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市川実日子&田中圭
『レンタネコ』
心の穴ぼこ、どう埋める?
映画『レンタネコ』市川実日子&田中圭 単独インタビュー

取材・文:浅見祥子 写真:高野広美

『かもめ食堂』『めがね』『トイレット』と国内外で高い評価を受ける荻上直子監督の新作『レンタネコ』が完成した。主人公は、おばあちゃんの遺(のこ)した小さな一軒家にたくさんの猫と暮らす正体不明のレンタネコ屋さん・サヨコ。心のどこかに“穴ぼこ”を抱えた年齢も性別も境遇もばらばらな人たちが、彼女のもとを訪れ、猫を借り、“穴ぼこ”を埋めていく。本作で、サヨコ役、謎の男・吉沢役で初共演を果たした市川実日子と田中圭が、ほんわかとした撮影を振り返った。

■のんびりかつテキパキした空気が漂う“荻上組”

Q:お互いに会う前の印象と、実際に会った印象を教えてください。

田中:市川さんには、“大人の女性”というイメージがありました。実際にお会いすると、それが“大人の女性?”とクエスチョンマークが付いたというか、イメージが違ったというか……。

市川:田中さんは、これまでに演じていらっしゃった役柄のイメージで、好青年だと思っていたのですが、今回演じる吉沢という役のせいか、実際にお会いすると、てれーんとした感じで……。てれーんとしていました(笑)。ね?

田中:していたかもしれません(笑)。

市川:田中さんって、おいくつなんですか?

田中:僕、27歳です。

市川:そうなんだ。同級生の役だったけど、結構(6歳)年が離れていたんですね。でも、田中さんのてれーんとした感じが、昔同じ教室にいたような空気を作ってくださっていました。

Q:台本を読んで、役柄のイメージはできましたか?

田中:最初は「おれは猫を借りないんだな」と(笑)。吉沢ってよくわからないけど闇を抱えているというか、もやっとした感覚を抱いているというか。そういうものをふてぶてしいまではいかずに、よくわからない愛くるしさが出るように演じられればいいなと思っていました。

Q:サヨコ役は市川さんが演じることを想定して書かれたそうですね?

市川:そうなんですか? ただ、監督が以前のわたしの作品を観て、それがすごく変でよかったらしいんです(笑)。それで、すでにわたしは大人の年齢ですけど、大人になり切る一歩手前の女性を演じられるぎりぎりの時期じゃないかと思って、台本を書いたというお話は聞きました。でも、台本を読んで、サヨコのイメージはすぐにはつかめなかったんですよね。しかも荻上監督は言葉にするのがあまり得意じゃない方で。一生懸命に誠意を持って言葉を発してくださるんですけど、「もうちょっと、すーっとした感じで」とか、感覚を言葉で投げられるので、わかるような、わからないような(笑)。(上の空な隣の田中に)ですよね? 聞いています?

田中:聞いています聞いています。一生懸命に思い出そうとする作業をしていました(笑)。確かにそんな感じでした。僕の印象では、今回は、雰囲気が出来上がっている組だなと。たぶん監督の持つ空気だと思うんですけど、それが現場を覆っていました。作品のイメージみたいに、結構のんびりした空気が常にあるんだけど、撮影自体はテキパキと進んでいくので、すごいなあと思いながら現場にいたのを覚えています。

■猫との撮影 現場の雰囲気は?

Q:現実離れしているけど、ちょっとかわいい。そんな作品の世界観は、撮影しながらどの程度イメージできましたか?

市川:わたしは、正直に言うと、撮影しているときは、わからない部分もありました。荻上監督の作品は、毎回世界観が同じじゃないし、前回ご一緒した『めがね』も、台本からして今回とは全然違うものでしたから。現場に入ってからも、こんなにカットを割るんだ! と驚いたりして。

田中:僕はなんとなーく見えました。台本を読んだときに受けた感覚と、現場で受けた感覚がかなり近かったので。ああ、この雰囲気にのらりくらりと乗っていようと(笑)。確かにカットを意外と割るなとも思いましたが、僕が普段かかわる作品がもっとカットを割るものが多いので。最初に撮影した河原でのシーンは、1カットで撮ったこともあって、こういう1カットっていいなと思いながらやっていました。

Q:サヨコの家に行くと、より作品世界がわかりそうですよね?

