シネマトゥデイ

森山未來×高良健吾×前田敦子
『苦役列車』
映画を観たら、貫多を好きになる
映画『苦役列車』森山未來×高良健吾×前田敦子 単独インタビュー

取材・文:浅見祥子 写真:奥山智明

『天然コケッコー』『マイ・バック・ページ』とハイテンションな作品を連発する山下敦弘監督の最新作『苦役列車』が完成した。西村賢太による芥川賞受賞の私小説を、ポップでほろ苦い青春映画の味わいに仕上げた話題作だ。主な登場人物は日雇い労働で稼いだ日銭を酒と風俗通いに浪費するロクデナシの貫多と、貫多が職場で出会う素直な専門学校生の正二と、貫多が思いを寄せるちょっと不思議な古本屋の店番、康子。森山未來×高良健吾×前田敦子というイキのいいメンツがそろった本作の舞台裏を、出演者が自ら振り返った。

■ロクデナシ×純情少年×不思議ちゃん? 役へのアプローチは?

Q:映画を観る前は思わなかったことですが、貫多を演じた森山さんが、原作者の西村さんに似ている気がしました。

森山:ありがとうございます。並んでみると意外と身長も同じくらいで、目つきなども“遠からず”という感じがするなあと思っていました。撮影前に西村さんの19歳のときの写真を拝見する機会があったんですが、「苦役列車」は私小説で、当時の様子がかなり貫多に反映されているので、それを見て参考にさせていただきましたね。

Q:好青年だったら、「自分でもいける」と?

森山:そんなことは考えていないですよ(笑)。

Q:高良さんは、陰のある役やクセのある役のイメージが強いですが、正二のような素直な役には、だからこその難しさなど、あるのでしょうか?

高良:正二のような役は、自分に近いと思うんです。でも、本当の意味では自分を客観的には見ることはできないと思っているので、役柄が自分に近いかどうかは実際のところよくわからないのですが。でも、以前から山下監督の作品に参加したいという思いがあったので、今回はあの世界に自分がいる! という感覚を楽しんでいました。それから、森山さんとのシーンが多かったのですが、森山さんという方がまた、これまで会ったことのないような人で。しかも、貫多としてそこにいる。現場に漂っていた独特の緊張感も楽しむことができました。

Q:前田さんが演じた康子は、映画オリジナルの役でした。どのようにイメージして演じたのですか?

前田:オリジナルの役であるという部分については、山下監督ともあまり話をしなかったのですが、事前にリハーサルをしていただいたときに、「そのままの感じが康子と似ているのでは?」と言っていただいて。誰にでも他の人とは違う、ちょっと変わった部分がありますよね? そうした部分をそのまま生かせればいいなと思って演じました。

Q:役者として、森山さん、高良さんから何か学んだことなどありましたか?

前田:はい、ありました。あこがれの方たちと一緒にいる! という感じでしたし。

森山:今、あまり声が裏返らへんかったね。

前田:本当ですか!? ありがとうございます!

森山:いや、意識しているのかな? と思って。

前田:していないです。最近ボイストレーニングをやっているせいかな? よくわからないけど。

■森山、高良、前田が語るアイドル論!?

Q:「あこがれ」と感じる方との共演で、今後の女優業について思いを新たにするところもあったのかなと?

前田:はい、ありました。

森山&高良:(笑)。

前田:卒業後はどこの世界へ行きたいとか、この世界は嫌だとか、そういう決めつけは全然ありません。自分は、AKB48というアイドルグループの一員としてスタートしたからこそ、今があると思っていますし。お二人がわたしにとって、あこがれの気持ちが一番強い世界にいる人たちだというのは確かですけど。

森山:(高良に)おれたちも西武ドームに立ったことはないしな?

高良:うん(笑)。

森山:(前田に)さいたまスーパーアリーナもある?

前田:はい、こないだ。

森山:勝てねえな(笑)。

高良:でも自分をアイドルと言い切れる、その潔さが格好いいですよね。

前田:友達にアイドルがいるんですか?

