプリオ(以下、ディカプリオ):間違いなく年齢の変化だね。ありがたいことに年を取ってからの撮影は、終盤だったんだ。映画はフーバーの人生を描いている。時代を何度も行ったり来たりしながら、自分が何をしているかフォローするのは、本当に難しくて、とても疲れたよ。老けメイクも大変だったね。あの変身は大きなチャレンジだった。

Q:あなたが実在の人物を演じたのは初めてではありませんが、ほかの作品と比べ、フーバー役はいかがでしたか?

ディカプリオ:彼には、いろいろと違った異常さがあったね(笑)。何でもありという感じで、キャラクターのすべてを映画に取り入れることはできなかった。だから、劇中では彼という人間についてヒントをちりばめるようにした。潔癖性だったり、母親に対してどもってしまう点、セクシュアリティーの問題などについては明らかだよね。

Q:その相手となるクライドを演じたアーミー・ハマーについては、いかがでしたか?

ディカプリオ:素晴らしいよ。クライドは自分の人生をフーバーとFBIにささげたんだ。彼のそばにいて、彼をサポートするシステムとなっていた。アーミーはそのキャラクターをとらえ、クライドがフーバーに対して持っていた愛情や思いやりを、見事なやり方で見せてくれたよ。25歳の若さでね。驚くべきことだ。

■フーバーの側近への愛情は本物だった!

Q:フーバーはアメリカの近代史においてとても重要で、謎の多い人物でもあります。制作を通して、彼について新たな発見はありましたか?

クリント・イーストウッド監督(以下、イーストウッド監督):多くのことを発見したよ。僕はフーバーがFBIのトップだった1930年代~1940年代に育ったんだ。今のように多くの情報は出てこない時代だ。当時はラジオで聞いたり、書かれたものを読んだりする以外に彼について知るすべがなかった。だから、僕も一から始めなくてはならなかった。

Q:映画では、彼の暴君としての面よりも、パーソナルな部分にスポットが当てられていましたね。

イーストウッド監督:そうだね。なぜなら……誰も彼の私生活について詳しく知らなかったからなんだ。でも彼には、手に汗をかく人を嫌うといったような、奇抜な点が多くあったのは確かだった。それで僕は、彼がなぜそういう人間だったのかについて探求したいと考えたんだよ。

Q:劇中では、彼の同性愛の傾向についても触れていますね。

イーストウッド監督:彼が同性愛者だったかどうかは、僕にはわからない。でも、彼がクライドに愛情を感じていたのは明らかだ。クライドは心を許せる人物で、一緒にいて居心地の良さを感じていたと、フーバーと仕事をした人たちの誰もが証言していた。でも彼の性的な傾向についてはさまざまで、まったくそうじゃないと思っている人もいる。観客は自分が思うように解釈すればいい。彼は今でも、ミステリアスな存在だからね。

Q:歴史において重要な人物の内面を語る上で、特に気を使った点はありましたか?

イーストウッド監督:いや。でももし、彼について正確な知識を持っていたら、違うアプローチをしたと思う。けど僕は、彼が謎めいたヒーローだったという点が面白いと思ったんだ。彼は多くの人にとって英雄だったが、ある人たちにとっては違った。何人かの人たちは彼のことが好きだったが、ある人たちは彼のことをまったく気にしなかったという点がね。

■常に信頼してくれたイーストウッド監督

Q:イーストウッド監督との仕事はいかがでしたか?

ディカプリオ:僕が今までに仕事をした中で、最も直感的な監督の一人だ。自分で感じたことに絶対的に頼っていることがわかった。監督は自分のモニターに映っているものを見て好きか嫌いを直感的に判断する。そして自分の思っていることをはっきり伝え、次に進んでいく。実にファンタスティックな経験だったよ。彼は役者にものすごい自信を与えてくれる。僕が自分の仕事をするためにそこにいると信じてくれているんだよ。

Q:彼のような素晴らしい監督やキャストとの仕事で学んだことで、最も重要なことはなんですか?

ディカプリオ:コラボレーションがすべてだということだね。僕がこれまでに観たすべての偉大な演技は、役者と監督のコラボレーションの結果だ。一緒に仕事し、アイデアを分かち合い議論をする。その結果が素晴らしいものを生むんだよ。

■老人の演技なら、僕を参考にすればいい!?

Q:レオナルド・ディカプリオの演技は素晴らしいものでした。

イーストウッド監督:僕も彼はいい仕事をしたと思う。

Q:どのような経緯でディカプリオをフーバー役に起用したのですか?

イーストウッド監督:レオが電話してきて、やらせてほしいと言ったんだ。僕が想定していた役者ではなかったけど、やりたいと言われたとき、「この役を演じることに、ものすごく情熱を感じている人間がここにいる」って思ったよ。ずっと役者としての彼に敬意を感じていたし、これまで演じた役で見せた情熱にも感心していた。

Q:晩年のフーバーの姿も話題になりましたね。ディカプリオの演技は説得力がありました。

イーストウッド監督:それは全部レオの手柄だよ。彼は年寄りの動きをとても研究していたね。ある日彼に言ったんだ「僕を見たらいい」ってね(笑)。でも彼は「ノーノー」って言っていたな(笑)。

■20年前のオスカーを振り返って

Q:あなたが本作の演技で、アカデミー賞を獲得するのではという話もあります。(本インタビューは、アカデミー賞ノミネート発表前に収録)

ディカプリオ:そういうことに関して自分でコントロールできることはなにもない。それが真実だ。外に出て行って自分の作品をPRし、人々が作品を気に入ってくれること期待し、投票するときも同じように反応してくれるのを祈るだけだよ。

Q:ほぼ20年前、最初にノミネートされたときのことを覚えていますか?

ディカプリオ:最初は信じなかった。何が起きているかよく理解できなかったんだ(笑)。そう記憶している。母も父も、ものすごく興奮していてね。彼らは「何が起きたかわかっているの?」と言い、僕は「多分ね」って感じだった。それがどのぐらいすごいことかよくわかっていなかったんだ。授賞式に行くのにものすごく消極的で、乗り気じゃなかったのを覚えているよ。

Q:あなたにとって、オスカー獲得は夢のひとつですか?

ディカプリオ:夢かって? いらないという人はいないと思うよ(笑)。もしいたらうそを言っているね。でもそういったことは、演じる動機にはならない。僕の動機は、素晴らしい人たちと仕事がやれること。そして、後から振り返って誇りに感じられるような作品を作ることなんだよ。

アメリカ映画界を代表する存在であるイーストウッド監督と、着実にその座へのステップを踏んでいるディカプリオ。二人の話からは、キャリアの長さに関係ない、映画人としてのお互いへの尊敬の念が垣間見えた。謎の多い人物フーバーの内面を、特殊メイクを駆使しながら、見事に表現したディカプリオの名演は、そんな監督への絶対の信頼があったからこそ実現できたものに違いない。オスカーの有無にかかわらず、偉大な監督と俳優のコラボレーションによって生まれた本作を、ぜひ見逃さないでいただきたい。

(C)KaoriSuzuki

(C) 2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC

映画『J・エドガー』は1月28日より全国公開

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