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田中麗奈
『種まく旅人~みのりの茶~』
晴れるのもありがたい、雨が降るのもありがたい
『種まく旅人~みのりの茶~』田中麗奈単独インタビュー

取材・文:柴田メグミ 写真:高野広美

風光明媚(めいび)な大分県臼杵市を舞台に、お茶の有機栽培に取り組む人々の姿をさわやかに描いた映画『種まく旅人~みのりの茶~』。自分たちで作ったおいしいごはんを食べて、笑い合って、日が沈んだら眠りにつく。そんなシンプルな暮らしの尊さを、『ふたたび swing me again』の塩屋俊監督がメガホンを取る。臼杵市生まれの監督のもとに、同じく九州出身の陣内孝則、田中麗奈らが集結。本作でヒロイン、みのりを自然体で演じた田中が、撮影中のエピソードやストイックな素顔を明かした。

■みのりは身近にすごくいそうな女性

Q:30歳にしては現実が見えていないみのりですが、田中さんご自身の目には、どう映りましたか?

みのりは最初、意地になっているというか、プライドが先行しているところがありますね。見掛けの「カッコいいこと」にしがみつくあまり、表現することやお客さんに喜んでもらうことといった、本来の目的を忘れてしまっている。最初はすごく子どもっぽく感じられますよね。そんなみのりが、無我夢中でやってきた仕事を離れて、どういう生き方をするか手探りしながら、自分らしさを見つけていく姿を、見守っていただければうれしいです。

Q:企業のリストラに海外発注、有機農業の問題やみのりの成長物語など、観る人それぞれに今作の楽しみ方があるかと思いますが、田中さんはどんな点に惹(ひ)かれて、出演を決められたのでしょう?

みのりの成長を描くことは、わたしにとってやはり重要でした。どこかもやもやした状態で、周りにも感謝せずに突っ走っていたみのりが後半、いろんなものを失った末に茶畑に出会い、みんなの協力があってこその自分だと気付く。人との触れ合いや温かさ、仕事の本質的なカッコよさ、感謝をすることの大切さなどが少しずつわかってきて、彼女の心の凝り固まっていたものが、ほぐされていく。年齢的にもみのりは身近にすごくいそうな女性で、そういう彼女の姿を表現できればいいなと思いましたし、観ている方に、たくさん共感してもらえる役じゃないかなと思いました。作品も素朴で、ジンワリと優しい気持ちにさせてくれます。幸せな気分になれる映画というのは、わたし自身も好きですし、ぜひ出演したいと思いました。

■自然の中に身を置くと、人間らしくなれる

Q:塩屋監督は、メソッド演技を学んだ俳優でもありますが、演出はいかがでしたか?

すごく客観視してくださっていましたね。役者に寄り添って一心同体になるというよりは、いつも一歩引いていらっしゃるような。スクリーンに映ったときのことを常に想像されているのだと思いました。雨の中を「ちょっと傘持って立ってて」とか、映像になるとワクワクするような画(え)づくりをフッと言ってくださる、感性が独特な方だと思います。

Q:田中さんは福岡県のご出身ですが、舞台となる大分県へは以前から足を運んでいましたか?

温泉にはよく行っていたんですけど、茶畑というのは初めて知りました。

Q:劇中で田中さんが自ら炒(い)る釜炒(い)り茶、おいしそうですね。

すごく大きな釜にお茶を入れて、農家の方が素手で素早く炒(い)っていくんです。熱くないのかなと恐る恐るやってみたら、どんどん香ばしいにおいがして、パチパチと音が鳴り出す。「ああ、お茶になっていくんだな」と実感しましたね。

Q:撮影を通して、農業についての意識も変わりましたか?

本当に大変な作業ですよね。天候や気温、その土地(の質)によっても作業が違うはずですし。命を育てる仕事というのは毎日、時間と手をかけてあげることなんだとしみじみ感じました。農家の皆さんのご苦労があるからこそ、わたしたちが食べたり飲んだりできる。本当に日本を支えてくださっている方たちだと思うので、感謝と応援したい気持ちでいっぱいです。

Q:今作をきっかけに、いままで農業と無縁だった人たちの目が向くといいですね。

自然の中に身を置いてみると、学ぶことが多いですよね。いらないものを捨てられたり解放的になったり……人間らしくさせてくれると思います。

■自分をたたきのめすような場所って?