高良:男性なんですけど。「おれはアイドルだから」って言えるのはすごいなと。

森山:確かに、すごいね。

高良:前田さんを見ていてもそう思います。

森山:確かに、たくましさが魅力だよね。

前田:お……。

森山:「お……」!?

前田:(笑)。

Q:三人は、とても仲が良さそうですね。映画では、三人で海に入るシーンが印象的でした。

高良:寒すぎてみんな変なテンションになっていましたよね?

森山:高良くんは、彫りが深くなり過ぎて、中東の人みたいな顔になっていた(笑)。

高良&前田:ははは!

高良:あのときは結構みんなでしゃべっていましたね。

森山:とにかくつらかったから、みんなでなんとかしなきゃいけない! という気持ちが強かったね。

■貫多のような人と、友達になれる?

Q:貫多のような人が身近にいたら、どうします?

森山:俺は、面白いと思います。日雇い労働で一日一日をしのいで、あれだけ真っすぐにモノが言えるって何!? と興味を持つかも。でも実際には正二みたいにだんだんうっとうしくなるかもしれないけど。

高良:僕も興味を持つと思います。ひどいことを言われても、嫌だという感じはなく、何でこんなことを言うんだろう? って純粋な疑問を感じるかもしれません。

前田:わたしは、どうですかねえ……でも、気を使う必要は一切ないじゃないですか。だから一緒にいやすいといえばいやすいのかも。

森山:実害がなさそうだしね。最初は何か特別なものを持っているのかな? と思わせるけど、何もない! みたいな(笑)。それでも一緒にいるとなると、楽かもしれないね。

Q:でも、突然手をべろっとナメられたら驚きますよね?

前田:そうですねー。あまり人を怖いと思わないけど、そう思っちゃうかも。

Q:ということは、貫多は友達として、まったくナシではないと?

前田:……え?

森山:ナシみたいです(笑)。でも康子って古本屋でアルバイトしていたり、家では小説に囲まれて暮らしていたり、妄想癖があったり。貫多といたら何か事件があるかもと思うような、ちょっと変態的なところがあるのかも。

高良:登場シーンから変わっていますから。それを演じる前田さんを見て、すごいな! と思いました。

森山:中央線沿いにいそうだよね、高円寺とか(笑)。

■私小説が青春映画に!?映画版『苦役列車』

Q:完成した映画を観た感想は?

森山:山下監督の演出力がホントに素晴らしいなあと。すべての役者に愛情を持って演出しているのがスクリーンから伝わってきました。

高良:やっぱり貫多をずーっと見ちゃいますよね。いろいろあっても最後には貫多を好きになって終わる。

前田:まさに“山下ワールド”ですよね。

Q:原作より、青春映画のようでした。

森山:それもあると思います。原作は撮り終えてから読んだのですが、脚本を読んだ時点ではドヨンとした印象が強くて。監督にはよく「もっと19歳っぽくやって」と若さを前面に出すように言われていました。

Q:森山さんは『モテキ』でもダメ男、次回作の舞台「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」でも社会不適合者を演じますね?

森山:(笑)。そうですね、たまたまそういう役どころが続きますね。

三人とも決しておしゃべりなタチではない。だが主役で年長者でもある森山がさりげなく場の緊張を解くようなきっかけを作り、それに反応した高良と前田がふっと気を抜いて楽しいおしゃべりが転がる……インタビューはそんな雰囲気で、撮影現場での仲の良さをうかがい知ることができた。映画が、ポップな青春映画のような味わいになったのも、三人のフレッシュな化学反応の結果。どうしようもないロクデナシの日常を描いているのに、見終えた後はどこか爽快な気分が漂うのも不思議だ。

【森山未來】ヘアメイク:須賀元子 スタイリスト:シガアキオ
【高良健吾】ヘアメイク:竹下フミ スタイリスト:澤田石和寛
【前田敦子】ヘアメイク:藤城亜衣(WORTH WHILE) スタイリスト:安藤真由美(Supercontinental)

映画『苦役列車』は7月14日より全国公開

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