市川:サヨコの家は、まさに“おばあちゃんの家”という感じでした。でも、かわいらしさもあって。おばあちゃんがずっと住んでいて、今はサヨコが住んでいるというのがとても伝わってくる家でした。

田中:僕のサヨコの家のイメージは、猫がいっぱいいたな! に限ります(笑)。

Q:猫はお好きですか?

市川:好きです。でもそんなに熱心な猫好きではなくて、飼ったことはないんですけど。

田中:僕はもともと犬派で、実家で犬を飼っていました。でも一度、友達の猫を2、3週間預かったことがあるんです。2匹預かったんですが、1匹はめちゃめちゃ僕に甘えてくるのに、もう1匹は姿も見せない。なつく猫となつかない猫がはっきりしていて……猫っていいなって思いましたね。

Q:猫との共演はいかがでしたか?

市川:大変そうかしら? と思ったんですけど、監督が猫をすごく好きで。撮影が始まる前に「猫に何かを強要したり、猫待ちはしません。猫があっちへ行ったら、あっちへ行きたいってことなんだという撮り方をします」と。本当にそういう撮影だったので、大変なことはありませんでした。無理矢理何かをさせられていると見ていてかわいそうだなという意識が生まれるけど、この作品ではそれがなかったのでよかったです。

■もし、レンタネコ屋が本当にあったら?

Q:もしレンタネコ屋があったら、ご自分では借りますか?

市川:(田中を見て)借りなさそうですよね?

田中:そうですね、借りないかもしれないです。

市川:わたしも今のところは借りないかもしれません。

Q:レンタネコは、心に穴ぼこがあいたように寂しいときに借りますよね。借りないということは、その穴ぼこを埋める方法がほかにあると?

市川:穴ぼこがあったら、あけておきます。

田中:え、すごい!

市川:そうですか? 穴ぼこがあいていることも、自分の心が動いた証なので。それを埋めるために何かをしても、するりと抜けていくと思うんです。もちろん昔はそれを埋めるために何かをしたときもあったと思うんですけど、今の自分は埋めようとはしないかもしれないですね。

田中:僕は、すぐ埋めようとします! 一番手っ取り早いのは、現実逃避か、お酒をたらふく飲むかです(笑)。

市川:それで埋まります(笑)?

田中:埋まらないけど、穴ぼこがあいていたことも忘れるじゃないですか(笑)。

■猫がいきいきしていて、ふわっとできる映画

Q:完成した映画を観た感想は?

市川:反省ばっかりです(笑)。でも猫が本当にいきいきしていたのがうれしかったです。

田中:僕は、なんかいいなと思いながら、ずっとほんわかしながら観ていました。ですからお客さんは、どういうふうにほわっとしてくれるんだろう? って。それでいて、押し付けがましくないメッセージ性や雰囲気の共有があって、いいなって。

市川:監督はメッセージを込めているけれど、声を大にしては言わない。観て、何か感じ取っていただければそれでいい。そのふわっとした感じがいいですよね。

二人共、写真撮影のときから、言葉数は決して多くはないが、時々視線を交わしては、クスっと笑い合ったりしている。インタビュー中も、トボけた回答を繰り返す田中を、市川が笑ったり突っ込んだり。その関係は、サヨコと吉沢そのままのように見えることもあって、こちらまでつられてほおがゆるんでしまった。それでいて二人共、時々ぐさっと鋭いことを言う。心地良いのにハッとさせられる気の抜けない感じは、まるで『レンタネコ』という作品にそのままつながっているようだった。映画には、そんな二人の魅力がギュッと詰まっているし、あんな猫やこんな猫がたくさん登場するし、サヨコのレトロでカラフルなファッションもキュート。お見逃しなく。

(C) 2012レンタネコ製作委員会

映画『レンタネコ』は5月12日より銀座テアトルシネマ、テアトル新宿ほかにて全国公開

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