Q:映画を観て、大分旅行をしたくなる方も多いはずですが、特にオススメの場所や食べ物は?

やっぱり温泉はハズせませんね。ロケ地の臼杵は城下町で、石畳に瓦屋根、そして白壁などがまだ大切に残されています。とても情緒のある、素晴らしい異空間でした。ぜひ臼杵に立ち寄っていただきたいですね。名産品なら関アジに関サバ、ふぐやゆずこしょうもとてもおいしいです。

Q:茶道を習われているそうですが、今作あるいは時代劇の出演にあたって始められたのですか?

役づくりとは無関係ですね。所作や畳の上での立ち居振る舞いを学べるので、自分自身のためになればいいなと思って茶道を始めました。習い始めてから時代劇に出演する機会も増えてきたので、後付けでよかったなと思いますけど。

Q:何かきっかけがあったのですか?

以前、お仕事をご一緒した中国の俳優さんたちが、伝統芸能をしっかり学ばれていて。わたしも日本人の俳優として、日本文化を身に付けることはすごく大切なんじゃないかなと思いました。お茶に着付け、お花や日舞を体験してみたり。和の文化に目を向けるようになったのがきっかけですね。

Q:そういえば、中国語も勉強されていましたよね。これから新たに始めたいことはありますか?

今は舞台のお仕事に興味があります。舞台には2度、出演させていただきましたけど、これからも役者を続けるにあたって、舞台で苦労したり恥をかいたり、自分をたたきのめすような場所が必要だと思うんです。

■東に金言、西に名言!?

Q:陣内さんふんする金次郎をはじめ、周囲からみのりが受け取るさまざまな人生訓も、今作のポイントの一つですが、田中さんご自身がこの仕事を始めてから、心に響いた言葉というのは?

おけいこ先で時々お会いする先輩女優さんがいるんですけど、仕事のことでちょっと悩んでいたとき、その悩みを拭い去るようにけいこをしていたら、先輩が久しぶりに声を掛けてくださったんですね。でも自分からは悩みについて何もお話しせずにいたら、その方の悩んでいることが、なんとわたしと一緒だったという……。自分には完ぺきに見える先輩でさえ、わたしと同じような問題で悩んでいるんだと知って驚きました。その際に「ここで時々会って、一緒に頑張りましょうね」と言ってくださったことが、自分の励みになっていますね。努力を怠っちゃいけないなと。その「頑張りましょう」という言葉が、とてもうれしかったです。

Q:逆に、みのりのように迷っている人たちに贈りたい言葉はありますか?

この作品のなかで、柄本明さんが陣内さんにおっしゃる「晴れるのもありがたい、雨が降るのもありがたい」という言葉です。その言葉がヒントになって、みのりのお茶づくりもはかどっていくんですけど、自分にとってもすごく心に残りました。お天気と同じで、自分の心も晴ればかりじゃなくて、曇りの日もあれば雨の日もある。でも植物の成長にとって雨が絶対に必要なように、人間も生きものなので、雨の日があるからこそ、トーンダウンして静かな時間を過ごせたり、自分を見つめ直したり、反省したりできるんですよね。ちょっと落ち込んだときにも、「雨の日もありがたいんだ」と自然に受け止めて、日々を過ごしていってもらえるといいんじゃないかと思います。

自身が演じたキャラクターや舞台となった臼杵市、そして「心にとてもやさしい“オーガックシネマ”」と自ら語る作品への愛が、言葉の端々に感じられる田中。インタビュー時の飲みものに日本茶をリクエストし、臼杵産のお茶をいとおしそうに口にする彼女の姿には、日本女性の美があふれていた。10代で女優デビュー後、映画界の第一線で活躍を続ける彼女の原動力は、出演作への豊かな愛情と、自分を甘やかさない謙虚さゆえかもしれない。そんな彼女の主演最新作を、見逃す手はないだろう。

映画『種まく旅人~みのりの茶~』は公開中

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